今日の講義の内容

 今日の講義はイントロなので、熱力学全体で「何をやるのか?」の紹介を兼ねつつ話をした。

 中身はテキストの第1章であるので、くわしくはテキストを読み直すこと。

「熱」とは何か?

という疑問から始めて

熱は状態量(stock)なのか、変化量=流れ(flow)なのか。

をはっきりさせよう、というところをまず確認した。

 「エネルギー」は、もともと「仕事」というflowに対応するstockとして力学に現れた。熱は「エネルギーというstock」に対するflow(仕事以外のflow)である。

 ここで、

「エネルギー」とは何か?

という疑問に戻って、仕事からどのようにエネルギーが定義できるかを概観した。

 仕事以外に熱というエネルギーのflowがあるのは、「エネルギー」が目に見える形態から「見えない形態」へと変わるという現象に由来している。

 その様子は、

のように説明ができる。↑にアニメーションがあるので眺めてみて欲しい(授業でも見せるつもりだったが、持っていったケーブルが不調でできなかった)。

 さて、以上のような説明を聞いて、

ははぁ、熱力学というのはこういう分子運動によるエネルギーの変化(散逸)を考える学問なのだな。

と、思う人もいるかもしれない。ところが、そうではないのである。

 熱力学の考え方はどうかというと、そういう細かいことを考えるのではなく、目に見える現象だけを追いかけて物理をしよう、というところになる。分子運動のエネルギーをちゃんと計算して物理現象を知ろう、というのは「統計力学」の方の守備範囲である。

 熱力学ではエネルギーをstockとしたときのflowとして目に見える(測定できる)「仕事」の他に「熱」を考えていく。ではどのようにその「熱」なるものを定義し計算していくのか・・・というのは次回からの話だが、来週はとりあえず力学におけるエネルギーと仕事をもう少し詳しく振り返る。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


質問されて、エネルギーや仕事の説明ができなかったので、根本の説明をできるようにしたい(同様の感想多数)。
「根本を、人に説明できる」ようになると「わかった」と言えます 。

エネルギーとか仕事の話からはいったけど、これが中学生の教科書に載っているってびっくりした。
そうなんです、中学校の理科って難しいんですよ。

ビッグバン理論のなかで出てくるYlemについて知りたいです。Ylemに関する本があれば教えてほしいです。
う〜ん、すみません、私もそれはよく知らない。

化学概論を去年受講したとき、熱力学に近い分野が全然理解できなくて大変だったので、多分熱力学mも苦手だと思いますが、がんばります。
たぶんこの授業の方がじっくりとねっとりとやるので、理解しながらついてきてください。

これで何がわかるか、何がありがたいのか、を考えることが大切だと知った。
先人の物理学者たちが何を考えて物理を作っていったのか、を考えていきましょう。

熱についてのイメージができた。
今日はまだ「ふんわかとしたイメージ」だけなので、来週からしっかりとした概念にしていこう。

「かぜをひいて熱が出る」って物理ではどう言うの? 温度が高い?
「かぜをひいて体温が上昇する」かな。

分子の運動まで考えるとエネルギーが保存することに驚いた。
ただ、この授業は「分子の運動を考える」という方向には進みません。

授業の内容