ヒッグス粒子ってなあに?---最後に



 で、CERNで見つかったものは何なの?

 
 ヒッグス場も立派な「場」で、モデルとしては今日見せたバネのつながりで考えられるものです。ということは、この「場」に十分なエネルギーを与えれば、場を振動させ、その振動が伝わっていく様子を確認することができるはずです。その「ヒッグス場」の振動こそ、「ヒッグス粒子」です。
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 どうして見つけるのが大変なの?

 まず、ヒッグス粒子は質量がとてもおおきい。だいたい、陽子の130倍ぐらいの質量があるようです。大きい質量の粒子を作るには、それだけエネルギーが必要です。ただし、ヒッグスを見つける難しさはそれだけではありません。
 ヒッグス場と相互作用することによって質量が生まれる、という話をしましたが、当然「相互作用をよくする粒子は重くなる」ということになります。ヒッグス粒子を作る(ヒッグス場を作る)ためには、ヒッグスとよく相互作用する(つまり、重い!!)粒子を使わなくてはいけません。加速器で重い粒子をたくさん作って、さらにそれをぶっつけあって「ヒッグス場を揺らす」ことが必要だったので、たいへんな実験だったのです。
 なお、厳密には今わかっているのは「ヒッグス粒子だと思われる新粒子が見つかった」という段階で、これがヒッグス粒子が持っていて欲しい性質をちゃんと(全部)持っているかどうかは、今後の実験・研究次第です。

Q:CERNでは人工的に作っているんですか?

A:はい。人工的に、がんばってエネルギーつぎ込んで作らないと、ヒッグス粒子作れません。


 で、見つかると何がうれしいの?

 いくらここまで話した「対称性の自発的破れ」のお話がうまくいったとしても、ヒッグス粒子(=ヒッグス場の振動)がみつからなかったら、「ほんとにヒッグス場のせいで対称性が破れたり、粒子が質量持ったりするの?」という点には自信が持てないままだったでしょう。

 人類が

 粒子って何だ?   力って何だ?  相互作用って何だ?  真空って何だ? 

と考え続けた末にたどり着いた結論が今の「標準理論」と呼ばれる理論で、ヒッグス粒子はその標準理論が正しいことの証明なのです。「ここまでの物理学の進歩の方向は間違ってなかった!」と自信が持てるほどの確証が得られた、ということです。

 とはいえ、これからも理論的実験的にも研究していかなくてはいけないことはたくさんあるのです。

最後に


 ヒッグス粒子の発見は、人類が続けている宇宙の法則を知る旅の一里塚に過ぎません。

 人類はこれからも、 この世界の法則は何なのか? を探求し続けていくことでしょう。人類がそういう存在であり続けて欲しい、と思います。