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量子力学(2004年)試験

*プランク定数h、hbar=h/2πなど、必要な物理定数は解答に使用してよい。

*計算の過程も解答用紙に書くこと(公式覚えてきて書いただけでは点はやれないし、途中が書いてないと部分点もあげられない)。

*以下の問いのうち、4問を選択して答えよ。5問以上答えた場合は点数の高い方から4問分を集計して得点とする。

問い1
 量子力学を勉強中の下級生にこう質問されたら、あなたはどう答えるか。ほんとに下級生に教えるつもりで丁寧に書くこと。

(1)「量子力学では物理量が演算子だとか言いますが、運動量が-ihbarだとか、エネルギーがihbarだとか、どこから決まったんですか。」
(2)「『波動関数ψ=exp(i(px-Et)/HBAR)はxの正の方向に運動量p を持った状態だ』と本に書いてあるんですが、この波動関数から確率密度を計算すると、ψ^*ψ=1になっちゃいました。『運動量を持っている』って言うのに、確率が場所にも時間にもよらないってどーゆーことですか」
(3)「波動関数の接続条件って、ψとψが連続になるようにするって言うけど、ψは連続にならなくていいみたいですね。どうしてですか?」

問い2
右図のようなグラフで表される波動関数がある(虚数部はないとする)。

(1) 波動関数を規格化したとすると、hはいくらになるか。

(2) xの期待値を求めよ。

(3) xの分散を求めよ。

(4) d→0の極限を取った時、標準偏差Δx(分散の平方根)はいくらになるであろうか。予想および、そのように予想した理由を述べたのち、実際に計算して確かめてみよ。

問い3
 A,Bをtを含まないエルミートな演算子とする。

 演算子Aがエルミートであるとは、任意の波動関数ψ,φに対し、

∫ ψ^* Aφ dx = ∫ (Aψ)^* φ dx

が成立することである。

(1)C=i[A,B]とすると、Cはエルミートな演算子であることを示せ。

(2) Aの固有関数をψ_aとして、固有値をaとする。aが実数でなくてはならないことを証明せよ。

(3) Aの固有値がa'である固有関数をψ_a'とする。a≠a'であれば、ψ_aとψ_a'は直交する(∫ ψ^*_aψ_a'dx=0)ことを証明せよ。

(4)AがハミルトニアンHと交換する時、Aの期待値は時間によらないことを証明せよ。

問い4
  左のグラフで表したポテンシャルの中で、波動関数ψ(x)が左下のグラフで表せるような定常状態ができあがっている。ψ(x)は実数であり、虚数部はないとする。

(1)波動関数の二階微分ψをψで割ったもの(ψ/ψ)の符号は、図の点Aより左では負、右では正になっている。点Aは古典力学的に考えるとどのような点か。
(2) 点Oの右、点Aの左では、右へ行くほど波動関数の波長がだんだん長くなっているが、これはなぜだろうか。物理的解釈をのべよ。
(3) 点Oの右、点Aの左では、右へ行くほど波動関数の振幅がだんだん大きくなっているが、これはなぜだろうか。物理的解釈をのべよ。

問い5
右のグラフに書かれたようなポテンシャル

 V(x)=

∞(x<0)
   = 0 (0≦x<L)
    = V_0(L≦x)

のもとでシュレーディンガー方程式

 

を解く。0≦ x < Lにおける波動関数をψ_1(x)、L≦ xにおける波動関数をψ_2(x)としよう。V_0>E>0が成立しているものとする。


(1) x=0におけるψ_1(x)の境界条件はどのようなものか。
(2) x=Lにおける接続条件はどのようなものか。
(3) x=0の境界条件を考慮しつつ、ψ_1(x)を求めよ。波動関数の規格化はしなくてよい。
(4) 無限遠(x=∞)の境界条件を考慮しつつ、ψ_2(x)を求めよ。波動関数の規格化はしなくてよい。
(5) 接続条件から、V_0,E,L,hbar,mの間に成立すべき条件を求めよ。

問い6
球面調和関数Y_l^m(θ,φ)は、ルジャンドル陪多項式P_l^m(x) を使って

Y_l^m(θ,φ)=N P_l^m(cosθ)e^imφ

と表すことができる(Nは規格化定数)。このY_l^m(θ,φ)は

|\vec L|^2 =-hbar^2(∂/∂θ(sinθ∂/∂θ) +∂^2/∂φ^2)

L_z=-ihbar{\partial\over \partialφ}

の両方の固有関数になっている。

(1) L_zの固有値はいくらか。
(2) |\vec L|^2の固有値はhbar^2l(l+1)である。 P_l^m(cosθ)のみたすべき微分方程式はどのようなものか。 θを変数として書け。
(3) x=cosθとして変数変換して、P_l^m(x)のみたすべき微分方 程式をxを変数として書け。
(4) ∫_-1^1 P_l^0(x)P_l'^0(x) dxまたは∫_0^π P_l^0(cosθ)P_l'^0(cosθ)sinθ dθ という積分はl≠l'の時0と なる。そのことを、上で作った微分方程式をつかって証明せよ。

問い7
3次元の角運動量演算子L_x,L_y,L_z

[L_x,L_y]=ihbar L_z, [L_y,L_z]=ihbar L_x, [L_z,L_x]=ihbar L_y

という交換関係を満足する。

(1) |\vec L|^2=(L_x)^2 + (L_y)^2+(L_z)^2がL_zと交換 することを証明せよ。
(2) 角運動量のz成分L_zの固有値はL= L_x± iL_yを使ってあげ たりさげたりできることを説明せよ。
(3) [L_+,L_-]を求めよ。
(4) L_xとL_yの同時固有状態があったとする。その状態はL_zの固有状 態でもあり、しかもL_x,L_y,L_zの固有値は全て0でなくてはいけないことを証明せよ。
(5) 角運動量のx成分L_xの固有値をあげる演算子はどのようなものか。

問い8

3次元の円筒座標(r,θ,z)を考える。直交座標(x,y,z)との関係は

x=r cosθ, y=r sinθ, z=z

である(z座標に関しては同じ)。

図のように、それぞれr方向とθ方向を向いた単位ベクトルを\vec e_r,と書き、x方向、y方向の単位ベクトルをそれぞれ\vec e_x,\vec e_yと書く。

(1) \vec e_r,\vec e_x,\vec e_yを使って表せ。
(2) \vec\nabla=\vec e_x∂/∂x+\vec e_y∂/∂y+∂/∂zの、円筒座標での表現を求めよ。
(3) ラプラシアン演算子Δ=\vec\nabla\vec\nablaは直交座標では++∂^2/∂z^2で ある。円筒座標での表現を求めよ。
(4) z方向に重力mgが働いているとして、質量mの粒子の波動関数ψ(r,θ,z)が満足するシュレーディンガー方程式を円筒座標で書け。
(5) ψ(r,θ,z)=R(r)θ(θ)Z(z)として、変数分離された方程式を作れ。
(6) 適当な変数を用いてR(r)の方程式とZ(z)の方程式を無次元化した方程式を作れ。

 

追試験は2月10日の10:20〜11:50

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