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大学に入ってきたばかりの新入生達へのオリエンテーションの時間に、「大学での勉強はどういうものか」ということを話す機会がある。その時にいつも、これから物理を4年間(あるいはそれ以上)勉強することになる学生さんたちに向けて言うことにしている言葉がある。それは
量子力学を理解している人は、1000人に一人もいない
(いや、10000人に一人もいないかも?)
ということである(無責任な話だが、統計を取ったわけではないので実際にどうなのかは知らない)。
要は「量子力学は難しい」と言っているのだが、別に「新入生を脅かしてやろう」などという了見でそんなことを言うのではない。いやある程度は脅かしてもいるのだが、それと同時に
1000人に一人ぐらいしか理解していない難しいものを勉強しようとしている、自分を誇りに思って欲しい
と激励をしているつもりである。【略】
量子力学を理解するということは、単に一つの学問を理解するというだけのことではない。「人間が``直観的に理解''しているようには、この世界は動いていない」ことを理解することでもある。つまりは学習する者の心の中にある「世界の有り様」を変えていくことが、量子力学の勉強なのである。だから難しい。量子力学の歴史を見ていくと、多くの物理学者たちが悩みながら量子力学を創るという難事業を一歩一歩進めていったことがわかる。
【略】
本書では、量子力学という学問がどのように発展していったかも述べて、「なぜ量子力学が必要なのか」「どうしてこんなふうに(直観に反することを!)考えなくてはいけないのか」を理解してもらえるように努めた。ただし、その過程で読みやすくするために歴史的な順序をあえて飛ばしている部分もある。歴史はわかりやすい方向に進むとは限らないので、現代の眼から見てわかりやすくなるように説明を工夫したつもりである。
また、初学者が「はまってしまう」ような部分はできる限り丁寧に説明し、かつ必要な基礎知識も可能な限りその場で説明するようにした。「量子力学がわからない」と思っている人の多くが、実は量子力学でつまずいているのではなく、その前段階である「波」の時点でつまずいてしまっている場合が、よく見受けられる(著者は大学の時、「高校物理では波動が一番苦手だったなぁ」と言ったら、すかさず先生から「そんなこと言っている奴は量子力学で困る」と言われた経験がある。まったくその通りであったのだが、そういう忠告を受けていたにもかかわらず、著者が波動についてじっくり勉強したのは授業が量子力学に突入してからであった)。そういう人にも、必要な知識をつけながら量子力学にアタックできるようにと配慮した。
何より、「これが公式だから覚えなさい」「こうやったら計算できて答が合うんだからつべこべ言わずに計算しろ」というような、つまらない勉強の仕方をしなくてすむような本にしたつもりである。
【略】
---「1000人に一人」になるための第一歩を、この本から踏み出していただきたい。
東京図書の(「よくわかる量子力学」→サポートページ)の前に読んでいただくぐらいのつもりの本です(もちろん2冊は独立に読めます。少し内容は重複している部分もあります)。
★のついているネット書店には、ユーザーによるレビューがあります。
以下に、発見されたミスを記載していきたいと思います。
以下のミスは第4刷で修正されました。
以下のミスは第3刷で修正されました。
以下のミスは第2刷で修正されました。