作用・反作用の法則

 先週のチェックテストのうち作用・反作用の法則に関係する部分について解説しました。配ったプリントのPDFはこちらで、順番は多少前後しましたが、だいたいこの話について話しました。

 授業の中で何度か言ったことは「心の中に意地悪な/物分りの悪い/素朴な疑問をズバズバついてくる、中学生を飼おう」ということ。そういう中学生の質問にしっかりと答えられるようでないと、「物理を教える」のは難しい。

 PDFのテキストから外れた内容について、ここでまとめておく。

物体が落ちている間の地球

 重力の反作用が地球に働く、という話をしたので、↓こういう質問が来た。

 じゃあ、物体が落ちている間、地球は加速しているんですか?
 そのとおり。空中に物体がある間は、垂直抗力は働かないから、

のように力が働いて、物体の落下中、地球は上向きに加速する。

 もっとも、地球の質量は$10^{24}$kg程度もあるので、その運動は検知不可能だけど。

 せっかくこういう質問が出たので素朴な疑問をついてくる中学生に登場してもらおう。

 じゃあ、これを続けると地球は上昇していくんですか?

という質問が出たらどう答えるか、考えてみよう。

 地球のあちこちで物を落としているから、平均すれば動きません。
 なるほど、日本で落とすときにブラジルでも落としていれば、地球は動かないね。でもそれだと意地悪な中学生
日本で僕たちがどんどん落としたら一方に動くのでは?
と突っこんで来そうだ。

 この後教室でモノを落としながら「落ちたときに何が起こるか考えてみよう」という話をすると、

 落下の瞬間、落ちてきたものが地球を下に押すから、そこで運動は止まる。

という話で決着した。

電車を押すと早くなる?

 作用・反作用の法則についてある程度理解してもらった後で、作用・反作用の法則の意味を実感してもらうため、

のように「モノレールを早く那覇空港につかせるために乗客がモノレールの壁を押したとしたらそれには意味があるか?」という問題を考えてもらった。

 作用・反作用の法則を考えると、

のように「人を後に押す力」もあることがわかる。つまり「モノレールを加速する」力(こっちを作用とする)には、「人を減速する」力(こっちが反作用)を伴うのである。すると結局、モノレールと人を合わせて考えると、これらの力は「何もしてない」ことになる。さらに、この状態で人がモノレールの中で動かないためには、

のように、「足で踏ん張る力」と「その反作用」もあらわれ、結局人もモノレールも加速しない。

 「モノレールの中でモノレールを押してもモノレールは速くならない」という「考えてみれば当たり前」の事実は、作用・反作用の法則が成り立っているおかげなのである。

 どうしてもモノレールを加速させたかったら、自分が後方に加速(減速)するしかない。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


今日まで作用・反作用とつりあいの区別がついてなかった(この感想が多数)。
教える側に立ったとき、それでは困るので、しっかり勉強をしておこう。

ここまで詳しく考えたことがなかった(という感想も多数)。
教えようと思うと、いろいろ考えておいたほうがいいです。

「作用・反作用の法則」が証明できるかどうかを考えたことがなかったので、証明できないとわかり納得できました。
教えるときに「証明できる法則」「証明できない原理」の区別は大事。

証明できない法則があるというのは知りませんでした。
どのような学問にも何個かずつあります。それ以外の法則はそれらの法則から導かれる。

理解するにはそうなんだと納得するだけではダメで、意地の悪い中学生みたいに「なんで?」という疑問を餅、それを解決していかなければダメだと思った。
そのとおりです。心に意地悪中学生を飼いましょう。

作用反作用とつりあいを混同したり、作用→反作用に時間差があるように誤解するのは、確かに典型的なミスになりそうだと感じた。
そうなんです。だから教える側には注意が必要。

経験からの法則はどうやって世界に認められるんですか? 論文で発表してもみんな当たり前っていう反応になるのではと思った。
作用反作用の法則はずっと昔から知られているので今更論文にはならない。経験則は、実験と解析の積み上げで法則となるので、その積み上げの部分は論文になる。

できればプリントのページ通りに進めてほしいです。
質問とか、どういう反応があったかで授業の進行を変えているので、ページ通りに進まないことも結構ある。

作用・反作用の法則が地球上すべてに働いていることに驚きました。
物理法則というのはそういうものです。

先生が生徒を当てるのはやめてほしいです。黙って授業を聞いていたいので勘弁してください。
当てるのは皆さんの反応を引き出して授業内容を変えていくためでもあるので、勘弁しません。これからも当てます。あと、あなたたちは学生です。「生徒」じゃありません。

作用・反作用の法則を改名できるとしたらどんな名前がいいですか? ちなみに僕は同時作用の法則を推薦します。
「相互作用の法則」を推してます。

今日の授業