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★表紙の画像が届いたよ
4/9に出る本「よくわかる電磁気学」の表紙の画像が届いたので、うれしがって載せてみる。だってうれしいんだもん。
帯についている文章は、「はじめに」からの抜粋。全文は、
私が大学1年の時、最初に受けた「大学の物理の授業」は、grad,rot,divとの出会いであった。ついこないだまで高校生で、「偏微分」の「へ」の字も知らなかった当時の私は、∂という記号の洪水の中でわけもわからないままにままに講義時間が終わってしまったことに衝撃を受け、「これはしっかり勉強しないとたいへんなことになる」と思った。ところがこんな決意というのはなかなか思うようにはいかないもので、私は1年の時も2年の時も、電磁気関係の単位を落としている(もちろん後でちゃんと再履修して単位を取得したが)。
電磁気学というのは、初学者にとっては決して簡単なものではない。たいていの場合、大学1,2年で習うことになるはずだが、まずgrad,div, rotなど、新しい記号の洪水に「なんだこれは?」と思っているうちにどんどん授業が先に進んでしまう。当時の自分を思い返してみて、つくづく反省してしまう。あの頃の私は、自分でも何を計算しているのかよくわからないままにがむしゃらに計算していた。ある程度慣れてきた後でもう一度電磁気を勉強しなおした時になって初めて、「なるほど、俺はこういう計算をやっていたのか」と気づいた。と同時に、ずいぶん無駄な勉強の仕方をしていたということにも気づいて「1年、2年の時の俺はなんと愚かだったのだ」と思ったものである。
この本を書く時、何よりも「読者が何をやっているのかわからないままに話がどんどん進んでしまうという状況に陥らないようにする」ということを目標とした。どんなに難しそうに見える計算式にも、背景に物理的内容がある。それを知り、「なぜこんな数式を使う必要があるのだろうか?」という点に納得しながら読み進めていけば、電磁気学の体系が頭の中に整理されてくるはずである。
初学者はどうしても新しい数式を敬遠しがちである。しかし、先人達がなぜそのような数式を使ったかといえば、「それを使うことによって簡単になる概念があるから」ということに他ならない。だから新しい計算方法が出てきた時も、その計算法そのものを勉強するのでなく「この計算法によってどんな概念が表現されるのか」ということを勉強しているのだと思って読み進めて欲しい。
本書の内容は、2007年度から琉球大学理学部物理系で行っている「電磁気学I」「電磁気学II」の講義内容が元になっている。私は授業の最初で「学問の世界ではどんなバカな質問でも、質問した方が勝ち。こんなこと聞くのは恥ずかしいなどと思う必要はない。すべき時に質問しない方がよっぽど恥ずかしい」ということを述べるようにしている。学生さんたちはとても素直に私の言うことを聞いて、どんどん質問をしてくれた。質問を受け、答えていくことで、私自身も「電磁気学のどこが難しいのか」「電磁気学を学ぶ人はどこで足踏みをしてしまうのか」を改めて認識することができた。この本を書く時には常に、「こう書いたら、○○君はどういう質問をしてくるだろうか?」「ここを読んだ△△君がわかんないよ〜〜、と怒りそうだ」などと彼等、彼女等の顔を思い浮かべ、反応を予想しながら書き進めた。この本の説明が時には「もういいってば!」と言いたくなるほどに、くどいものになっているのはそういう理由である。
(中略)
本書が、電磁気学をこれから身につけようとする人のための良き水先案内となるよう、願っている。
という感じ。ああ、なんかこうして読むと偉そうだぞおまえ>わし
本の一部だけを書いた経験はあるけど、一冊まるまる書くのは初めて。わくわくしつつも「なんという大それたことをしてしまったのか」とちょっと怖い。
これが売れたら次は「よくわかる量子力学」にかかりたいものです。
ちなみにtwitterでこの本の話をしてたら「なぜ『いろもの物理学者著』にしないのだ!」と怒られた。いやそれじゃ普通の人は絶対うさんくさく思いますってば。
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