フェルマーの原理:はじめに

 この文書は「よくわかる解析力学」【東京図書】の2.2節(29ページ)のフェルマーの原理を動く図を使って説明したものです。

 フェルマーの原理(Fermat's principle)とは、

 「光は最短時間で到着する経路を通って伝播する。

という原理で、17世紀のフランスの数学者フェルマーが提唱した。幾何光学(光を「光線」と考えてその経路を考える立場)ではこれは「原理」であって証明や導出は不可能である(波動光学から導出できる)。ここでは、これを原理として認めると光の伝播が記述できることを見よう。

 なお、実は光が直進することも説明できるが、その図形的意味は明瞭なので省略する。

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フェルマーの原理:反射

 下の図は光が出発点から出て反射点◆で反射し、到着点に着くまでの経路を示している。下半分(灰色の部分)は鏡像である。

 

 出発点と到着点、それと反射点◆はドラッグして動かすことができる(到着点の鏡像は動かせない)。

 右のグラフは反射点の位置(x)と、そこで反射したとして、出発点と到着点の間でどれくらいの時間が掛かるか(t)を表したもの。図の上で最短になるところと、グラフの最小値が一致することを、反射点を動かしながら納得しよう。

 黄線ーで表された線は反射するまでの時間のグラフ。紫線ーで表された線は反射してからの時間のグラフであり、青線ーで示された線は合計時間のグラフである。

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フェルマーの原理:屈折

 次に屈折の法則を見よう。下の図は境界面の上下で光の速度が変わる場合の経路と到着時間の関係を表している。

 

 図は、光が出発点から出て入射点◆で下の領域に入り、到着点に着くまでの経路を示している。これらの点はドラッグして動かすことができる。

 屈折率nは、上の領域に比べて下の領域での光速がどれだけ遅くなっているかを表す。n=2の場合、速度は半分となり、それに連動して波長も半分になる(スライダでnの値を変えることができるので試してみよう)。n=1では屈折は起きない。

 図では、波長や速度の変化を、線の縞の間隔で表現している(波の山の部分と谷の部分と考えてもらうのがよいだろう)。

 n>1の場合、下の領域の方が光速が遅くより時間がかかるので、下の領域への入射を遅らせた方が早く到着することになる。光線の縞々の数が時間に対応していると思えばよい。◆を動かして、縞々の数が小さくなるような経路を選ぶことで、最短時間(フェルマーの原理を満たす)経路がわかる。右側のグラフと照らし合わせながらそれぞれの経路でどれだけ時間が掛かるかを実感しよう。

 やってみるとわかるが、より経過時間が短くなるような経路は直線ではなく、曲がった経路である。その曲がり具合は屈折率で変わる。これが、フェルマーの原理による屈折の法則の説明である。

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