次数があがるとグラフの複雑さは増していく。n次多項式のグラフはn-1個の山/谷を持つ(重なって変曲点になる場合はその分減るが)。右は7次多項式関数の例である(山が三つ、谷が三つある)。この式はf(x)=0が7つの解を持っているが、f(x)=C(Cは定数)が最大いくつの解を持つことができるか、ということと、山や谷の数には関係がある。
では、今日は三角関数を考えていこう。
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三角関数というのは「角度→直角三角形の辺の比」という関数としてまず定義される。つまり、「直角三角形の角度を一つ決めると、辺の比が決まる」という関係が「三角関数」である。理工学では、角度は「度」ではなく一周を$2\pi$とする角度がよく使われることが多いなぜか、というのはこの後三角関数の性質を考えていくなかで理解できるはずである。。
この角度の単位は「rad」と書いて「ラジアン」である。
一周を2πラジアンとすると何が都合がいいかというと、半径r、頂角θの扇形の弧の長さが rθとなり、計算が楽になる(円は頂角2πの扇形と考えれば、その弧すなわち円周は2πrになる)。特に運動を考えているときは物体の移動する距離(長さ)の計算ができる限り簡単な方がよいので、以後も角度はラジアンを使う。
角度を表す文字として、ギリシャ文字のシータ(θ)を使おうこういうのはあくまで慣例であって、別に角度にどんな文字を使ったって構わない。。
直角三角形の3辺を底辺、高さ、斜辺と右の図のように名付ける(名づけ方の意味は明白だと思う)。この三辺の比は、3×2=6通りの組み合わせがある。それぞれを、
sinθ= | 高さ 斜辺 | cosθ= | 底辺 斜辺 | tanθ= | 高さ 底辺 | |||
cosecθ= | 斜辺 高さ | secθ= | >斜辺 底辺 | cotθ= | 底辺 高さ |
と名付けるcosecは長いので、cscと略す場合もある。。
上の段にある三つが一番よく使われるもので、下の段の三つは対応する上の段の逆数$\left({1\over \sin \theta}={\rm cosec}\,\theta, {1\over \cos \theta}=\sec\theta, {1\over \tan\theta}=\cot\theta\right)$になっているややこしいことに、「サイン」の逆数が「コ}セカント」で、「コ}サイン」の逆数が「セカント」、と「コ」のつくのが入れ替わる。。だから、下の段三つは使わないで済ませることもできる(以下でも上三つの$\sin,\cos,\tan$を主に考えていく)。
なお、「底辺」と名前はつけたものの、これは別に「底になっている」という意味ではない(三角形の方向がどっちを向いているかはあまり重要ではない)。
むしろ、角度θの角と直角を結ぶ辺を「底辺」、直角以外の角を結ぶ辺を「斜辺」、残りの辺を「高さ」と呼んでいると思った方がよい。
sinθ= | = |
cosθ= | = |
tanθ= | = |
ここまでで示した「直角三角形の辺の比」という定義では、角度θは$0<\theta<{\pi\over 2}$でなくてはいけない。ではθが${\pi\over2}$を超えた(ただしまだπは超えてない)場合は$\sin\theta,\cos\theta$は値がないのかというと、ここで定義を拡張することでθが${\pi\over2}$を超えても大丈夫なようにする。
具体的には、下の図のように逆側に三角形を作り、その「高さ」と「-(底辺の長さ)」(マイナス符号に注意)をそれぞれ${\sin\theta}$と$\cos\theta$の定義とする。
のようにθが直角より大きくなり「高さが負」であったり、のようにθが負になり「底辺が負」になる場合であったりする位置にも移動できる。
前のページで気づいてなかった、という人は、下の図でやってみよう(下の図は前のページのものと機能は同じである)。
sinθ= | = |
cosθ= | = |
tanθ= | = |
ここでθが${\pi\over2}$を超えた時、底辺が伸びる方向はさっきまでとは逆向きになった(図ではそれを表現するために$\cos\theta$を左右反転した文字で書いた)ので、負の値とすることにして、${\cos\theta}$を「$-(底辺の長さ)$」と決めた。
このように考えたのだから、θが最初考えていた領域をちょうど超える場所である$\theta={\pi\over 2}$については、${\sin{\pi\over2}}=1,{\cos{\pi\over2}}=0$とするのが適当である。「$\theta={\pi\over 2}$では三角形はできないではないか!」と言いたくなる人もいるかもしれないが、定義を拡張するというのはそういうことであるそしてこの拡張が、ちゃんと役に立つ場合、それが一般に使われるようになる。どう役に立つのかについては、以下を読んで欲しい。。
下の図は斜辺を1で一定にして角度θを変化させていったときの直角三角形の高さと底辺の変化の様子である。斜辺を1とすると高さは$\sin\theta$、底辺の長さは$\cos\theta$であるが、角度が大きくなるに従って$\sin\theta$は大きくなり、$\cos\theta$は小さくなる(こうなるのは、$0<\theta<{\pi\over 2}$の範囲に限って考えているからであり、${\pi\over2}$を超えると事情が変わってくる)。
ここでも直角以外の角を結ぶ辺が長さ1となっていて、角度θの角と直角を結ぶ辺長さ$\cos \theta$、それ以外の辺が長さ$\sin\theta$となっている。
次に、底辺を一定(1)にした場合に角度を変えると高さがどのように変わるかを示したのが右の図である。
斜辺の長さは図に示していないが、$\sec\theta={1\over \cos\theta}$であり、θの変化に伴い変化する。
上の定義から、三角関数相互の関係を出してみよう。たとえば、
\begin{equation} {{\sin\theta}\over{\cos \theta}}={{{高さ}\over{{\scriptstyle 斜辺の長さ}}}\over {{\scriptstyle 底辺の長さ}\over {{\scriptstyle 斜辺の長さ}}}}={{{高さ}}\over {{\scriptstyle 底辺の長さ}}}=\tan\theta \end{equation}である。同様に${\cos \theta\over \sin \theta}=\cot\theta$であるこの後θの範囲は最初に定義した$0<\theta<{\pi\over 2}$からどんどん広がっていくのだが、これらの式はθがどのような範囲でも成立する。。
斜辺の長さが1である三角形、底辺の長さが1である三角形、高さが1である三角形を書いてみると次の図のようになる(この図の三つの三角形は互いに相似である)。
これらの図に、三平方の定理(ピタゴラスの定理)すなわち$\left(底辺の長さ\right)^2+\left(高さ\right)^2=\left(斜辺の長さ\right)^2$を適用すると、以下の式が導けるこういう式を「新しい公式だ!」と単に覚えようとするのではなく、三平方の定理という「おなじみの式」の1つの変形なのだ、という事実も含めて頭の中に(図と関連付けて)整理しておこう。バラバラに覚えた「公式」はすぐに忘れてしまうが、相互につながりを持って認識された知識は、なかなか忘れない。。
三角比と三平方の定理の式
cos2θ | +sin2θ | =1 |
1 | +tan2θ | =1/(cos2θ)=sec2θ |
cot2 | +1 | =1/(sin2θ)=cosec2θ |
次に、任意の角度でのsinとcosを以下の図のように定義しよう。ここまでで動かしてみてθという角度の意味はからに向かう方向を表すものであることがわかったと思うので、ここからはを固定して、斜辺にあたる角度の変わる部分の長さを1に固定して考える。
まず、sinθの方だけを考えることにしよう。
以上で図に描いたように考えることでθが$0<\theta<{\pi\over 2}$でない時も$\sin \theta,\cos \theta$が意味のある量となる。具体的には、下の図のように座標原点に一端を置いた長さ1の棒(これは直角三角形の斜辺を1に固定したことに対応する)をx軸からどれだけの角度回したか、という変数としてθを定義して、棒のもう一端のx座標を$\cos \theta$、y座標を$\sin\theta$と定義するのである。
こうすればθは$2\pi$も超えて$\infty$まで任意の角度を取ることができる。θが$2\pi$を超えた時は、上右の図のように、棒が何周も回ったと考えればよいのである。また、右の図に描いたように、「負の角度」に対しても定義できる。
こうして、任意の実数に対して$\sin \theta,\cos \theta$を定義することができた。グラフで表現すると次のようになる。
三角関数のうち$\sin\theta,\cos \theta$以外の他の4つ($\tan\theta,\sec\theta,{\rm cosec}~\theta,\cot\theta$)に関しては「定義できない値」がある。たとえば$\tan\theta={\sin \theta\over \cos \theta}$は$\cos \theta=0$となる場所では定義できない。
次に、sinθとcosθを同時に表示してみよう。さっきはθは任意の角度にしておいたが、今度は-πからπまで(-180度から180度まで)にしておく。
三角関数の「公式」として、
sin(θ+π)=-sinθ
cos(θ+π)=-cosθ
というものがある。この式がなぜ成立するか、は下の図でしばらく遊んでみればわかるのではないかと思う。
図のの部分の薄い色になっているの方が、θよりπラジアン(180度)大きい角度の場合の「長さ1の棒」になっている。sin,cosがπ足されることでどう変化するかを、図から読み取っていけば、公式が作られる(この公式は式として覚えようとしなくても、意味を考えればすぐにわかる)。
前ページ同様によくでてくる三角関数の公式として、
sin(θ+ | π 2 | )= cosθ |
cos(θ+ | π 2 | )= -sinθ |
がある。これも下の図で遊びながら理解して欲しい。
これが分かれば、
sin(θ- | π 2 | )= -cosθ |
cos(θ- | π 2 | )= sinθ |
の方も理解できるだろう。
あと一つのよく使う三角関数である$\tan\theta$についても$\sin ,\cos $同様、長さ1の棒を使っての定義とグラフを書いておこう。$\tan\theta$は${高さ\over \scriptstyle 底辺の長さ}$と定義したから、「底辺の長さを1にした時の高さ」と考えればよい。よって下の図左側に描いたように、底辺を1にして、(つまり、棒の長さをそれに応じて変えつつ)角度θを変化させ、その時の三角形の高さを$\tan\theta$とする。ただしこの手順では「棒」が左を向いた時には(図で点線で表現したように)斜辺を逆に伸ばして三角形を作る(こうすることでちゃんと$\tan\theta={\sin \theta\over \cos\theta}$が成立するようになる)。
上でも述べたように、$\tan\theta$は$\theta={\pi\over 2}+n\pi$(これは$\cos\theta=0$となる場所)では定義できない。同様に${\rm cosec}~\theta={1\over \sin\theta}$は$\theta=n\pi$では定義できず、$\sec\theta={1\over \cos\theta}$は${\pi\over 2}+n\pi$では定義できない。
これらの定義から、nを整数として「θに$2\pi$を何回足しても、すなわち棒を一周あるいは複数回だけ回しても、$\sin \theta$や$\cos \theta$の値は変わらない」ということ
\begin{equation} \sin (\theta+2n\pi)=\sin \theta,~~~ \cos (\theta+2n\pi)=\cos \theta \end{equation}および、「θにπを何回足しても、すなわち棒を半周もしくはその整数倍回だけ回しても、$\tan\theta$の値は変わらない」ということが結論できる。
\begin{equation} \tan (\theta+n\pi)=\tan \theta \end{equation}ところで、θから$\cos \theta$や$\sin \theta$を「計算」するにはどうしたらいいだろう?---たとえば角度θが${\pi\over 6}$(30度)、${\pi\over 4}$(45度)などの「三角比のわかる角度」であれば、$\cos {\pi\over 6}={\sqrt{3}\over 2}$とか、$\sin {\pi\over 4}={\sqrt{2}\over 2}$などと計算できる。では例えば$\sin 1$(1ラジアンの角度に対する$\sin$)はどう計算しよう??---すぐに思いつく方法は「斜辺1メートルで角度1ラジアンの直角三角形を一個描いてみて、高さを(物差しで)測る」というものだ(測った後で、表を作っておけばよい)。電卓でsinやcosなどのキーを押すと$\sin 1$だろうが$\cos 100$であろうが答が出る(ちなみに、$\sin 1 \fallingdotseq 0.841470984807897,\cos 100\fallingdotseq 0.862318872287684$)が、それはどうやって計算しているのだろう(誰かが測ってくれた表があるのか??)---この疑問の答は、ずっと先で出てくる「テイラー展開」という計算法を知ることによって与えられる。
sin0.1 | =0.099833416647 |
sin0.01 | =0.009999833334 |
sin0.001 | =0.000999999833 |
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。