自然科学のための数学2015年度第12講

第4章 1変数の積分

さて、今日から積分。理学部ではよく、
「微分」→「微かに分かる」
「積分」→「分かった積り」
という冗談があるが、ここは「分かった積り」じゃなく、しっかり分かっていこう!

 4.1 積分とは何か

  4.1.1 積分は「足算の化け物」である

たとえば「一昨日の売上は10万円、昨日の売上は15万円、今日の売上は20万円だった」というなら、この3日間の売上合計は$10+15+20=45$万円である。これは普通の足し算である。平均の売上は?---と言われたら${45\over 3}=15$万円ということになる。これは普通の「足算」と「平均」である。

同様に「一昨日の気温は23度、昨日の気温は27度、今日の気温は19度だった。平均気温は?」と言われたら、${23+27+19\over 3}=23$度ということになる。しかしここで、「いや待て。一昨日の気温は23度というが、朝は18度ぐらいで、昼は25度を超えていたぞ」という文句をつける人がいるかもしれない(この「文句」はいちゃもんでもなんでもない、正当なものだ)。確かに売上のように「1日に何円」と明確に決まる量と違って、気温というのは連続的にどんどん変化するものである。この時「平均」を求めるための「足算」はどのように行えばよいのだろうか???

すぐに思いつく対策は「1日ごとに気温を考えるのではなく1時間ごと、あるいは30分ごと、それでもダメなら1分ごとなり1秒ごとなり、なるだけ短い時間感覚で気温の測定を行って平均しよう」ということだ。この連続的に変化する量を足すのに必要な計算が積分である。後で定義する積分がまさにそういう量になっている。

  4.1.2 積分は「掛算の進化形」である

長方形の面積を計算しろ、と言われれば、小学校で習ったように

の掛算をすればよい。では三角形の面積は?---以下では三角形の中では一番面積を考えることが容易である直角三角形の場合で考えよう。

という計算をすればよいと、これまた小学校で習う。直角三角形の面積は長方形の面積の半分であることは図形で説明することも、もちろんできる。

直角三角形の面積を以下のように考えることが「積分」の考え方である。

$({底辺})\times({高さ})$を計算するのだが、どこでも同じ高さである長方形と違って、三角形の場合、各点各点での高さは違う。つまり、場所によって変化する(この場所の高さ)と(底辺)の掛算をしたい。単なる掛算では面積が大きくなりすぎるのはすぐわかるだろう。

(この場所の高さ)は0から(高さ)まで変化するから、平均を取ると(どうやって取るのかはまた後で考えよう!)、${({高さ})\over 2}$になると考えると、三角形の面積の式が出てくることになる。

つまり、積分は掛算なのだが、「変化する量」との掛算なのである。

そんな「掛算の進化形」を作らなくとも、三角形の面積は見ればわかるだろう---と思う人もいるかもしれない。もちろんそうなのだが、これがもっと違う形であっても(たとえば円であったり、放物線の形だったりしても)面積がちゃんと計算できる方法を作りたい。

たとえば↑の4分の1円の面積は${\pi\over4}r^2$となるが、それも積分で計算できる。

また、もっと積分のありがたみがわかる例として、立体の場合がある。直方体の体積が$(底面積)\times(高さ)$なのに対し、角錐の体積は${(底面積)\times(高さ)\over 3}$である。この${1\over 3}$はどこから来たのか(これを図形的に示すのは、少なくとも簡単にはできない)。これもやはり「変化する量との掛算」を行った結果なのである(実際にどう計算するかは後で示そう)。

ここで「足算の化け物」「掛算の進化形」としての積分を紹介したが、実はこの二つはどちらも「グラフの面積」で表現できることがわかった。そこで次の節では「グラフの面積を計算するにはどうするか?」を考えていこう。

 4.2 無限小部分の和としての積分

  4.2.1 グラフの面積:直線の例

もっとも簡単な「直角三角形」から始める「そんなの知っているよ!」と言いたくなる気持ちはわかるが、ここで開発した方法を使ってとても計算できそうにない図形の面積も計算できるようになる。これはあくまで「最初の練習」である。

図のような直角三角形(その三つの角が$(0,0)(x_0,0),(x_0,x_0)$になるようにする)の面積を考える。まず底辺を$N$分割しておく(後で$N\to\infty$とする)。切り取られてた一個の長方形は、横幅${x_0\over N}$で縦が$n{x_0\over N}$であるから、面積は$n{(x_0)^2\over N^2}$である。これを$n=1$から$n=N-1$まで足す。

\begin{equation} \sum_{n=1}^{N-1}n{(x_0)^2\over N^2} ={(x_0)^2\over N^2} \sum_{n=1}^{N-1}n =(x_0)^2\times{N-1\over 2N}\label{NNN} \end{equation}

上の式では、$\sum_{n=1}^{N-1}n={N(N-1)\over 2}$という和の公式を用いた。最後にある${N-1\over 2N}={1\over 2}-{1\over 2N}$という量は${1\over 2}$より${1\over 2N}$だけ小さい数だから、$N$をどんどん大きくしていけばこの部分が${1\over 2}$となり、長方形の集合の面積は${(x_0)^2\over 2}$、つまり${(底辺)\times(高さ)\over 2}$に下から近づいていく「より小さい」という大小関係を守りつつその値に近づいていく場合は「下から近づく」と表現する。逆の場合は「上から近づく」である。。ただし、これで証明できたのは、長方形の集合の面積$\leq{(底辺)\times(高さ)\over 2}$正確には、$\leq$ではなく$<$が証明されている。そして、$N\to\infty$においてこれが$=$になるだろう、というのは今の段階だはまだ単なる「予想」でしかない。である(まだ等式ではない)。

これを動く図で説明するのが下のグラフである。Nを変えたりして、面積を長方形の和として計算しているところを見よう。
授業で使ったandroidタブレットのプログラムと同じものは、ここにある。下のプログラムはその一部なので、全部やってみたい人はあちらに行ってみよう。


 絵の右にあるのが浴槽で、上にある蛇口から水が注ぎ込まれている。右の方にあるレバーをひねることで水が出ると思って欲しい(レバーは赤い印のところで水が止まり、時計回りに回すことで出る水の量が増えていく)。

 グラフの横軸は時間であり、縦軸はvすなわち「1秒あたりに流し込んでいる水の量」である。(1秒あたりに流し込んでいる量)×(秒数)で「流れ込んできた水の量」が計算できるが、それはちょうどグラフの水色の長方形の面積になっている。
 つまり、溜まっている水の量が、グラフの面積(水色に塗ったところ)で表現されているのがわかるかと思う。
 最初の状態では、5段階に分けてレバーをひねり、少しずつ水の流量を増やしている。この段階数を∞にしていこう、というのが積分の考え方である。


 下の図は、レバーを開いていく割合aと段階数Nを変化させることができる。変化させて、実際の現象への近づき方を見てみよう。


a=0.5

N=5


 このプログラムではNを(ある程度までだけど)大きくできるので、どんどん大きくしてみよう。Nが十分大きくなれば、この現象は「連続的に流水量を増やしていった場合」と変わらない、ということがわかるだろう。N→∞の極限を取ることを考えれば、最終的結果はグラフの下の部分(三角形)の面積となる、ということである。

 積分は「単なる定数vとtの掛け算ではなく、変化するvとtの掛け算である」という意味では「掛け算の進化系」である。

 そして、ちょっとずつ変化する量×Δt(図の水色長方形)をえんえんと(無限回!)足した結果だと思えば「足し算の化け物」でもある。

 ここで当然の疑問として「隙間になる三角形の部分の面積は大丈夫なのか?」と心配になるだろう(なって欲しい)。この部分が心配な人はどうしたらいい?
 隙間の三角形の部分を計算して0になることを示す?
 お、それはいいね。やってみよう。小さな三角形の面積は${(x_0)^2\over 2N^2}$で、これが全部で$N$個あるから、トータルで面積は$N\times {(x_0)^2\over 2N^2}={(x_0)^2\over 2N}$。これは$N\to\infty$で0だから、隙間は考えなくてもよいことになる。

 もう少し一般的な「隙間は考えなくてよい」ことの証明として、以下のようにも考えられる。

 長方形の作り方をちょっと変えてみる。具体的には上では「常に長方形が三角形の下にある」ようにしたが、「常に長方形が三角形より上に飛び出ている」ようにするのである(「上からの極限」)。

すると今度は足すべきものが$n=1$から$n=N$までとなり、

\begin{equation} \sum_{n=1}^{N}n{(x_0)^2\over N^2} ={(x_0)^2\over N^2}\underbrace{\sum_{n=1}^{N}n}_{{N(N+1)\over 2}} =(x_0)^2\times{N+1\over 2N} \end{equation}

となる。今度は最後に${1\over 2}+{1\over 2N}$があり、これが$N\to\infty$で${1\over 2}$に上から近づく。よって、この極限の取り方では長方形の集合の面積$\geq{(底辺)\times(高さ)\over 2}$が証明できたことになる。

あわせて

\begin{equation} \left({下からの極限による\atop 長方形の集合の面積}\right)\leq{(底辺)\times(高さ)\over 2}\leq \left({上からの極限による\atop 長方形の集合の面積}\right) \end{equation}

となり、極限を遂行すれば、三角形の面積$={(底辺)\times(高さ)\over 2}$が示せた。

この計算ですが、$f(x)$が$\pm\infty$になるような場合はできないんですか?
おお、いい質問です。もちろん、そういう場合は微小な長方形ですら面積$\infty$になってしまって計算できなくなります(そういう場合でもなんとかする方法はあるけど、それはまた今度)。実は微分もそうでしたが、積分はどんな関数でもできるというものではないのです。
もう一つ、積分はあるんだけど簡単な関数の形にまとめられない、という場合も出てきます。
デルタ関数ってのがありましたが、あれって積分して1になるのって変ではないですか。
おお、よく覚えてましたね。
デルタ関数は、

Diracのデルタ関数

\begin{equation} \delta({x})=\begin{cases}0&{x}\neq 0\\ \infty &{x}=0\end{cases} \end{equation} \begin{equation} かつ~~~~~ \int_a^b \delta({x})\mathrm dx =\begin{cases} 0& 区間(a,b)が{x}=0を含まないとき\\ 1& 区間(a,b)が{x}=0を含むとき \end{cases} \end{equation}
という関数でした。もちろんこれは普通の意味では積分できません。
これの積分を定義するときは、まず「デルタ関数もどき」を、 \begin{equation} \tilde \delta({x})=\begin{cases}0&x\leq -a または a \leq x\\ {1\over 2a} &-a\leq {x}\leq a\end{cases} \end{equation} のように定義します。この関数のグラフで0でない場所は「底辺$2a$、高さ${1\over 2a}$の長方形」なので、積分すると(面積になって)1です。こういう関数はちゃんと積分できるので、積分が終わった後で$a\to0$の極限を取る、などの方法でδ関数を(極限を使って)定義するわけです。
 いずれにせよ、デルタ関数そのものは正しい関数じゃないので、積分するときもこういう極限で定義された積分を行なう、ということになります。

以下で、これをもっと一般的な関数(「一般的なグラフ」と言ってもいいし、「一般的な図形」と言ってもいいだろう)に対して同様の計算を行っていく。そこで少し記号を整理しよう。上で考えた${x_0\over N}$という微小長方形の横幅は「${x}$の変化量で、後で0になる極限を取るもの」という意味を持っているから、微分の時と同様に、$\mathrm dx$と書くことにしよう同じ意味を持つ量なので、同じ記号を使っているのである。。${x}=n{x_0\over N}$であることも使うと、三角形の面積は(面積が小さくなるように考えた場合)

\begin{equation} \sum_{n=1}^N n{x_0\over N}\times {x_0\over N}=\sum_{n=1}^N{x}{\mathrm dx} \end{equation}

と書くことができる。

この式のうち、$x\mathrm dx$というのは底辺が$\mathrm dx$、高さが$x$の微小長方形の面積である。

 $N\to\infty$という極限は$\mathrm dx\to0$という極限であり、その極限において今考えている和は「無限個の区間の足算」に変わる。

$1$から$N$まで$n$を変化させつつ足すということが$N\to\infty$($\mathrm dx\to0$)という極限を取ることによって、$0$から$x_0$まで${x}$を変化させつつ足すに変わったのだから、記号の方も$\sum_{n=1}^N$ではない別の記号$\int_0^{x_0}$を使う$\int$の読み方は「いんてぐらる」。記号自体は「積分記号」と呼ぶ。元々は「和」に対応するラテン語(summa、英語のsummation)のsを伸ばして作られた(ライプニッツによる)。ことにする。

こうして新しい記号で書いた$\int_0^{x_0} {x}\mathrm dx$が「定積分(definite integral)」という演算である(後で「不定積分」も出てくる)。この書き方では結果を

\begin{equation} \int_0^{x_0}{x}\mathrm dx={(x_0)^2\over 2}\label{sekibunx} \end{equation}

と表すことができる。

$\int_a^b$と書いた時の$a$は「(定積分の)下限」、$b$は「(定積分の)上限」と呼び「どこからどこまでを足したのか」を示す。領域$a<{x}< b$は「積分区間」と呼ぶ。上の例では$0,x_0$が下限と上限だったが、もちろんどこからどこまでを足すかは状況によって変わる。

  4.2.2 定積分の記号についての整理

定積分はもちろん、いろんな関数について実行できる。$f({x})$という関数を「$x_1$から$x_2$まで定積分する(つまりその範囲で面積を計算する)」を式では$\int_{x_1}^{x_2} f({x})\mathrm dx$と書く。$f({x})$は「被積分関数」と呼ぶ。また、この時の変数は「積分変数」と呼ぶ。

具体的には「$x_1$から$x_2$まで」という長さ$x_2-x_1$の領域を$N$分割しこの分割の方法は、極限をうまく取ることができるような分割でありさえすればよく、${x_2-x_1\over N}$ごとに等分割する方法が唯一ではない(\ref{JacksonInt}節を参照)。ここでは一番単純な分割方法で説明している。、その一個一個の微小領域(最初を「0番目」として、$n$番目の微小領域は${x}=x_1+n{x_2-x_1\over N}$で始まる)に横${x_2-x_1\over N}$で縦$f\left(x_1+ n{x_2-x_1\over N}\right)$の微小長方形を作り、その面積の和を計算する。式で表現すれば

\begin{equation} \int_{x_1}^{x_2} f({x})\mathrm dx = \underbrace{\lim_{N\to\infty}\sum_{n=0}^{N-1} }_{\int_{x_1}^{x_2}} \underbrace{f\left(x_1 + {x_1-x_2\over N} n\right)}_{f({x})}\underbrace{{x_2-x_1\over N}}_{\mathrm dx} \end{equation}

ということである。正確には、上に書いたような単純な極限ではなく、「下からの極限」と「上からの極限」になるようにしてから両方を計算した上で二つの極限が一致することを示さなくてはいけない。一致しない場合は「積分可能でない」関数だということになる。

積分を式で書くとき、$\mathrm dx$の位置は$\int_a^bf({x})\mathrm dx$のように後でもいいし、$\int_a^b\mathrm dx f({x})$のように積分記号の直後でもよい。意味は変わらない(微小長方形の面積を$(縦)\times(横)$と書いても$(横)\times(縦)$と書いても問題ないのと同じ)。

$f({x})=AB$のような場合に$\int_a^b \mathrm dx AB$と書くと$AB$を積分しているのか、$A$を積分した後で$B$を掛けるのかわかりにくくなる、という難点があるので$\int_a^b AB \mathrm dx$と書いた方がよいという考え方もできる。一方、$\int_a^b \mathrm dx AB$と書いた方が「積分の上限・下限」という情報と「どの変数で積分しているか」という情報が近い場所にあってよい今の段階ではあまりメリットがないように思えるかもしれないが、後で「重積分」つまり「積分した後で別の変数でまた積分」のようなことをやる時は、$\int_{a}^{b}\mathrm dx \int_c^d \mathrm dy f({x},{y})$のような書き方の方が便利である。という考え方もできる。

この定義からわかるように、$f({x})$が負の領域での積分はマイナスの値になる。つまり定積分の結果は単純に面積ではなく「$x$軸より下に来ていたら負にして計算する面積」である。

「いやそれは困る。面積は正であって欲しい」という人は、絶対値記号を使って$\int \left|f({x})\right|\mathrm dx$を計算すればよい(実際の計算においては$f({x})$の正負に応じて場合分けが必要になるだろう)。

また、定積分の意味するところから明らかではあるが、

\begin{equation} \int_a^b f({x})\mathrm dx + \int_b^c f({x})\mathrm dx = \int_a^c f({x})\mathrm dx\label{intsum} \end{equation} という式が成立する。これは${x}$の積分の場合だけでなく、全ての関数の定積分で成立する。また、 \begin{equation} \int_a^b f({x})\mathrm dx =- \int_b^a f({x})\mathrm dx \label{hantaiint} \end{equation}

すなわち、「上限と下限を取り替えると符号がひっくり返る」という性質元々の「面積を計算したい」という動機だけから考えると、$a< b$の時に$\int_b^a f({x})\mathrm dx$を考えるのはナンセンスに思えるかもしれない。しかし、数式を書く上での規則は、できる限り「例外がない」ものが望ましいので、イレギュラーに見える式も作っておけば後で役立つ(かもしれない)。も持つ。

この式を導くには、「二つ上の式はどのような$a,b,c$でも成立する式であるべきだ」これも「できる限り例外がない規則」が欲しいからである。と考えた上で$c=a$を代入すればよい。すると右辺に出てくる$ \int_a^a f({x})\mathrm dx$が0になることから上の式が導ける。これらを合わせて

\begin{equation} \int_a^c f({x})\mathrm dx - \int_a^b f({x})\mathrm dx = \int_b^c f({x})\mathrm dx\label{hikisanint} \end{equation}

という式を作ることもできる(上の図をもう一度よく見るとわかる)。これを使うと、

\begin{equation} \int_{x_1}^{x_2}{x}\mathrm dx = \int_{0}^{x_2}{x} \mathrm dx - \int_{0}^{x_1}{x} \mathrm dx ={(x_2)^2\over 2}-{(x_1)^2\over 2} \end{equation}

のように、$\int^{x_1}_0{x}\mathrm dx$がわかれば任意の範囲での定積分を計算することができることになる。

また、微分同様、定積分も線型性を持つ。すなわち、

定積分の線形性
\begin{equation} \int_a^b\left( \alpha f({x})+\beta g({x}) \right)\mathrm dx =\alpha\int_a^b f({x})\mathrm dx+\beta\int_a^b g({x})\mathrm dx \end{equation}
$\alpha,\beta$は任意の定数、$f({x}),g({x})$を任意のこの範囲で積分可能な関数。

が成立する。

4.2.3 グラフの面積:放物線の例

次に、放物線( ${y}={x}^2$のグラフ)の下の面積を計算してみよう。同様に$0<{x}< x_0$という範囲を考えることにして、その領域を$N$分割して、微小長さ$\mathrm dx={x_0\over N}$ごとに分けて、その微小長さを横、高さを${y}={x}^2$として作られる長方形の面積をどんどん足していくことにする(下の図参照)。

$n$番目の長方形の縦の長さは$\left(n\times{x_0\over N}\right)^2$で横が${x_0\over N}$だから、この二つを掛けた答えである$n^2{(x_0)^3\over N^3}$を$n=1$から$n=N-1$まで足すという計算を行う。結果は

\begin{equation} \sum_{n=1}^{N-1}n^2{(x_0)^3\over N^3} ={(x_0)^3\over N^3}\underbrace{\sum_{n=1}^{N-1}n^2}_{{N(N-1)(2N-1)\over 6}} =(x_0)^3\times{(N-1)(2N-1)\over 6N^2}\label{NNNN} \end{equation}

となる。途中で$\sum_{n=1}^{N-1}n^2={N(N-1)(2N-1)\over 6}$という公式を使っている。最後にある${(N-1)(2N-1)\over 6N^2}$は$N\to\infty$で${1\over 3}$に収束するから、今考えている面積は${(x_0)^3\over 3}$へと収束する。前節同様、今求めた面積(「下からの極限」)は求めたい面積より少し小さいが、「上からの極限」を考えると今求めたより少し大きい面積がやはり${(x_0)^3\over 3}$へ収束することがわかるので、

\begin{equation} \int_0^{x_0}{x}^2\mathrm dx={(x_0)^3\over 3}\label{sekibunxsq} \end{equation}

が求められたことになる。ここで求めたのは「$0$から$x_0$まで」だが、ここまでやっておけば、任意の範囲についての積分は

\begin{equation} \int_{x_1}^{x_2}{x}^2\mathrm dx = \int_{x_2}^{0}{x}^2\mathrm dx - \int_{x_1}^{0}{x}^2\mathrm dx={(x_2)^3\over 3}-{(x_1)^3\over 3} \end{equation}

のように計算できる。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

分かりやすかったです。
それはよかった。

先生の授業はどの先生方よりもイメージでとらえやすくわかりやすいです。
だったらあまり休まずに授業に来てね。

今日は積分について学んだ。
学びましょう。

積分が楽しくなった。来週も楽しみです。
以降でもっと深くやっていきます。

積分について簡単な例を使って積分とは何かということが理解できて面白かったです。
積分はこれから御世話になる計算です。

デルタ関数の考え方は驚いた。積分のイメージがしっかりできたと思います。
デルタ関数、いつかは使うことになると思います。

積分かぁ〜という気分でした。ちゃんと復習していきたいです。
「かぁ〜」ってなんだろう? まぁとにかく復習を。

$\int x\mathrm dx$の記号の意味がわかった。
記号の意味は大事です。

積分の公式の記号のひとつひとつの意味がわかったのですっきりした。
すっきり理解しておきましょう。

積分の$\int_a^bf(x)\mathrm dx$の$\mathrm dx$がついている理由がわかった。
もちろん、理由があるんです。

インテグラルと$\sum$の意味は同じですか?
いやだから授業中も$\sum$は単なる足算で、連続的に変化する量を足算するという「足算の化け物」が$\int$だと言ったでしょ。

$\sum_{n=0}n^2={N(N-1)(2N-1)\over 6}$は今の段階で求めることができますか? 積分でやる?
高校レベルでできますよ。数学的帰納法を使うとか。

デルタ関数の積分はそのままやるとできないので、面積が1となるデルタ関数もどきの関数を用いてその底辺の極限を取るという方法で定義されていることがわかった。
実は「デルタ関数もどき」の作り方は他にもいろいろあります。

高校のときに普通にやっていた積分がこんなに奥深いものだとは思わなかった。
いやいや、まだまだこれから。もっと「奥」があります。

積分とは小さい長方形の面積の和である。この本質を念頭に様々な関数の積分に取り組みます。
本質は大事です。

今日は高校の範囲だったので良い復習になりました。
少しずつ大学範囲になっていきます。

積分ができれば色々なものの面積を求められると思ったが、測りたいものを式化しないといけないのが不便だと思った。
しかし式で表すってのは自然科学の第一歩ですからね。

積分が面積を求める計算だというのは理解していたけど、$\int$の中身はタテ×ヨコをしていて、長方形をいくつも足しあわせている計算だということが、今日しっかりイメージを持って理解することができてよかったです。長方形をつくるときに、少しはみ出したり足りなかったりする三角形は、細かく区切っていくと0になることがわかった。
積分のイメージを持って行きましょう。

積分のときの$\mathrm dx$がイマイチわからなかったけど、長方形を考えれば当たり前なのだと分かりました。
そのイメージが大事です。

積分の考え方が難しくて頭が痛い。友達とたくさん問題といてマスターする。
難しいけど使えるととても便利なのが積分。頑張ってマスターしてください。

積分の考え方は何となくしか知っていなかったけど、図などを見ると積分はこんなことをしているんだと新たにわかったことがあった。
なんとなくではない理解に達しましょう。

$x\mathrm dx$の高さ×底辺の話はすっきりした。最近「ゆゆ式」というアニメを観始めました。
すっきりしてよかったです。そのアニメは観たこと無い。

積分が微小な幅の長方形の和であるということがわかった。
はいそのイメージで理解しましょう。

積分の性質や簡単な計算の仕方を理解した。ここからの応用につなげていく。
応用はすごく、たくさんあります。

積分の仕組みを詳しく知れた。
仕組みは大事。

$\int_0^{x_0}x\mathrm dx$の高校で普通に習っていたことが、実は0から$x_0$までの(底辺$x$)×(高さ$\mathrm dx$)の足算の意味だったことを学んだ!!
一応、高校でもその説明自体はあったはずだと思いますよ。

積分を「足し算の化け物」と言う表現の豊かさにほっこり。
まぁ「化け物」としか言いようがないものなのですよ。

積分の証明がとても分かりやすかったです。$\sum$を用いる考え方は知らなかったので、とてもおもしろかったです。
もちろん、足し算の化け物ですから。

積分とは何かということが、微小な長方形の足し算だということがよく分かりました。
その足し算をいかにうまくやるか、ここが大事。

改めて積分について詳しく学びました。高校のときは分からなかったけど、今日の授業で少しわかりました。
積分は大事ですよ。

四角形をいっぱい足して面積計算=積分。
そのイメージでとらえておいてください。

今日の積分の話は半分高校でならったものだったけど、デルタ関数のは初めて聞いた。
デルタ関数は、いずれ使うことになるでしょう。

$\int f(x)\mathrm dx$の$f(x)\mathrm dx$の部分が長方形の面積だということを初めて知った。
実はそうなので、これからはそのイメージで見てください。

積分の方が先にできていたのにびっくりしました! もうすぐ期末なので頑張って復習したいです。
人間の欲求としては、積分(面積や体積知りたい)の方が先に出てきそうでしょ。

$\sum_{n=1}^{N-1}{n(x_0)^2\over N^2}=\sum_{n=1}^N{N(x_0)^2\over N^2}$が同じだというのが面白かった。大学でオーダー(${\cal O}\left({1\over N}\right)$)が出てきて、比べてとても小さい値は省けるという考え方があっての等号だと思いました。
はいそうです。$N\to\infty$を取らないと=にはなりませんね。

積分の考え方がわかった。$\mathrm dx$の意味がわかってよかったです。
どんな記号にもちゃんと意味がある。

積分の記号の意味がおもしろいと思った。普段気にかけなかったことにも意味があって凄いなと思った。
記号は誰かが作ったものなので、ちゃんと意味を持たせて作らえて。

不定積分の知識を元にどのように考えたら定積分が簡単に解けるのか見極められるようにする。
ここから先でいろいろ練習していきましょう。

$x\mathrm dx$の意味が分かったのでよかったです。デルタ関数を忘れていたので復習をしっかりしたいと思います。
記号にはちゃんと意味があります。

積分を今まで微分の逆というふうにしか考えておらず、作業のような感じで計算していたが意味がわかってよかった。
やはり意味を理解した上で手を動かさないと。

微分・積分は素粒子の敵ですね。物理って複雑ですね。
えっ。物理が複雑なのはその通りだけど、微分積分は別に素粒子の敵じゃないと思うけど。

微分をより理解できました。
それはよかった。

積分の根本的ない見がよくわかり助かった。やはり微分の逆という理解だけでは足りないと思った。
もともとは「足し算の化け物」で始まるのです。

$\int_0^{x_0}x\mathrm dx$が、長方形を元にして積分していると初めて知って凄いと思った。
こうして「小さいものを足している」という感覚をつかんでおいてください。

積分のくわしいところまで勉強した。三角形の面積も元をたどれば積分だということが改めてわかった。小さな三角形を無視して良いのかという問題も解説の仕方がわかってよかった。
中身も理解したうえで、計算していきましょう。

積分とは