先週の問題と感想から

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前回の問題

 問題ボール投げの問題の説明が終わったところで、生徒の一人が、

先生! じゃあぼくが今日から毎朝ボールを東に向けて投げ続けたら、いつかは地球を動かせますか? 僕は十兆年ぐらい長生きするつもりなんで、できるんじゃないかと思うんですが!!

と言ってきたとします。

 この問いに答えてあげてください。なお「十兆年も生きられるか、ボケ!」というツッコミは無しでお願いします。

という問題を出してました。みなさんの解答(一部)と、それに対するコメントを書いておきます。

 まず、問題を「力の大小の問題」だと捉えてしまっている例がいくつかありました。この説明は本質的じゃなくてダメです。
時間は関係ない十兆年も生きずとも1日でも地球は動いてはいる。しかし、それはほんとに微々たるものでしかないため自分が地球を動かしていると言う認識はできないだろう。
もし、あなたがボールを投げ続けても地球は動かせことはできません。人がボールを投げ続けると地面と足には摩擦力が生じます。しかし、地球の質量は人に比べて非常に大きいため、摩擦力の力では地球を動かすことは出来ません。
地球は1年かけて太陽の周りを西から東に公転しているから、ボールを人が毎朝東に投げて地球がちょっとだけ西に動いたとしても、その速度より地球の公転速度の方がはるかに大きいから、結局地球を西に動かすことはできない。
そもそも地球は自転しており、ボールを投げたりときに与えるエネルギーとは比べられないほど大きなエネルギーをもっているから、地球を動かすことはできない。
どんだけの時間かけてもできないと思う。 ボールを投げた力がかかるのは一瞬で大きく働かないから。
投げ続けたら地球を動かすことはできる!!でも、本当に気づかないほどしか動かないから、いつ動いたのか、実感したり、検知することが難しいんだ。動いていても気づくことができずに投げ続けることにyなるよ。
↑では「微々たるものだから」とか「地球の質量が大きいから」という理由にしているが、だから子供は「10兆年かければ」と言っているわけです。「チリも積もれば山となる」で積もればいいんじゃないの??と思うでしょう。↑の説明では子供は「じゃあ100兆年なら?・・・・無量大数年なら?」とどんどん数字を大きくしていくだけで、納得はしないでしょう(回数を多くすればいつかは動く、と思ってしまう)。というかそもそも問題は大小の問題じゃないのです(そこがわかってないのでは困る)。
十兆年も投げ続けるんじゃなくて、一回でボールにすごく大きい力をかけないと地球は動かないんじゃないかな?
↑これも全然本質とは違うところを答えている。動くものなら「小さい力×何回も」でも「大きい力×1回」でも動く。動かない理由は他にある。
地面から人への力と、人から地面への力が釣り合うため、動かない
↑釣り合わない。そもそも「釣り合う」というのは一つの物体に二つの力が働いたときに使う言葉。「人への力」と「地面への力」は別の物体だから、その二つの力が「釣り合う」のはおかしい。たとえば「人と地面を一体として考えるならば」という前提がついているなら正しいが、そこを説明せずにいきなり「釣り合う」と言ったら子供が混乱するだけ。
地球と太陽間に働く万有引力の方がはるかに大きいから、公転の軌道をぬけ出すことは出来ない
↑これは少し話が違うけど、やはり「大小問題」の話にしているのだ回答になってない。それに子供は「抜け出したい」と言っているのではなく、「地球を動かしたい」と言っているのだから、公転の軌道がちょびっとでも変わればいいと思っているだろう。
地球の外からの外力を無視するならば、十兆年ボールを投げ続けていたら地球は速度の合成によって速度は増加し、地球を動かすことができると思うが、実際には地球の周りにある惑星や衛星からの引力(外力)が働いているため、運動量保存の法則が成り立たず、地球を動かすことが出来ないと考えました。
↑これも今の話の本質とは関係ない「外力」を持ち出している。
以下は、そもそも説明が間違っている、あるいは説明が全然足りない例。
地球上に自分一人なら可能性があるのかなって思いました。 実際はいろいろな要素がほかにあるので難しいと思います。
↑大事なところを「いろいろな要素がほかにあるので」で済まされても困る。子供は「いろいろってなんだよ〜〜!」と言うだろう。
ボールを止めようとする力も地球に働くからいくら投げても地球は動きませんと教える。
↑「ボールを止めようとする力」はボールに働くのだから、「地球に働くから」と言われてもこの子供はわけがわからないだろう。「ボールと地球を一体化して考えると」という前提が落ちているのかもしれないが、そこを説明しないと全然、意味がわからない。
地球の回転しようとする力の大きさは想像もつかないくらい大きいから、いくら人間が何年もボールを投げ続けても足りないよ。
 ↑はまだMIF誤概念が残っている(あるいは、この説明を聞いた人にMIF誤概念を生じさせてしまう)説明。「回転しようとする力」なんてものはない。
 人間がボールを投げた際に人間が地球に与えたにより変化する地球の速度を観察するには、観察者を地球の外(例えば人工衛星など)にする必要がある。地球上の人間は地球と一緒に運動している(同じ慣性系の中にいる)ためである。地球を地球の外の観察者から見ると、地球は時速約10万㎞で太陽の周りをまわっている。一方、史上最速の球速を記録したとしてギネス認定を受けたアロルディス・チャップマン選手の球速が時速約169km。人間と地球では質量も違うため、運動している地球に人間が与える力というのは無視できるほど小さいといえる。
↑この答えの後半部分については大小問題にしてしまっているという点で上と同様によくない説明。前半部分では見る視点を考えろと言っているが、この説明では、「じゃあ、外から見てたら地球は動くんですね」と思ってしまう。
次に、地球が公転していることを理由にしようとしている例。
もし、仮に君がずっと生きられて、ずっとボールを投げる事ができて、そして、地球もずっと同じ場所に静止しているのであればいつかはすこーしだけ動かす事ができるかもしれないね。 でも、地球は静止しているわけではなくて、動いているから、ずっと同じ方向に力が働く訳ではないんだよ。
この公転を使う説明は「動かせるけど動きが打ち消される」と説明していることになるが、実際はそもそも「動かせない」と考えるか「打ち消される」の理由が公転ではないと考えるか、どちらか。
以下は
ん!?地球の自転を逆向きにするって事!?そうじゃないなら、地味に地球は動いてますよ!地球は360m/sで動いているので、あなたがボールを投げた反動はそれに比べてとても小さいから動いているのは分からないだけですよ。 それはそうと、地球の自転を逆回転させるには、毎朝ボールを東に投げたとしてもあなたが人間である限り難しいと思います。理由は地球を擬人化してイメージしてみましょう! 地球くんは爆速で360m/sで走っています、あなたは地球くんの背中にロープで括り付けられたとイメージしてください。間隔をあけて地球くんの走っている方向の逆向きに走ってください。陸上の100m走のオリンピック選手でも最高秒速は11m/sなので地球くんの速度を落とすために大きく見積っても11m/sしか速度は変わりません。また、1日1回10秒の抵抗と考えても地球くんの速度を10秒間だけ349m/sになるだけで、地球くんは疲れないのですぐに360m/sに戻ってしまいます。これと毎朝ボールを投げ続けることは同じなので、あなたのやりたい事は難しいです。短い回数と間隔で、ものすごいエネルギーをもって投げないと地球を逆回転させるのは厳しいです。10兆年でめちゃくちゃサイボーグ化してたらできるかもしれませんね!
「地球を擬人化」のところの説明がわかりにくいけど、地球は人間と同じ体重を持っていることに「擬人化」されたのだろうか?? 問題がボールを投げる話から自分が走る話に変わってしまっているので子供は「ぼくはそんな話してない」と不満を保つかもしれない。ただ、人間が走る話にしたうえで「人間が走るのをやめると地球くんの速さも元にもどる」という部分はあっている(というか、そこが大事なポイントではある)。
以下は、ほぼ正解(ただ、もうちょっと説明は丁寧にして欲しいなぁ)。
ボールを投げて落ちて停止するまでに、ボールから地球へ投げた瞬間にボールが地球と人に与えた運動量と反対向きで同じ大きさの運動量を与えるので動かせない。
運動量は保存されるけど、毎朝ボールを投げるときにその都度その都度で運動が完結しているから、地球は動かせません。
 つまり、投げ終わった後さらにボールが地面に落ちて(少し転がって)地面上で静止するところまで

を考えなくてはいけない。このときボールは地面(つまりは地球)を左に押す。ボールを投げるときに人間が地面(つまり地球)を右に押したのと逆向きである。そして、ちゃんと考えると、この二つの段階で人間とボールが地球に与えた力積は同じ大きさで向きが逆である、ということ。何兆年やろうが、ボールがそのたびに止まっているなら地球に与える運動量は0なので、地球は動かない。

 少し、この子供が喜ぶ説明をしてあげると、「ボールが手を離れてから地面に達して止まるまでの短い時間の間は、地球は動いているよ」ということになる。

 運動量保存則が「保存則」であることがわかっていれば「何兆年やったせいで最初0だった運動量が0でなくなる」という現象が起こるはずはい、とわかるはず。

前回の感想・コメントシートから

 前回の授業の「感想・コメント」の欄に書かれたことと、それに対する返答は、

にあります。

 教科書の冊子が完成してます。まだの人は前野の部屋(A307号室)まで取りに来てください。

 ファイルのPDF版はこちらです。ダウンロードして使ってくれて構いません。

熱とは?

熱とは?

 今日はテキスト第4章の「熱力学」です。テキストの方もよく読んでおいてください。まず「熱とは何か?」を説明するビデオです↓。

 先週までの力学では、

(力学的エネルギーの増加)=(仕事)

という関係があった。あるいは「仕事をしたらその分エネルギーが減る」ということを強調して書くと

(力学的エネルギーの増加)= ―(した仕事)  $\Delta U=-W$

となる。この式はエネルギーというstock(貯蔵量)に対するflow(流れ込み・流れ出し)が仕事であるという話をしたが、現実世界を見ていると、それ以外の「エネルギーの流れ込み・流れ出し」があるように思われる。よって上の式を

(内部エネルギーの増加)=(もらった熱)―(した仕事)  $\Delta U=Q-W$

と直す。力学的エネルギーが「内部エネルギー」に変わったが、これは「物が熱い/冷たい」の差に対応するエネルギーも含めたエネルギーである。

 最初にこのような考え方が出てきたときは「内部エネルギー」の正体は完全にはわかってなかった(当時は原子や分子の存在についても懐疑的な人もいた)が、今の時代ではそれは「分子運動のエネルギーだった」とわかっている。次のページで分子運動のエネルギーと温度との関係について説明しよう。

先週の問題から 分子運動のエネルギー

分子運動のエネルギー

 ビデオ内で使ったシミュレーションは以下のボタンから実行できるので、自分でも実行してみて、分子の運動の様子をじっくりと眺めて欲しい(眺め終わったら、ブラウザの「戻る」ボタンで帰ってきてください)。

 まず、分子運動の様子を眺める↓

 熱い気体と冷たい気体で、分子運動はどう違うのかを見る↓

 壁を「熱を通す壁」にすると何が起こるのかのシミュレーション↓

 壁を外してしまうと何が起こるのかのシミュレーション↓

熱とは? 断熱圧縮と断熱膨張

断熱圧縮と断熱膨張

 気体を押したり引いたりすることで「エネルギーを与えたり、奪ったり」することができる。その現象のシミュレーション説明ビデオが以下にある↓

 このシミュレーションは↓のボタンで実行できる(いろいろ変数を変えたりもできる)ので、自分でやってみよう。

 この断熱圧縮の実験として、圧縮発火器というのがある。YouTubeに動画があるの興味ある人は見ておいてください(下は例で、いろいろ見つかるはず)。


分子運動のエネルギー 第2種永久機関と熱力学第2法則

第2種永久機関と熱力学第2法則

 前に永久機関について考えた。あのときに考えた永久機関は

【第1種永久機関】

外部からエネルギーの補給を受けることなく仕事をし続けることのできる機関

である。実は永久機関には第2種もある。

【第2種永久機関】

一定温度の外部から熱を吸収してすべて仕事に変えることのできる機関

というものである。第2種永久機関はエネルギーは(熱の形で)補給されるので、エネルギー保存則は破らない。

 第2種永久機関は、高温状態を低温状態に変えて、その分のエネルギーを人間が取り出して使えるようにする、というものだ。

 内部エネルギーという「目に見えないエネルギー」があるのなら、それを取り出して使えばいいじゃないか、というのは人間の欲望としては自然な発想である。

 実在する「仕事をする機械」はモーターやガソリンエンジンなどのように、外部からエネルギーを供給される(第1種永久機関ではない)か、「一定温度でない外部(温度差のある外部)」から熱を吸収して仕事に変えている(第2種永久機関ではない

熱力学第2法則

 第2種永久機関が存在しないのは、熱力学第2法則がそれを禁じるからなのだが、この熱力学第2法則にはいろんな表現があるが、高校物理の範囲では次の二つの表現がよく使われている。

熱力学第2法則の二つの表現

  1. 熱をすべて仕事に変える熱機関は存在しない。
  2. 熱は自然には高温から低温に流れる。

 1.はつまり第2種永久機関が存在しないということ。

 2.は実は1と等価なのだが、それは少しわかりにくいかもしれない。また、この「自然には」という表現が「いったい何が自然なのか(どうなったら不自然なのか)」をちゃんと定義し理解しておかないと法則の意味が理解できない。

 「自然に」はより明確には、「それ以外には何の影響も及ぼさずに」と表現される。熱が低温から高温に流れるという現象の例はクーラー(低温の室内から高温の室外へ熱を移動させる)であるが、それは電力を投入するという「外部の影響」があるがゆえに起こっている(上の図でも、永久機関そのものの状態が変化してないことに注意)。

 この1.と2.が同じ法則だというのは最初はびっくりするかもしれないが、どのように同じ法則であるかが納得できるのかという点については、テキストの71ページを読んでおいて欲しい。

 熱が高温から低温へ移動するというのは「高温物体と低温物体が接触すると、高温物体の温度が下がり低温物体の温度が上がる」ということでもある。それは自然に起こるが、逆が起こらないということは日常経験からしても納得できるはずだし、今日使ったシミュレーション

をやってみると、高温から低温へと熱が流れる(エネルギーが移動する)現象は「起こりそうだ」と納得できても、逆はなさそだということが納得できる。

 同じく「元に戻らない」現象のシミュレーション(これも前にやってもらったものだが)がこれ↓

 この第2法則は、数ある物理法則の中で唯一「時間反転」ができない法則である(力学における動摩擦力は、熱が発生するという意味で熱力学第2法則が関与する現象である)。

 熱力学第2法則は、大学レベルの物理では、エントロピーという名前の状態量を考えて、

熱力学第2法則のエントロピーを使った表現

周囲から断熱された系のエントロピーが減少することはない。

と表現されることもある。エントロピーの意味についてはここでは説明しないが、テキストの72ページ以降にある程度説明してあるので、そちらを読んでおいて欲しい。

運動エネルギーが内部エネルギーになっていく例

 力学的エネルギーが内部エネルギーになってしまうと、元に戻すのは難しい、というのが熱力学第2法則である。そこで、「力学的エネルギー→内部エネルギー」と変化している様子のアニメーションが↓である。

 摩擦で摩擦熱が発生するのも、上と同様の現象である。

実際に動く熱機関の例

 永久機関はできないが、温度差があればそこからエネルギーを取り出して動く熱機関がある。例としては、スターリングエンジンや、平和鳥がある。

 スターリングエンジンは下のような仕組みになってます。

 部屋の中にディスプレーサーという断熱材が入れてあります。ディスプレーサーが上にあると下にある熱い物体(お湯とか)の影響が強く出て、部屋内の気体が膨張し、ピストンは上がります。ディスプレーサーが下にあると上にある冷たい物体の影響が強くでて、部屋内の気体が収縮し、ピストンが下がります。ピストンが下がりきってしまったらディスプレーサーを上げてやり、ピストンが上がりきってしまったらディスプレーサーを下げてやる(←このあたりはカムなどを使ったメカニズムで実現する)とピストンが往復運動を繰り返します。

↓スターリングエンジンが動いているところ。熱湯で下の部分を温めてあげると、反時計回りに回る。

↓同じスターリングエンジンで、下の部分を冷やしてあげると、働く力が逆になるので、さっきとは逆の、時計回りに回る。

もちろん、スターリングエンジンは(平和鳥も)第2種永久機関ではありません。温度差がないと動かず、もし誰かが温度差を作ってあげなければ、温度は一様になってしまうので止まってしまいます。

断熱圧縮と断熱膨張 内部エネルギーの意味がわかっているかを問う問題

内部エネルギーの意味がわかっているかを問う問題

 また、共通テストの試行問題に登場いただこう。平成30年度に行われた物理の試行問題の第1問問3(一部問題を省略)である(自分で解いてみてから次のページを開こう)。

 解答を自分で考えてから、次のページに行こう。
第2種永久機関と熱力学第2法則 問題の解答

問題の解答

正解は、5番が(4)、6番が(1)である(皆さんの解答はどうだったろうか?)。

 大学入試センターが公表している、この問題(箱番号5,6)の正答率は6.6%という悲惨なものである。残念ながらどういう間違いをした人が多かったのかまではわからないが、とにかく(以下に示すような)正しい理解に達しなかった人が多いのである。

 熱力学第1法則$\Delta U=Q-W$を正しく理解している人ならば、

  1. 全体が断熱されているから$Q=0$だ。
  2. ピストンは気体を押しているから$W>0$だ。
  3. ということは$\Delta U>0$だ。

のように考えて温度が上がる、と判断する。

 間違える可能性として

「断熱膨張では温度は下がる」と勉強した。これも断熱膨張だ。じゃあ下がるに違いない。

「真空への膨張(自由膨張)では温度は変化しない」と勉強した。これも真空への膨張だから、変わらないに違いない。

のような「パターンマッチング」を行ってしまったという例がありそうである。

 ちゃんと理解している人なら「断熱膨張では温度は下がる」のは「気体が正の仕事をする場合」だからであり、「真空への膨張(自由膨張)では温度は変化しない」のは「気体が仕事をしない場合」だからだと理解できているので、上のような失敗はしない。

 なお、「温度が上がる」と判断するもう一つの方法は、「ピストンが下に落ちている→ピストンの位置エネルギーが減っている→ということは何か別のもののエネルギーが増えるはず→それは気体の内部エネルギーだろう→温度は上昇する」という流れである。

 こういう思考ができないのは、「力学で習ったエネルギー」と「熱力学で出てくる内部エネルギー」が同じものだということ(上で書いた流れにしたがって導入されたものだということ)が頭に入ってない状態だからであろう。「力学のときはこれを使って問題を解く」「熱力学のときはこれを〜」「電磁気学ではこれを〜」のような「科目別に使えるツールが違う」のような捉え方をしているようなのである。こういう人はいわゆる「融合問題」に弱い。

 実際、大学生に「電磁誘導のときにエネルギー保存則って使っていいんですか?」と真顔で質問されたことがある。ちょっとびっくりした。

 物理を理解させるということは「物理法則というのは広く応用できるものだ」という概念を獲得させることでもあるので、こうならないような教え方を考えていく必要がある。

 以上で第7回の授業は終わりです。各自のwebclassへ行って、と「第7回授業感想・コメントシート」に答えてください。



webclass↓

この感想・コメントシートに書かれたことについては、代表的なものに対しては次のページで返答します。
内部エネルギーの意味がわかっているかを問う問題 受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 webclassでのアンケートによる、感想・コメントなどをここに記します。

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


熱というものに対する概念が変わった。 内部エネルギーについて正しく理解でき、共通テストの問題が解けて嬉しかった。
「熱」はわかりにくいと言われることが多い分野なので、しっかりと理解して教えていきましょう。
私は高校生の頃、よく学校で受験対策として問題のパターンについて教わっていたが、今回の共通テストの内部エネルギーの問題を通して、物理現象をしっかりと理解していたらそこまで難しくない問題だが、問題をパターン化して解くと、パターン化した事が頭の中に先走り、物理現象を間違えるどころか入試でも対応できないということを考えさせられました。私が教師になった時には、生徒に物理現象を理解させ融合問題にも対応できる力を養うことが出来るような授業を目指してやっていきたいと思いました。
パターンに頼らずに理解できて、さらに理解させられるように、がんばってください。
最後の問題を正解することができて良かったです。今回の分野は分子が出てきて、私の専門に大きく関わるので、ちゃんとできて自信につながりました。
熱は化学ともつながってきますね。
問題が解けるように教えるんじゃなくて、教科の内容の本質を教えるということはどの教科においてもいえる、特に理系科目においては気をつけないといけないので注意していきたい。
そうですね。どの科目でも、本質が伝わらないと意味がないです。
共通テストの問題は、内部エネルギーの変化式を思い出して解くことができたけれど、高校生の頃の自分は熱力学でこの言葉が出てきたからこうやって解くんだと暗記問題として解いていたため、間違えていたと思います。先週のクイズで出されていたような少し発展させた問題や融合問題はかなり弱いなと自分でも感じているので、根本の考えを理解できるようにこれからも授業を受けていこうと改めて思いました。
まずは根本をしっかりさせることですね。
前回の問題は自分の頭の中で考えていたことは正解に近かったのですが、わかりやすい言葉で正確に伝えることは難しいということを実感しました。 今回の講義では、熱はエネルギーの出入りとしか考えていなかったので、用語をしっかり理解、区別して説明していきたいと思います。
熱がエネルギーの出入りであるということはもちろんそれでいいんですが、仕事とどう違うかとかも理解しておきたいところですね。
私は高校で物理を履修していないが、最後の問題は正解した。この問題の正答率が6.6%だったことにとても驚いた。
私もデータ見たときは「え?」と思いました。間違えやすい問題だとは思ったけど、そこまでとは。
自分は力学、電磁気学、波動、熱力学、原子の分野をそれぞれ別のものと捉えるほうが多かったと思います。それぞれどのように繋がっているのかを教えて、融合問題などにも強くなれるような生徒を増やしていきたい。
いろんな場面に物理が使えるようになってこそ、学力が付いた、と言えます。
シミュレーションがたくさんあって自分で考えるよりもわかりやすかったです。
シミュレーションをやったうえで、自分でも考えてね。
自分もかなりパターンマッチングとか、力学や熱力学などを別々に考えていたので、今回の講義内の問題をやはり間違えてしまい、悔しかったです。これからもちゃんと、「物理法則をきちんと理解する」ことを目的に、勉強していきたいと思います。
パターンマッチ的な勉強は、教える方も教わる方も「その場限りならいいけど、長期的に見ると不経済」な方法です。やはり「きちんと理解して応用する」のが一番。
最後の問題で間違った。 解説を聞いて理解できた。
間違えやすい問題ですが、理解して今後は街がないように。
今まで熱=エネルギーだと思っていたので自分の勘違いを正せて良かった。
使い所が違う言葉なので、理解して(特に教えるときには)ちゃんと使い分けましょう。
問題の解答