経路積分とは何か?(Applet同梱版)その1
前野[いろもの物理学者]昌弘
雑誌「数理科学」2009年5月号に書いた記事を、説明に使用したJavaアプレットを挟み込んだhtml版として書き直してみました。単にappletを挿入するだけでなく、図版を追加し、ページ数の関係ではしょっていた部分も少し加筆してあります。
普通の本のように静止画のみではなく、こういう「動いたり、パラメータを変化させることができる図」を貼り込んでいけるというのが電子テキストの大きな魅力だと思うので、試験的に作ってみたものです(文章が既にあったのが大きいのですが)。
下のプログラムがうまく動かない、という人はSUNのjavaの広場のページにいってjavaをダウンロードしてインストールしてみてください。
「Download Now!」と書いてある横のボタンをクリックすればダウンロードできます。
・光は波か?粒子か?
「経路積分」は量子化、すなわち古典力学から量子力学への移行の一つの手段である。そこで、古典力学と量子力学のつながりについて話しながら、経路積分とは何かを解説していこう。
話は17世紀に遡る。「光は波なのか、粒子なのか?」という論争があった。ニュートンは「光を粒子である」派であり、「波というのは広がるものだ。それに反して光は直進し、影を作るではないか」と考えていた。しかし光の直進性は波動としての観点からも説明できる。次の図は光が壁の隙間を通り抜けた後の、特定の位置(マウスで指定できる)にやってくる素元波を示している。
単スリットを通り抜けた光にホイヘンスの原理を適用した場合、素元波のそれぞれがどのように到着するかを表現したアニメーションです。
画面をクリックすることで、波の到着点を変えることができます。
波長およびスリットのサイズも下の二つのスライダで変更できます。
影の部分に来る光が干渉によって消されていることを確認してください。
「光は波である」派であるホイヘンスによる、「ホイヘンスの原理」によると波は「素元波」の重なり合いとして表現される。
は素元波が光の届く明るい場所に到着する様子、
は素元波が影の部分に到着する様子を描いている。
上のアニメーションをクリックして、いろいろなところへ集まる素元波の様子を観察しよう。波長やスリットの幅も変化させることができる。
影の場所には、素元波の山と谷がいっせいに到着するため、干渉によって消されてしまう。これが光が「広がらない」理由なのである。明るい部分には山もしくは谷が一団となって到着するため、ちゃんと光が到着する。
光は波長が短い(10^-7mのオーダー)がゆえに、図の「光路差」の部分に、ずっとたくさんの「山谷山谷山谷…」の重なりがあり、干渉による消し合いはほぼ完璧(「ほぼ」であって完璧ではなく、状況を整えてやればちゃんと光が広がることを実験で確認できる)である。当たり前のように感じてしまう「光は直進する」という事実には、ちゃんと(波動的性質からくる)理由があるのである。
「その2」に続く
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