ヒッグス粒子ってなあに?---内部自由度の対称性を破るもの



 ヒッグス場の「落ち方」で素粒子の性質が分かれる

 
 対称性をやぶった犯人はヒッグス場だ、と言いました。もう薄々お分かりかと思いますが、ヒッグス場が真空期待値を持つ時「左に落ちるか」「右に落ちるか」で粒子に違いが生まれるのです。
 これまでヒッグス場を1方向の(架空の方向への)振動のように話してきましたが、実はヒッグス場は「複素数2成分」の場で、もっと複雑です(複素数で2方向に振動している!)。

 大雑把にいうとこうなります。

Higgs場が対称性のいい状態にある時、uクォークとdクォークにも、電子とニュートリノにも区別はありません。「完璧な対称性」のある世界です。しかし同時に、この世界は我々の世界のように原子が様々な形をしたりしない、とても「つまらない世界」でもあります。


 幸いにも、この「つまらない世界」は実現しません。なぜなら、ヒッグス場が真ん中にいるのは不安定だからです。そして、次のような世界が実現します。


左と右の二つの世界



 どちらが(実際には2つどころではなくたくさんのバリエーションがあります)実現するかは、時の運でしかありません。

 とはいえ、そうなったら我々は重い方(左ならu、右ならd)を「dクォーク」と呼び、電荷のある方(左ならニュートリノ、右なら電子)を「電子」と呼ぶでしょう。上の二つの違いは、演じる役者が入れ替わった(きっと双子で、役が決まるまでは区別がつかないほどに似ている役者ペアなのでしょう)だけで、それぞれの状況に応じて役者は与えられた役をちゃんと演じてくれます。

Q:結局外見は変わらないのでしょうか?

A:そっちに落ちた宇宙ではどう生物が進化するかまではわかりませんが(^_^;)、とりあえず物理法則は(もともと対照なので)対等なものですね。



 念の為注ですが、↑での話はすべて「左巻き成分」についての話です。ここでは、左巻き成分/右巻き成分とは何かという話や、右巻き成分はどうなっているかという話は残念ながら省略です。