前回の感想・コメントシートから

 前回の授業の「感想・コメント」の欄に書かれたことと、それに対する返答は、

第3回授業への受講者の感想・コメント

にありますので見ておいてください。

 では、前回の続きから。

外積の成分表示での計算法

 外積の成分表示での計算についての説明ビデオは↓

 分配法則が成立するおかげで、2次元ベクトルをa=axex+ayeyb=bxex+byeyとすると、 a×b=(axex+ayey)×(bxex+byey)+axex×bxex=0+axex×byey+ayey×bxex+ayey×byey=0=axbyex×ey+aybxey×ex=axbyaybx のように外積が計算できる。2次元の外積という計算は、ベクトルの成分で言うと「x成分とy成分の積を、符号を変えて足す」という量になる。「外積には、同じ方向の成分は効かない」ということを思い出すと、axbxのような項が出てこないことに納得が行くだろう。

 二つの3次元ベクトルa=axex+ayey+azezb=bxex+byey+bzezの外積を計算する。まず a×b=(axex+ayey+azez)×(bxex+byey+bzez)=axex×bxex0+axex×byey+axex×bzez+ayey×bxex+ayey×byey0+ayey×bzez+azez×bxex+azez×byey+azez×bzez0 となる。同じ方向を向いたベクトルどうしの外積は0となることを使って消せる。 ex×ey=ez,   ey×ex=ez,ey×ez=ex,   ez×ey=ex,ez×ex=ey,   ex×ez=ey という関係式を使って、 axbyex×eyez+axbzex×ezey+aybxey×exez+aybzey×ezex+azbxez×exey+azbyez×eyex となり、

3次元の外積

a×b=(aybzazby)ex+(azbxaxbz)ey+(axbyaybx)ez

というのが答えである。

 このようなa,bの成分それぞれについて1次の式の形で書けるということから、「線形結合を作ってから外積を取ることと、外積を取ってから線形結合を作ることは同じ((αa+βb)×c=αa×c+βb×cおよび(c×αa+βb)=αc×a+βc×b)」という性質がある。

 ある集合の元(数でもベクトルでも、あるいはもっと抽象的な量でもいい)を決めると別の集合の元(こちらもなんでもよい)が決まるという関係のことを「写像(mapping)と言う。

 ある写像f(X)が「線形結合を取ってから写像しても、写像してから線形結合を取っても同じ(f(αX+βY)=αf(X)+βf(Y))であるとき、「この写像には線形性がある」あるいはもっと短く「この写像は線形である」と言う。

 外積は二つのベクトルから一つのスカラー(2次元)またはベクトル(3次元)への写像だが、写像元の二つのベクトルのどちらについても線形性がある。このような性質を「双線形性」と呼ぶ。

 よって、外積(実は内積も)は双線形である。

 3次元の外積の成分の式a×b=(aybzazby)ex+(azbxaxbz)ey+(axbyaybx)ezは、たくさんの項があってごちゃごちゃして見えるかもしれないが、この項は一定のルールで作られている。

 図に示すなら以下のような感じだ。

↑の図は、xの上がzzの下がxのような円環構造になっていると思って見てくれるとよい。

 数式の方の規則性も見ておこう。すべての項はabeという式になっているが、その下付き添字(,,)にはx,y,zが1個ずつ入っていて、「い→ろ→は」が、という順番(x,y,zの偶置換)のときはそのまま、という順番(x,y,zの奇置換)のときはマイナス符号をつけて、足すという計算をしている。

「1,2,3の偶置換」とは、1,2,3から初めて隣同士の交換を偶数回行うことによってたどりつける並びのことである(奇数回でたどりつけるのが奇置換)。たとえば2,3,1は 1,2交換,32,1,3交換2,3,1 と2回でたどりつけるので偶置換。3,2,1は 1,2,3交換1,3交換,23,1,2交換3,2,1 と3回でたどりつけるので奇置換である。

 「という順番」とは、x,y,zのどれから始めてもいいが、矢印の順番に三つを踏破する、という意味である(全部書いてしまうと、xyzyzxzxyである)。

 あるいは

のように基底ベクトルとベクトルの成分を並べて、「各行から一つずつ選んで掛け算する」「偶置換の順番のときは+1、奇置換の順番のときは1を掛ける」というルールにしたがって可能なすべての組合せを足していく、という操作を行った結果が外積である、と考えてもよい。