前回の感想・コメントシートから

 前回の授業の「感想・コメント」の欄に書かれたことと、それに対する返答は、

第5回授業への受講者の感想・コメント

にありますので見ておいてください。

前回のクイズ

 簡単なクイズとして、

逆行列がない行列は「面を線に写像する」と述べましたが、実は「面を点に写像する行列」(もちろんこれにも逆行列はない)があります。どんな行列でしょう??

というのを出しておきました。簡単かと思ったんですが、正解率は低かった(約50%)。正解は

すべての要素が0の行列(0000)

でした。この行列による線形写像は↓のような感じです。

 誤答としては、以下のようなものがありました。

2つの列ベクトルが等しい行列

 ↑これだと、線にはなりますが、問題は「点」になるやつです。

全射な行列

 ↑「全射」ということばはこの講義では使ってませんが、写像の結果が全空間(今の場合は全平面)を覆うという意味なので、「点」とは真逆です。

1行3列の行列

 ↑そもそも掛算できません。

表現行列

 ↑これはどういう意味で使っているのだろう? 行列は線形写像の表現なので、ある意味すべての行列は「表現行列」です。

単位行列?

 ↑自分でも?しているぐらいだから自信がなかったんでしょうが、違います。単位行列だと面から面ですね。

2×2行列の行列式

 前回、2×2行列の逆行列の話をしましたが、そこで何度も登場したadbcという式について、説明をしそこなっていたので、今回はまずその説明をします。

 D=adbcのことを「2×2行列の行列式(determinant)」と呼ぶ。

 「行列式」は「行列でできた式」の意味と勘違いされやすい。よって「ディターミナント」とカタカナ読みすることも多い。determinantは「これで行列の性質が決まる!」という意味を含ませた命名である。

 記号としてdetを使い、Aの行列式はdetAと書く。後で、3×3行列やそれより次元の高いn×n行列でも同様の式を考えるが、それらも「行列式」と呼び記号detを使う。

 前回も使ったアプリ
2x2行列
には、行列式を表示する機能があり、ある操作(この後で説明)をしても行列式変わらないことがわかる。その説明ビデオが↓
 以下の説明ビデオは↓
 ビデオと文章による説明を両方見て読んで、理解しておいてください。

 行列式は行列の要素すべてで決まるから、detAは(2×2行列の場合)4個の変数Aijの関数だと言えるが、見方によっては、「2本の列ベクトルv1,v2の関数」と見てもよいし、「2本の行ベクトル(w1)t,(w2)tの関数」と見てもよい。

 具体的には

それぞれ考えることもできる。ちなみに、2×2行列の行列式は外積と同じ計算をすることになるので、 detA(v1,v2)=v1×v2,   detA(w1,w2)=w1×w2 が成り立つ。

 外積には(内積にも)双線形性があった。同様に2×2行列の行列式にも双線形性 detA(λv1,v2)=λdetA(v1,v2),   detA(v1,λv2)=λdetA(v1,v2),detA(v1,v2+v3)=detA(v1,v2)+detA(v1,v3),detA(v1+v2,v3)=detA(v1,v3)+detA(v2,v3) がある。つまり、detA(v1,v2)と書いたときの前の引数に対しても後ろの引数に対しても「線形結合してから計算しても、計算してから線形結合を取っても結果は同じ」である。図で表現すると↓のような感じ。

 外積は「同じベクトルどうしの外積は0」という性質があったので、 detA(v1,v2+λv1)=detA(v1,v2),   detA(v1+λv1,v2)=detA(v1,v2) という性質もある。

 また、入れ替えに対して反対称 detA(v1,v2)=detA(v2,v1) でもある(これも外積の性質)。これらの性質は「行ベクトルの関数」と考えたときも「列ベクトルの関数」と考えたときも、同様に成り立つ。

 2×2行列の行列式は、行列がスカラー倍されたとき、(そのスカラー)2倍になる。(abcd)(λaλbλcλd)という変換(AλAという変換)により、D=adbcλ2D=λa×λdλb×λcと変化するわけである。

 一方、足し算の方に関しては簡単な関係はない。det(a1+a2b1+b2c1+c2d1+d2)という量を考えてみれば、これがa1d1b1c1a2d2b2c2では表せないことはすぐにわかるだろう。