解析力学を勉強する多くの人が、
ラグランジアンは運動エネルギー引く位置エネルギーである。
と聞いて、
と悩んでしまうようである。特に「引く」意味がよくわからない。そこで以下で
「作用(運動エネルギー引く位置エネルギーの積分)を最小にしようとする」ことが、確かに「正しい運動」を選び出している。
ということを「動く図」で確認しよう。このことは以下のように動く図を使って「経路を変形(変分)して最小作用になるところを探す」という操作を具体的にやってみることで納得しやすくなると思う。
以下のグラフは横軸時間、縦軸が位置座標で、落体の運動を表現したものである。「作用」すなわち「(運動エネルギー)ー(位置エネルギー)の時間積分」を小さくするにはどのような運動を行わせればよいだろうか(↓の初期経路はもちろん正しくない)
ここで、●は各々の時刻における質点の位置を表現している。各●の下にある棒グラフはその場所での位置エネルギーを表現している。●と●の間の棒グラフは、その時間間隔における運動エネルギーを表現している。
図の下に数値で表現しているので、この「作用=」の値が小さくなるように経路を「編集」してみて欲しい。そして、心ゆくまで、作用が最小となるのはどんな経路なのかを、経路を操作することで実感してほしい。
『解を表示』を押すと、実際に最小作用となる解を表示してくれる。
『ゴチャゴチャにする』ボタンを押すと、乱数経路になる。もちろん、最小作用にはならない。こんなふうにランダムに動きまわってしまうと、運動エネルギーがどんどん大きくなるからである。
作用を小さくするには「なめらかな運動」にした方がよい。
という傾向を感じ取っていただきたい。
『直線にする』ボタンを押すと経路が直線になる。これは等速運動しているということであり、この時が運動エネルギーの積分が最も小さい(ある意味「もっともなめらか」な運動である)。
では等速直線運動が作用を最小にするかというと、作用は位置エネルギーを引いたものなのでそうはならない。経路の途中で位置エネルギーを大きくする(つまり「高いところを通るようにする」)と、その分作用は小さくなることになる。
つまり、
位置エネルギー$U$の存在は経路を「位置エネルギーが高い方へ」と引っ張る。
一方、
運動エネルギー${1\over 2}mv^2$の存在は経路を「より直線に近い形(よりなめらかな形)へ」と引っ張る。
この二つの引っ張り合いの結果、言わば「つりあった場所」として放物線が選ばれる。
これが
「運動エネルギーから位置エネルギーを引いて積分」した作用という量が最小になる経路が実現する
理由である。
『アニメーションスタート』を押すと実際どのような運動が行われるかが右側に出るので、実際の動きを確認しよう。