相対論(2004年度前期)試験問題
*光速度 cは解答に使用してよい。
*計算の過程も解答用紙に書くこと(公式覚えてきて書いただけでは点はやれないし、途中が書いてないと部分点もあげられない)。
*以下の問いのうち、4問を選択して答えよ。5問以上答えた場合は点数のいい方から4問分を集計して得点とする。
[問い1] 以下の各問いに答えよ。
(A)ローレンツ変換
の逆変換が、上の式のvを-vで置き換えたもので得られることを証明せよ。
(B) 古い座標系での4次元的距離の自乗が新しい座標系での4次元的距離の自乗に等しいことを証明せよ。
[問い2]
(A)
ある座標系(x,t)上で一次元運動を考える。この座標系上で、速度vで動く物体Aと、速度wで動く物体Bがある。Aの上に乗っている観測者からBを見ると、Bは で動いているように見える。この式をローレンツ変換の式から導け。
(ヒント:(x,t)系で速度wを持つということは、その物体の位置についてはx=wtが成立している。これを(x',t')系で見ると?)
(B)この時、|v|<c, |w|<cならばもより小さくなることを証明せよ。
[問い3]
右の図は「電車の先端と後端から同時に光が発射され、同じ時刻に中心ですれ違い、同じ時刻に逆の端に到着した」ということを表しているグラフである。電車の長さは2Lだったとする。
- この図は電車に対して静止している観測者の座標系での図である。同じ現象をx軸の負方向に速さvで走っている観測者、つまり電車が速さvでx軸の正方向に進んでいるように見える観測者の座標系で見るとどのようなグラフが書けるか?
- 新しい座標系では、直線ACおよび直線BAはどのような傾きを持つか。傾きがaならのように、グラフに書き入れよ。
- 新しい座標系では、A点とB点の時間座標の差、空間座標の差はそれぞれどれだけか。
(ヒント:元の座標系では、空間座標の差が2L、時間座標の差は0。ゆえに4次元的距離は2L。4次元的距離は座標変換で変化しない)
[問い4] 固有時τは、物体の微小運動dx^μ = (cdt,dx,dy,dz)に対して
で定義される(ただし、dτの符号はdtの符号と同じになるようにとるものとする)。以下の各問いに答えよ。
- この量を「固有時」と呼ぶ理由は何か?
- この物体が速さvで動いているとき、はどうなるか。
- 4元速度の自乗が定数であることを証明せよ。
- 4元速度と4元加速度 が直交することを証明せよ。
[問い5]
一方から見るともう一方が速度0.6cで一直線に離れていくように見える2台のロケットがある。右はロケットAが静止している座標系において、二つのロケットの運動の様子を描いたものである。この図を使って、以下の問いに答えよ。
(注意:ここでは時間に年、距離に光年を単位として使っているので、c=1[光年/年]である)
- ロケットAにおいて、図の点Pから点Qまで、10年の時間が経過する間にロケットB
は点Qから6光年離れた点Rまで進む。ロケットBはPRという線を描いたことになる。PRは見た目はPQより長く見えるが、4次元的長さを計算するとそうではない。PからRまでの間にロケットBでは何年の時間が経過するか?
- ロケットBの立場で見ると逆に「ロケットAの方が時間が遅れている」と感じる。なぜそうなのか、右図を使って説明せよ。
- ロケットBが静止している立場でグラフを書け。この座標系を(x',t')座標系とし、グラフには、x'軸とt'軸の他に、P点、Q点、R点を書き込むこと。
[問い6]
- 4元運動量の第0成分の物理的意味は何か。それはどのようにして導かれるか。
- 座標の微小変化dx^μが と定数係数の行列を使ってローレンツ変換される時、4元運動量および4元力も同じ形の変換を受けることを示せ。
[問い7]
- 質量mを持っている粒子を2つ、ともに速さvに加速して正面衝突させたところ、衝突した場所に質量Mの粒子二つが発生し、速さVで反対方向に飛んでいった。Mをm,v,V,cで表せ。
- 電子と陽電子(同じ質量を持ち、電荷の符号が反対)が出会うと、対消滅という現象を起してγ線になってしまう。この時、γ線を光子(エネルギーhν、運動量hν/c)として考えた時、できる光子が1個ということは有り得ないことを証明せよ。
(ヒント:適当な座標系で考えれば、電子と陽電子は正面衝突する。この座標系で証明するのが一番簡単)