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&color(Red){今日はまず前回の復習の後、順番を変えて5.5節からやった。};


**5.5 (新しい意味の)ローレンツ短縮 [#aff0975e]


#ref(tanshuku.png)

ローレンツがad hocに導いたローレンツ短縮と似た現象が、この座標変換でも導かれることを示そう。今、一つの棒をx-t座標系で見て静止するように置いたとする。棒の長さをLとして、一方の端をx=0、もう一方の端をx=Lに置いたとする。時間tが経過してもこのxの値は変化しない。では、これをx' 座標系で見るとどうか。棒の一方の端の時空座標を&mimetex((x_1,t_1));または&mimetex((x'_1,t'_1));で、もう一方の端の時空座標を&mimetex((x_2,t_2));または&mimetex((x'_2,t'_2));で表すとすれば、
#mimetex(\begin{array}{rcl}(x_1,ct_1)=(0,ct)&\leftrightarrow& (x'_1,ct'_1)=(-\gamma\beta ct,\gamma ct)\\(x_2,ct_2)=(L,ct)&\leftrightarrow& (x'_2,ct'_2)=(\gamma(L-\beta ct),\gamma (ct-\beta L))\end{array})
となる。


#ref(tanshuku2.png)


ここでx'座標系で棒の長さを測るとしよう。「x'座標系での棒の長さ」は&mimetex(t'_1=t'_2);にした時の&mimetex(x'_2-x'_1);で計算される。上の表の&mimetex((x'_1,t'_1));と&mimetex((x'_2,t'_2));では、&mimetex(t'_1\ne t'_2);なので、&mimetex(t_2);の方の時間を&mimetex(t\to t+{\beta\over c}L);とずらして、
#mimetex( (x_2,t_2)=(L,t+{\beta\over c}L)\leftrightarrow (x'_2,t'_2)=(\gamma(L-\beta ct-\beta^2 L),\gamma ct) )
とすれば、&mimetex(t'_1=t'_2);になる。この時の&mimetex(x'_2-x'_1);を計算すると、
#mimetex( x'_2 - x'_1 = \gamma(L-\beta^2L)=L{1-\beta^2 \over\sqrt{1-\beta^2}}=L{\sqrt{1-\beta^2}})
となり、x系での長さLに比べ、&mimetex(\sqrt{1-\beta^2});倍になっている(縮んでいる)ことがわかる。


この式は形としてはローレンツがマイケルソン・モーレーの実験結果を説明するために導入した短縮と同じである。逆に言うと「ローレンツ短縮が起こるべし」という要請から、係数Aを決めることも可能であったことになる。しかし、今求めた新しい意味のローレンツ短縮と、古い意味のローレンツ短縮は根本的に意味が違う。まず、ローレンツはエーテルとの相対運動が理由で機械的に短縮が起こると考えたが、ここでの短縮は座標変換によって生じたものであって、力が働いて起こる短縮とは全く意味が違う。また、図で説明してあるように、座標系が違うことによって「同時刻で空間的に離れた2点」という2点の定義の仕方そのものが変わってくる。ガリレイ変換ではこんなことは生じない。古い意味のローレンツ短縮はガリレイ変換を使った物理の中で考えられたものだから、同様に「座標系が違えば同時刻が違う」ということを考慮せずに単に短縮すると仮定している。

何よりここで導かれた短縮は光速度不変の原理と特殊相対性原理から自動的に導出されたもので、筋道だった説明が与えられていることが大きな違いである。

&color(Red){ここで5.3節に戻った。};

**5.3 行列およびテンソル式で書くローレンツ変換 [#ie9f5d9e]
ここまでで求めた座標変換は、行列で表現すると
#mimetex( \left(\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'	\end{array}\right)=\left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right) \left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z	\end{array}\right))
&aname(lorentzxx);
である。例によって、&mimetex(\beta={v\over c},\gamma={1\over \sqrt{1-\beta^2}}); という記号を使った。

これを、
#mimetex( \left(\begin{array}{cccc}       \alpha^0_{~0}&\alpha^0_{~1} &\alpha^0_{~2} & \alpha^0_{~3} \\       \alpha^1_{~0}&\alpha^1_{~1} &\alpha^1_{~2} & \alpha^1_{~3} \\       \alpha^2_{~0}&\alpha^2_{~1} &\alpha^2_{~2} & \alpha^2_{~3} \\       \alpha^3_{~0}&\alpha^3_{~1} &\alpha^3_{~2} & \alpha^3_{~3} \\				\end{array}\right)=\left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right))
(ローレンツ変換の行列)&aname(lorentzx);
とおいて、座標変換を
#mimetex( \left(\begin{array}{c} ct'\\x'\\y'\\z'       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cccc}       \alpha^0_{~0}&\alpha^0_{~1} &\alpha^0_{~2} & \alpha^0_{~3} \\       \alpha^1_{~0}&\alpha^1_{~1} &\alpha^1_{~2} & \alpha^1_{~3} \\       \alpha^2_{~0}&\alpha^2_{~1} &\alpha^2_{~2} & \alpha^2_{~3} \\       \alpha^3_{~0}&\alpha^3_{~1} &\alpha^3_{~2} & \alpha^3_{~3} \\				\end{array}\right) \left(\begin{array}{c} ct\\x\\y\\z       \end{array}\right))
と書こう。&mimetex(\alpha^\mu_{~\nu});(&mimetex(\mu,\nu);は0,1,2,3を取る)がどんなものか、我々はすでに知っているのだが、ここではまだ知らないとして、この行列の満たすべき条件を考えていこう。

上の式を短く書くならば、
#mimetex( (x')^\mu=\alpha^\mu_{~\nu}x^\nu)
である(アインシュタインの規約を使って、右辺に書くべき&mimetex(\sum_{\nu=0}^3);を省略した)。このように足し上げられている(つまりほんとうは&mimetex(\sum_\mu);があるのに省略されている)添字は「つぶされている添字」と言ったり「ダミーの添字」と呼んだりする。


なぜ「ダミー」などと、一人前の添字扱いしてもらえないかというと、これは&mimetex( \alpha^\mu_0 x^0+\alpha^\mu_1 x^1+\alpha^\mu_2 x^2+\alpha^\mu_3 x^3 );と書くのが面倒なので&mimetex(\alpha^\mu_\nu x^\nu);と書いているだけであって、νという添字はあってなきがごときものだからである。またこれを「つぶれている」と表現するにも理由があるが、それは後で述べる。


要請1.の条件は

&mimetex( \eta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu=0);の時、&mimetex(eta_{\mu\nu}(x')^\mu (x')^\nu= \eta_{\mu\nu}\alpha^\mu_{~\mu'} x^{\mu'} \alpha^\nu_{~\nu'}x^{\nu'}=0);

&aname(kouensuijoken);

と書くことができる。ただし、
#mimetex( \eta_{\mu\nu}=\left(\begin{array}{cccc}		-1&0 &0 &0 \\		     0 &1 &0 &0 \\		     0 &0 &1 & 0\\		     0 &0 &0 &1 \\		     \end{array}\right))
である。

ここで具体的な例について&mimetex(\eta_{\mu'\nu'}\alpha^{\mu'}_{~\mu}\alpha^{\nu'}_{~\mu}); を計算してみよう。そのため、これを行列の計算に書き直す。2行2列の行列の計算が
#mimetex( \left(\begin{array}{cc}  A^1_{~1}& A^1_{~2} \\  A^2_{~1}& A^2_{~2} \\       \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc}  B^1_{~1}& B^1_{~2} \\  B^2_{~1}& B^2_{~2} \\       \end{array}\right)= \left(\begin{array}{cc}  A^1_{~1}B^1_{~1}+ A^1_{~2}B^2_{~1}&  A^1_{~1}B^1_{~2}+ A^1_{~2}B^2_{~2}\\  A^2_{~1}B^1_{~1}+ A^2_{~2}B^2_{~1}&  A^2_{~1}B^1_{~2}+ A^2_{~2}B^2_{~2}       \end{array}\right))
で表されることと、掛け算の結果を行列&mimetex(\left(\begin{array}{cc}  C^1_{~1}& C^1_{~2} \\  C^2_{~1}& C^2_{~2} \\       \end{array}\right));で表すならば、この式は

#ref(matrixm.png)

のように書けることを使う。つまり「前の行列の後ろの添字(列の添字)と、後ろの行列の前の添字(行の添字)が同じもの同志を掛け算し、その和を取る」というのが行列の掛け算のルールである。説明は2行2列の行列で行ったが、これらの計算ルール自体は、4行4列の行列であっても同様に使える。


#ref(matrixa.png)


ここで、&mimetex(\eta_{\mu'\nu'}\alpha^{\mu'}_{~\mu}\alpha^{\nu'}_{~\mu});の計算をする。掛け算のルールに合うようにするためには、1番左側にあるαの行列が転置されていること、掛け算の順番が&mimetex(\alpha^T,\eta,\alpha);の順であることに注意せよ。具体的に求めた([[ローレンツ変換の行列>#lorentzx]])をこの式に代入してみると、

#mimetex(\begin{array}{rl}&\left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\left(\begin{array}{cccc}		-1&0 &0 &0 \\		     0 &1 &0 &0 \\		     0 &0 &1 &0 \\		     0 &0 &0 &1 \\		     \end{array}\right)\left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\\=&\left(\begin{array}{cccc}  -\gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\\=&\left(\begin{array}{cccc}  -\gamma^2(1-\beta^2)& 0 &0 &0 \\0&\gamma^2(1-\beta^2) &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cccc}  -1& 0 &0 &0 \\0&1 &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\end{array})
となる。つまりこの場合、&mimetex(\eta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu=0);という条件は必要でなく、一般的に
#mimetex( \eta_{\mu\nu}= \eta_{\mu'\nu'}\alpha^{\mu'}_{~\mu}\alpha^{\nu'}_{~\nu})
(ηααの式)&aname(lorentzalphaalpha);
が成立していることがわかる。なお、x,y面内における回転を表す行列は
#mimetex( \left(\begin{array}{cccc}  1&0 &0 &0 \\	0&\cos\theta &\sin\theta &0 \\	0&-\sin\theta &\cos\theta &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right))
であるが、これを&mimetex(\alpha^\mu_{~\nu});としても([[ηααの式>#lorentzalphaalpha]])が成立することは3次元部分に関しては&mimetex(\eta_{\mu\nu});は単位行列であることを考えれば自明だろう。具体的な計算式を書いておくと、
#mimetex( \left(\begin{array}{cccc}  1&0 &0 &0 \\	0&\cos\theta &-\sin\theta &0 \\	0&\sin\theta &\cos\theta &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right) \left(\begin{array}{cccc}  -1&0 &0 &0 \\	0&1 &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right) \left(\begin{array}{cccc}  1&0 &0 &0 \\	0&\cos\theta &\sin\theta &0 \\	0&-\sin\theta &\cos\theta &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right) = \left(\begin{array}{cccc}  -1&0 &0 &0 \\	0&1 &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right))
である(最初の行列は&mimetex(\alpha^T);なので転置されていることに注意)。

他の一般の軸に関する回転や反転に関しても同様である。

([[ηααの式>#lorentzalphaalpha]])が成立する&mimetex(\alpha^\mu_{~\nu});で表される座標変換を広い意味でのローレンツ変換と呼ぶ。広い意味でのローレンツ変換には狭い意味でのローレンツ変換の他に、回転や反転、さらにその組み合わせが含まれる((狭い意味でのローレンツ変換はboostと呼ばれることもある))。

この性質からローレンツ変換を複数個組み合わせた変換もやはりローレンツ変換であることがわかる。すなわち、二つのローレンツ変換が行列&mimetex(\alpha^\mu_{~\nu});と&mimetex((\alpha')^\mu_{~\nu});で表されているとすると、この二つの合成変換である&mimetex(\alpha^{\mu}_{~\nu}(\alpha')^\nu_{~\rho});もローレンツ変換である。それは具体的に計算すれば
#mimetex( \eta_{\mu\nu}\alpha^\mu_{~\rho}(\alpha')^\rho_{~\alpha}\alpha^\nu_{~\lambda}(\alpha')^\lambda_{~\beta}=  \eta_{\rho\lambda}(\alpha')^\rho_{~\alpha}(\alpha')^\lambda_{~\beta}=\eta_{\alpha\beta})
となることで証明できる。

&color(Red){どうも計算の話が続くと急速に聞く気を失う人が多いようだ。「行列って便利だし、他の分野でも使うんだよ。CGなんかでは使いまくるし、銀行や保険なんかでお金の計算にだって使う。応用範囲はすごく広い」という話をした。さてわかってもらえたやら。};

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&color(Red){5.4節は授業ではやりませんでした。読んでおいてください。};~

**5.4 一般的方向へのローレンツ変換 [#u1e25364]
ここで、x座標系から見るとx'座標系の原点が3次元速度&mimetex(\vec v=\left(v_x,v_y,v_z\right));を持つような座標変換がどのようなものかを求めておこう。このような座標変換は、

+ 3次元速度&mimetex(\left(v_x,v_y,v_z\right));が&mimetex(\left(v,0,0\right));(ただし、&mimetex(v=\sqrt{(v_x)^2+(v_y)^2+(v_z)^2});)に見えるような座標Xへの回転。
+ X座標から見て、原点が速さvでx方向へ移動しているような座標系X'へのローレンツ変換。
+ X'から、3次元速度&mimetex(\left(v,0,0\right));が&mimetex(\left(v_x,v_y,v_z\right));に見えるような座標x'への(逆)回転。

という3つの変換の積で考えることができる。

この変換の一つの求め方は、行列を使うことである。X座標系でのX,Y,Z方向の単位ベクトルをそれぞれ&mimetex(\vec e_X,\vec e_Y,\vec e_Z);として、&mimetex(\vec e_X);のy成分を&mimetex((\vec e_X)_y);のように表すとすれば、最初の回転は
#mimetex( \left(\begin{array}{cccc}  -1&0 &0 &0 \\	0&(\vec e_X)_x &(\vec e_X)_y &(\vec e_X)_z \\	0&(\vec e_Y)_x &(\vec e_Y)_y &(\vec e_Y)_z \\	0&(\vec e_Z)_x &(\vec e_Z)_y &(\vec e_Z)_z \\       \end{array}\right))
と表せる。
逆回転を表す行列は
#mimetex( \left(\begin{array}{cccc}  -1&0 &0 &0 \\	0&(\vec e_X)_x &(\vec e_Y)_x &(\vec e_Z)_x \\	0&(\vec e_X)_y &(\vec e_Y)_y &(\vec e_Z)_y \\	0&(\vec e_X)_z &(\vec e_Y)_z &(\vec e_Z)_z \\       \end{array}\right))
である。これらの行列の積を作って、ローレンツ変換を求めることができるだろう。

以下ではもう少し楽な方法で考えることにする。
&mimetex(X=\vec e_X\cdot \vec x,Y=\vec e_Y\cdot\vec x,Z=\vec e_Z\cdot\vec x);であって、
#mimetex( X'=\gamma(X-\beta ct),~~cT'=\gamma(cT-\beta X),~~ Y'=Y,~~Z'=Z)
である。よって&mimetex(x\to x');の座標変換は
#mimetex( \vec e_X\cdot \vec x'=\gamma\left(\vec e_X\cdot \vec x-\beta ct\right),~~ct'=\gamma\left(ct-\beta \vec e_X\cdot \vec x\right),~~\vec e_Y\cdot\vec x'=\vec e_Y\cdot\vec x,~~\vec e_Z\cdot\vec x'=\vec e_Z\cdot\vec x)
を満たすようなものになる。&mimetex(\vec x');は、x成分、y成分、z成分を足し合わせて
#mimetex( \vec x'=\gamma\left(\vec e_X\cdot \vec x-\beta ct\right)\vec e_X+\left(\vec e_Y\cdot\vec x\right)\vec e_Y+\left(\vec e_Z\cdot\vec x\right)\vec e_Z)
となる。ここで、
#mimetex( \vec x=\left(\vec e_X\cdot \vec x\right)\vec e_X+\left(\vec e_Y\cdot\vec x\right)\vec e_Y+\left(\vec e_Z\cdot\vec x\right)\vec e_Z)
という当たり前の式(この式は、ベクトルをX成分、Y成分、Z成分に分けてからもう一度足すと元に戻る、というだけのこと)を使うと、
#mimetex( \vec x'=\gamma\left(\vec e_X\cdot \vec x-\beta ct\right)\vec e_X+\vec x-\left(\vec e_X\cdot \vec x\right)\vec e_X=\left((\gamma-1)\vec e_X\cdot \vec x-\beta\gamma ct\right)\vec e_X+\vec x)
と書ける。&mimetex(\vec e_X);は速度の方向を向いた単位ベクトルであるから&mimetex({\vec \beta\over \beta});と書けるので、
#mimetex( \vec x'=\left({\gamma-1\over \beta^2}\vec \beta\cdot \vec x-\gamma ct\right)\vec \beta+\vec x)
となる。




***章末演習問題 [#k91d1b96]
''[演習問題5-1]'' ミュー粒子と呼ばれる粒子は、&mimetex(2\times10^{-6});秒で崩壊してしまう。ウラシマ効果を考えないと、たとえ光の速さ(&mimetex(3\times10^8);m/s)で走ったとしても、&mimetex(6\times 10^2);mしか走れない。しかし、地上からの高度約10km=&mimetex(10^5);mで発生したミュー粒子が、ちゃんと地上に到着する。これはミュー粒子が非常に速い速度で走っているおかげで時間の進み方が遅くなっているからであると考えることができる。

ミュー粒子の速度はいくら以上でなくてはいけないか、概算せよ。

これをミュー粒子の立場に立って(つまり、ミュー粒子と一緒に動く座標系で)考えるとどうなるだろうか。この立場では、ミュー粒子は静止している。彼(ミュー粒子)の立場では、動いているのは地球の方である。するとミュー粒子は&mimetex(2\times10^{-6});秒で崩壊してしまうはずである。ではなぜ、大気圏の下まで到着することができるのか??



''[演習問題5-2]''

#ref(surechigai.png) 

二台の電車AとBのすれちがいをある人(観測者O)が見ている。


#ref(surechigaiG.png)

Oから見ると、AとBはx軸の正方向と負方向にそれぞれ速さvで走ってくるように見える。電車の固有長さ(すなわち、電車が静止している系で測定した長さ)はともに2Lであるとする。観測者の座標系で時刻t=0において、x=0の場所でA、Bの中央が一致していたとする。これらの電車の運動を表すグラフを書け。ヒントとして、右にO,A,Bの動きだけを記したグラフを書いておく。


また、電車Aの中央に乗っている観測者をα、電車Bの中央に乗っている観測者をβとする。α、β、Oの3人の世界線は、さっきのグラフの原点で重なる。αは「電車Bの方が電車Aより短い」と観測し、βは「電車Aの方が電車Bより短い」と観測する(互いに相手を「自分より短い」と判断する)。先の問題のグラフに「αが原点にいる時に観測する電車A,Bの長さ」と「βが原点にいる時に観測する電車A,Bの長さ」を書き込み、互いに相手を短いと観測することを説明せよ。

''[演習問題5-3]''行列を使った座標変換の練習をしよう。


#ref(translation.png)

我々は、x方向に速度vで動いている場合のローレンツ変換の行列
#mimetex(\left(\begin{array}{c} ct'\\x'\\y'\\z'      \end{array}\right)= \left(\begin{array}{cccc}  \gamma& -\gamma\beta &0 &0 \\	-\gamma\beta&\gamma &0 &0 \\	0&0 &1 &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} ct\\x\\y\\z      \end{array}\right))
を知っている。また、z軸周りに角度θだけ座標軸を傾ける座標変換の行列
#mimetex(\left(\begin{array}{c} ct''\\x''\\y''\\z''      \end{array}\right)=  \left(\begin{array}{cccc}  1&0 &0 &0 \\	0&\cos\theta &\sin\theta &0 \\	0&-\sin\theta &\cos\theta &0 \\	0&0 &0 &1 \\       \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} ct\\x\\y\\z      \end{array}\right))
も知っている。

この二つをうまく組み合わせて、「x軸からy軸方向に角度θだけ傾いた方向へ速度vで動いている観測者が静止するような座標系への座標変換」を作れ。ただし、二つの座標系の空間成分の空間的方向は一致するものとする。


#ref(translation2.png)


ヒント:まず、右の図のvの方向が&mimtex(x'');軸になるように座標回転した後、その&mimetex(x'');方向に速度vのboost(狭義のローレンツ変換)をする。その後で、x軸の方向が元と同じ方向を向くように座標回転して戻す。

&color(Red){演習問題5-2を課題とします。6月26日までに、前野の部屋(307)まで来て、黒板で解答を説明してください。〆切間際は混み合うので、なるべく早めにきてください。};

*学生の感想・コメントから [#i256a478]

&color(Green){行列の順番って変えてはいけないんじゃなかったんですか?};

&color(Red){はい。変えてはいけません。行列の形にした時は順番変えてはいけません。&mimtex(\alpha_{\mu\nu});とかの書き方をしている時は、行列じゃなくて行列の一個一個の成分として扱っているので、こう書いてしまったら変えてもいいのです。};

&color(Green){第7回の([[x'の仮定式>相対論2007年度第7回#xmbetact]]の前のところで、「この条件はガリレイ変換x'=x-vtでも成立する。」って書いてあるけど、ガリレイ変換は成り立たないから、ローレンツ変換を作ったんじゃなかったの?);};

&color(Red){その直前をよく読みましょう。「このことから、x'=0 という式を解くと、&mimetex(x=\beta ct);という答えが出るようになっていることがわかる。この条件は〜」とありますね。つまり、x'=0を解くと&mimetex(x=\beta ct);になるという点は、ガリレイ変換でも成立する(ローレンツ変換でも成立する)ということです。あくまでこれに限定しての話。};


&color(Green){ローレンツ短縮で、動いている人は物が短くなったことをわかっているものなんですか?};

&color(Red){わかりません。そもそも「動いている人」と言っても、ある人が止まっているのか等速直線運動しているのかは、判断できないものですから、全ての(等速直線運動している人は)「俺はとまっている」と主張できるわけです。そして、自分が止まっているという立場では、ローレンツ短縮なんて起きてません。あくまで、見る人の立場の問題です。};

&color(Green){ローレンツ短縮で物体の長さが変わるのは違う場所を測っているからだということでしたが、単位を揃えると等しくなるんですか?};

&color(Red){そんなことをすればそうなりますが、それは物理的に長さが1メートルなものを指さして「こいつの長さは50センチだ、俺がそう決めたからそうなんだ」と強引に決めているのと同じです。ある国で1メートルを50センチと決めたからと言って、身長がみな半分に縮むわけじゃありません。};

&color(Green){行列やテンソルはほんとに便利ですね。};

&color(Red){わかってくれましたか。長い計算を楽にするための道具です。};

&color(Green){テンソルって何ですか?};

&color(Red){正確な定義は実は後でやりますが、&mimetex(\alpha^\mu_\nu); のように添字のついた量のことです。};

&color(Green){行列を使うと計算しやすいものって、他にありますか?(複数)};

&color(Red){後あなたたちがお世話になるもので言うと、量子力学の波動関数の計算なんかは、行列計算を使うことがあります。};

&color(Green){計算が難しかった(複数)};

&color(Red){という人がけっこういるんだけど、計算自体は中学の数学ですよ!};

&color(Green){x系での長さに比べて棒の長さが縮むという話、図ではわかりにくかった。};

&color(Red){あの図を見てもなかなかわかりません。わかるようになるためには「4次元的長さ」という概念を知らないと。};

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