前回では、冪(べき)、すなわち$x^n$の形の関数を考えた。大事なところを確認しておくと、
←次数低い 次数高い→ | |
$\cdots,{1\over x^3},{1\over x^2},{1\over x},1,x,x^2,x^3,\cdots$ | |
$x\ll 1$の時 | ←次数低いほど大事 |
$x\gg 1$の時 | 次数高いほど大事→ |
ということである。数学としても大事だが、「自然科学で測定量などを調べて考える」ときもこの「どの項が大事か」という感覚は必要である。
前節まで、n次式で表された関数を考えてきたが、さらにいろんな冪の関数を足したものを考えていくことにしよう。$5,8x,4x^3y^2,\cdots$などのように、定数と変数のn乗(ここでのnは0以上の整数)になる式を「単項式(monominal)」と呼び、単項式を足して(あるいは引いて)できた式を「多項式(polynomial)」と呼ぶ。変数(文字)を含まない項は「定数項」と呼ぶ。xnが掛算されている項は「n次の項」と呼ばれる($n=0$の場合が「定数項」である)。最大の次数の項がn次の単項式である多項式は「n次の多項式」と言う。$x^4-3x^2+5$は「$x$に関して4次の多項式」である(「n次の多項式」は「nより小さい次数の単項式」を含んでよい)。
y=ax+b(a,bは定数)の形、すなわち1次の多項式の形の関数を「1次関数」と呼ぶ。ここで、bは0でも構わないが、a≠0である(でないと、1次式でなくなってしまう)。aを「傾き」、bを「切片(またはy切片)」と呼ぶ。1次関数のグラフは正比例同様「直線」となる。
bの意味がx=0のときのyであることは式を見てもわかる。一方aは増加率すなわち~xが1増えたとき、yがどれだけ増えるかという意味を持つ。この「1次の項の係数が増加率を表す」という点は後々重要になるだろう。
図では、aはまさに「線の傾き」を表現している。
y=ax2+bx+cの形、すなわち2次の多項式の形の関数を「2次関数」と呼ぶ。そのグラフは「放物線(parabola)」と呼ばれるこの線は物体を放り投げた時の軌跡なので「放物」と名付けられている。。このページでは、y=ax2+bx+cの形の関数(2次関数)のグラフを見よう。
これでわかるように$b,c$は放物線の位置を決めるパラメータ関数の独立変数とは別の「変化できる量」をパラメータ(媒介変数)と呼ぶ。であり、$b,c$を変えても形は変わらず、平行移動するだけである。一方、$a$が変化すると放物線の形が変わる。
さらに、↑こんな感じで踊ってみた。2次の係数を変化させた時の放物線の形状変化の感じ。
ここで、↑こんな感じで踊ってみた。1次の係数を変化させた時の放物線の移動の感じ。
では次に3次関数を考えよう。
y=ax3+bx2+cx+dの形の関数である。パラメータはさらに一つ増えて4個となっている。下に、a,b,cを変化させた時のグラフの変化の様子を示した(dすなわち定数項の変化についてはy方向の平行移動であることはもうわかるだろうから省略した)。
x=0の近辺だけを見ると、2次の項の係数(この場合b)がやはり「x=0近辺での曲がり具合」を、1次の項の係数(この場合c)がやはり「x=0近辺での傾き」を表現している(ただしこれはx=0付近でみ)。
見た目ではわかりにくいかもしれないが、左の図(3次の係数aを変えている図)では、1次と2次の係数は変わってないので、原点(重なりあっている部分)においては傾きと曲がり具合は変化していない。
2次関数では「上に凸なら山、下に凸なら谷」が一つあるだけだったが、3次関数では山と谷が一つずつ現れる(可能性がある状況によっては山も谷もない。)。それだけ複雑な形となっている。
このページでは、y=ax3+bx2+cx+dの形の関数(3次関数)のグラフを見よう。
ここで関数の平行移動とはどういうものかを考えておこう。
グラフをy方向にy0だけ平行移動させるには、y→ y-y0と置き換えて、y-y0=f(x)という式に直せばよい。
同様にx方向にx0だけ平行移動させるには、x→x-x0と置き換えてy=f(x-x0)という式に変える。両方を同時に行うと、
$y=f(x){\rightarrow}y-y_0=f(x-x_0)$
とすることで、x方向にx0、y方向にy0という平行移動が実現する。
この平行移動によって、
$y= ax^2+bx+c ~~~\to~~~y=a\left(x-x_0\right)^2+b\left(x-x_0\right)+c$
と式が変わるが、結果を展開すれば
$ax^2+\underbrace{(b+2a)}_{新しいb}x+\underbrace{a^2(x_0)^2-bx_0+c}_{新しいc}$
となり、2次の項の係数aは変化せず、1次の項と定数項が変化することになる。逆に言えば、b,cを変化させても起こる変化はグラフの平行移動で、「形」は変わらないということになる。
もともと、2次関数は三つのパラメータ$a,b,c$を含んでいた(独立変数-従属変数のペアとは別に、「その数を変化させると関数そのものの形が変化する」数を「パラメータ」と呼ぶ)。ところが放物線を平行移動させるとパラメータのうち二つはどんどん変化する。ということは、三つのパラメータのうち一つだけが「平行移動しても変わらない、形を表すパラメータ」なのだということがわかる。
平行移動は二つのパラメータを持つから、関数そのもののパラメータ(2次関数なら3つ、3次関数なら4つ、4次関数なら5つ…)のうち、「平行移動しても変化しない、形を表現するパラメータ」の数は2個減って、2次関数なら1つ、3次関数なら2つ、4次関数なら3つ…となる。
これからわかるように、1次関数(グラフが直線)の場合に限っては、$x$方向の平行移動と$y$方向の平行移動は同じ意味になる。つまり、1次関数の場合に限り、平行移動によって変わるパラメータは一つしかないので、1次関数の「形を表すパラメータ」は一つ残るのである。
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。