テイラー展開が可能であるためには、f(x0)はもちろん、任意の階数の微係数ddxf(x0),d2dx2f(x0),⋯が全て計算できる場所でなくてはいけない。たとえば、f(x)=√xを原点x=0の回りにテイラー展開することはできない(つまり、この関数は原点において解析的でない)。ddxf(x)=12√xなので、x=0では微分が存在しない(あえて書くなら∞)。グラフでは、x=0において線が垂直に立っていることで「微分できない」ことが表現されている。
では√xのような関数はどうやって近似するかというと、x=0以外、たとえばx=1の回りにテイラー展開する。x=1でなら、12√x|x=1=12となってちゃんと値がある。二階微分も計算しておくと、d2dx2√x=−14x32となるから2次の項の係数は12d2dx2√x|x=x0=−18であり(3次以上の項については詳細は省くが同様の計算を行って)、
√x=1+12(x−1)−18(x−1)2+116(x−1)3−5128(x−1)4+⋯のように展開できる。たとえば電卓を叩けば√1.2≒という式が出るが、電卓内部では上のような展開を使って計算される。ちょっとやってみると、
\begin{equation} \sqrt{1.2}= \underbrace{\underbrace{\underbrace{\underbrace{1 +\underbrace{{1\over 2}(1.2-1)}_{0.1}}_{1.1}-\underbrace{{1\over 8}(1.2-1)^2}_{0.005}}_{1.095}+\underbrace{{1\over 16}(1.2-1)^3}_{0.0005}}_{1.0955}-\underbrace{{5\over 128}(1.2-1)^4}_{0.0000625}}_{1.0954375}+\cdots \end{equation}のようにして正しい値に近づいていく。
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