作用・反作用の法則(続き)

前回の感想・コメント

 前回の授業に対する皆さんの感想・コメント(抜粋)が、

にあるので見ておいてください。私からコメントしてますし、他の人がどんな感想を持ったのか、ということも大事です。

 前回のチェックテスト「できた!」という人も「できなかった!」という人もいました。できなかった人は今から修正していこう。できたという人は、「なるほど、できない人がいるもんなんだな」ということを認識して、今後「教える立場」になったときに活かしていってください。

作用/反作用の復習

 まずは、前回の復習をしつつ、作用・反作用の法則についてまとめます。下のビデオを見てましょう。

 通信環境の関係でビデオが見られないという人は、以下の内容とテキストの14ページから16ページまでをじっくり読むこと。ビデオを見た人も、テキストと以下の内容には目を通しましょう。

 上のビデオで、前回の復習以外に大事なところを確認しておこう。

 まず、「作用・反作用」と「つりあい」は混同することが多いので注意しておこう。

 「物理法則として、かならず作用には反作用がある」という話をすると、よく出てくる質問として「じゃあ、重力に対する反作用はあるんですか?」というものがある。下の図を見ると「重力」と書いてある力だけは、作用・反作用のペアがいない(ように見える)。

 では、この「重力」には反作用はないのだろうか??

 (ビデオを見た人はもう正解を知っているけど)、ビデオ見てない人は、正解を考えてから、次へ進もう。

重力の反作用は?

重力の反作用は?

 正解は

である。つまり、「地球が物体を引っ張る力」の反作用は「物体が地球を引っ張る力」であり、地球にかかる。

 なお、このときの力のつりあいの式を三つ書いてみる。

 この式、上の2つが成立していれば、自動的に三つめ(地球の式)も成立しているのである。だから、地球も動かない。

チェックテスト2

 では次に、チェックテストの続き、2を考えていこう。チェックテスト2は文章の正誤を問うものだった。以下の文章は正しいだろうか??

  1. 人間が壁を殴る(これを作用とする)。すると壁は目に見えないほど小さくではあるがいったんへこみ、弾力で元に戻る。戻ってくる時に人間のこぶしにあたる。この時働く力が反作用である。
  2. 相撲取りと小学生が相撲を取っている。この時、相撲取りから小学生に及ぼされる力と、小学生から相撲取りに及ぼされる力を比べると、当然前者の方が大きい。
  3. 作用・反作用の法則は物体がどんな運動をしていたとしても成り立つ法則である。

 回答を考えた上で、次のページに行こう。

作用・反作用の法則(続き) チェックテスト2の解答

チェックテスト2の解答

 ↓は、チェックテスト2の解答ビデオである。自分で解いてみてから見よう。

 通信環境の関係でビデオが見られないという人は、以下の内容とテキストの17ページから18ページまでをじっくり読むこと。ビデオを見た人も、テキストと以下の内容には目を通しましょう。

 第1の文章「人間が壁を殴る(これを作用とする)。すると壁は目に見えないほど小さくではあるがいったんへこみ、弾力で元に戻る。戻ってくる時に人間のこぶしにあたる。この時働く力が反作用である」については、誤りである。前にも説明したが、作用反作用は同時に働く。こんなふうに時間差があって返ってくるものではない(くどいようだがもう一回言っておくと、日常用語の作用・反作用とは違うのだ!)。

 第2の文章「相撲取りと小学生が相撲を取っている。この時、相撲取りから小学生に及ぼされる力と、小学生から相撲取りに及ぼされる力を比べると、当然前者の方が大きい」も間違い。作用反作用は大きさは同じである。単純に「相撲取りと小学生なら相撲取りの方が強い」という考え方もあるが、どうも「相撲取りが小学生を押す」というふうに力の原因となった法(この場合相撲取り)の方が力が強い、という誤解もあるようであるが、「作用・反作用」というのはどちらが行為者だとか原因だとかにも関係ないものである。

 最後に第3の文章「作用・反作用の法則は物体がどんな運動をしていたとしても成り立つ法則である」だが、これは正解である。

 作用反作用の法則は「常に成り立つ」。正確には、「我々は作用反作用の法則が成り立たない例を知らない」。これまでが人類が経験したすべての実験、観測したすべての現象において、作用反作用の法則が破れている証拠は見つかってない。だから我々をこれを(少なくとも力学の範囲において)証明不可能な「要請(数学でいえば公理)」として扱う。だからこそ「力学の基本原理である運動の法則」の第3法則となっているのである。

 常に成り立つことがわかっている基本的な法則に対して「成り立たないこともある」という考え方を持っていては、正しく物理を教えることなどできない。

 以上、考えてきた「作用・反作用の法則」についてはテキスト19から20ページが「まとめ」になっているので、熟読しておこう。
重力の反作用は? 電車の問題

電車の問題

 上の運動の三法則にしろその他の自然の原理にせよ、自然を観察した結果として見つかったものであるから「これが成り立っていないと困るでしょ」という事例を沢山あげることができる。

 作用・反作用の法則が成り立っていることに関連する現象として、以下の図のようなものを考えよう。


 右に走っている電車を「俺がこの電車を停めてやるっ!」と叫んでいるこの人が中から左に押すことで止めようとしている。この企てはいかにも失敗しそうだが、なぜだろう??
 そのことを図解する絵を描いて、中学生が納得するように「この人はなぜ電車を止められないのか」を説明せよ。
 ↓は、上の問題の解答ビデオである。自分で解いてみてから見よう。

 ビデオが見れない人はテキストの21ページから24ページまでを読もう。次のページでもう少し解説する。

チェックテスト2の答え 電車の問題の答え

電車の問題の答え

 作用・反作用の法則から、「人が電車を押す力」があれば「電車が人を押す力」がある。というわけで、

という風に、もうひとつの力がある。

 このままだと、電車には左向きの力しか働いてないから、速度は遅くなって、やがて止まる。一方人間には右向き力しか働いていないから、このままだと右に加速する。それはおかしい・・・と考えて欲しい。

というわけで、人(正確には、人の足)に働くもうひとつの力と、その反作用を絵に書き込むと、

となる 。

 新しく現れた二つの力は、「人間の足が電車の床に及ぼす(蹴る)力」と「電車の床が人間の足に及ぼす力」である。「人が電車を押す力」と「電車が人を押す力」は作用反作用だから等しい。また、「人間の足が電車の床に及ぼす力」と「電車の床が人間の足に及ぼす力」も作用反作用で等しい。人間が電車内で動かないことから、「電車が人を押す力」と「電車の床が人間の足に及ぼす力」はつりあっている(大きさが等しい)。よってこれら四つの力は、全部大きさが等しい。

 ということは、電車に働く二つの力も大きさが等しく逆向きなので、電車には力が働かないことになる。よってこんなことをしても電車の速度を変えることはできない。

 人間と電車を「ひとまとめの物体」と考えたとき、人間と電車の間に働く力は「内力」になって、内力は(作用・反作用の法則のペアなので)足し算すると必ず消し合う。というわけで内力を使ったのでは決してこの「ひとまとめの物体」を加速することも減速することもできない。

 この話をすると、必ず出る質問が、

 じゃあ、電車の中で人が浮いていて、足が離れていたらどうなりますか?

というもの。この場合、もちろんこうなる。

 電車は遅くなり、その替り人間は右向きに加速する。結果、

のように電車の前の壁にぶつかる。ぶつかったときに再び電車は加速し、人間は電車内で静止する。つまり、結局この人間が空中にいる間だけ電車は遅くなることになる。

第2回レポート問題


 さて、ここで問題を一つ、考えてみよう。
 授業の中で「電車の中で人がいくら電車の壁を押しても、電車の運動は変わらない」という話をしました。では、実際の電車が加速しているときはどんな力が働いているのでしょうか。図を描いて説明してください(中学生に説明するための図のつもりで書くこと!)。

 下のは参考図です。重力と垂直抗力など、上向きの力は無視して構いません。電車を加速している力が何からどの向きに働いているのかがわかるような図を描くこと。

以上で第2回の授業は終わりです。各自のwebclassへ行って、
  • 第2回授業感想・コメントシート
  • 第2回レポート問題
の2つに答えてください(「第2回レポート問題」は上の問題です)。今回の<第2回レポート問題>の解答の正誤は成績に反映しません。レポートの提出はwebClassから行ってもいいし、上の問題を見てそのまま答え(文章ではなく画像です)を前野までメール(maeno@sci.u-ryukyu.ac.jp)でも構いません(メールには名前と学籍番号を忘れずに)。紙に書いて携帯で写真を取って送るなどの方法もOKです。

webclass↓


この感想・コメントシートに書かれたことについては、代表的なものに対しては次のページで返答します。
電車の問題 受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 webclassでのアンケートによる、感想・コメントなどをここに記します。

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


 作用反作用は2つの物体に働いて、どんな運動でも成り立つ物理法則だと学んだ。また、つりあいは一つの物体に働いて、状況によることも学んだ。
 この後の運動の法則とも含めて、ちゃんと理解しておこう。

 作用反作用は同時に働いて、同じ強さで、いつでも成り立つことも分かった。重力の反作用は何か?と問われた時、少し戸惑ったが、考えてみるとすぐに分かった。 大きなスケールで考えることも大事だと思った。
 いろんなスケールで物を考えることは大事ですね。

 チェックテスト2は3問とも正解できて良かった。少し時間は掛かったが、正しい答えに辿り着けてよかった。
 このあたりは確実にしておきましょう。

チェックリスト2を通して作用反作用についてのポイントが再確認できたので良かった。 電車の問題について、電車が動かない理由を絵と矢印を使いとても分かりやすく理解につながった。 そのあとの応用問題は個人的にはとても面白いと思ったし、しっかりと解答もあって分かりやすかった 全体を通して今回の講義は作用反作用とつり合いの違いがしっかりと理解できたと思う。
いろんな方法で、「理解できているかな?」というチェックをするようにしましょう。自分の勉強でも、誰かに教えるときでも。

動画での解説が分かりやすく良かった。
それはよかった。

作用反作用の法則と力のつり合いをどちらも考える必要がある設問の時に、割と混乱してしまうことが多く今回の電車の問題もつり合いについてを考えることができていなかったので、混乱せずに問題に取り組めるようにしたい。
いろいろな物理現象を、基本的な法則(今回でいえば、作用反作用とつりあい)で理解していく、ということができてこそ「物理ができた」と言えるので、ここを含め、物理現象をしっかり理解できるようにしましょう。

教え方として、「つり合い」と「作用反作用」の違いをそれぞれ、「状況によって成り立つ」、「物理法則なので必ず成り立つ」と説明するのは。差異の説明と同時に物理法則がどのようなものかを把握させることができ、良い方法だと考えた。 加えて、教材の運びで作用反作用について学習した後に正誤問題で、追加の説明、授業学級での理解度の把握を行う運びは、その後の説明へと移行するよい運びだと考えた。
教えるときは「どこが同じでどこが違うか」を教える側もちゃんと認識しておくことが肝要です。

案外簡単な仕組みのようでも図や言葉を用いて説明することは難しいと実感した。つりあいの話を中学校で初めて習ったときにも感心したのを思い出して面白いと感じた
感心して「なるほど、物理はうまくできている」と思ってもらえると、いいですね。

作用反作用とつりあいの意味が混同していたので、今回の授業を受けて正しい意味を知ることができた。これから、力の向きと作用反作用とつり合いに注意して問題を考えたいです。
混同しやすいところではありますが、教える側が混同してては困るので、今のうちにしっかり理解しておこう。

作用・反作用の法則は二つの物体によって行われているものであり、物体の釣り合いは一つで行われる事がわかりました。また、物体の重力を作用とした時、反作用は地球が物体に引っ張られる力となる関係がわかりました。
力学の原理をしっかりと理解していきましょう。

動画を見ることで理解が深まりました。動かない物体にはたらく作用・反作用が可視化されたため、もやが晴れたと感じました。生徒に教える際、ありがちな間違いをおさえ、理解してもらえるよう、教師と生徒、両方の立場に立って考えるくせをつけようと思います。
力を視覚化するとわかりやすいので「絵を描く(生徒に絵を描かせる)」というのは大事な作業なのです。

動画をメインに見させてもらってますが、通信状況が悪いのか次の動画が見られないことがよくあります。とてもわかりやすい授業でとてもいい復習になります。
見れないのは困るので、そのときはwebclassの掲示板かチャットに「この動画見れません」と報告してください。なんか対応できるかもしれませんし、状況を把握しておきたいので。

人間が電車の中から進行方向とは逆向きに壁を押してもなぜ電車は止まらないのか、ということを今まで当たり前だと思い考えたことがありませんでした。動画を見るまでは手で押している力だけが働いていると考えていました。動画の答えを見て足で床を蹴っている力も存在していることに気付きました。この二つの力のそれぞれの作用・反作用の力の大きさが等しくなるから電車には何も影響が出ていないとわかりました。 足が浮いている場合は人間が空中に浮いている間だけ電車は遅くなっているという結果で、驚きました。 実際に力の働く向きをしっかり考えればどちらもわかることなので、力の向きに気を付けて問題を解くようにしたいです。
その「当たり前」を理屈だてて理解していくのが、物理です。

いままで曖昧だったところが理解できました。イラスト付きの説明や、想定される質問例などがあってより分かりやすかったです。
曖昧さは(自分が教えるときのために)なくしていきましょうね。

前回はパソコンで無事に受講することができたので, 今回は試しにスマートフォンで受講しました。どちらを使用しても問題なく受講できました。
どちらでも受講できてよかったです。

電車の問題の答え