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「どこでもドアを科学する」

  

[問い1]  ドラえもんの「どこでもドア」はいろんな物理法則を破っているように見える。例えば、のび太(体重40kgとする)が海岸(標高0メートル)から、富士山の山頂(標高3776メートル)までどこでもドアを使って登ったとする。この時、のび太はそれだけの位置エネルギーを得ていることになる。これは、エネルギー保存則を破っているように見える。のび太はどれだけのエネルギーを得たことになるか。(位置エネルギー[J]=質量[kg]×重力加速度(9.8$m/s^2$)×高さ[m])

  

[問い2]  エネルギー保存則が破れるということは、どこでもドアを使って永久機関(つまり、エネルギーをいくらでも取り出すことができる機関)を作ることができる。どこでもドアを使った永久機関を設計せよ。

  

[問い3]  上の話で、実はエネルギー保存則は破れていなかったとする。その時は、その分どこかでエネルギーが減らなくてはいけない。そのエネルギーがのび太から得られたとすると、のび太はそのエネルギーを取り戻すために何カロリーの食事をとればよいか。また、もしその分のび太の体温が下がるとしたら、何度くらい下がるだろうか(1カロリー=4.2ジュール)。また、この場合、さっき設計した永久機関は動くだろうか。

  

[問い4]  どこでもドアを入る前と入った後で、物体の速度が変化しない(運動量が保存する)としたら、実際に使用する際に、どんな不都合が起こりそうか。たとえば、日本からアメリカに旅するとどうなるか。

  

[問い5] どこでもドアが物体の速度を変えないとすると、地球上で使うと地球の回転速度が場所によって違うため、地球のある場所からある場所に行くと、どこでもドア に入る前は小さい速度で動いていた物体も、ドアを出た後は地球に対して大きな速度で動く。 ¥BEGIN{WRAPFIGURE}{R}{3CM}
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これを使うと、右の図のような方法でエネルギーのいらない風力発電ができそうである(地球の反対側に空気を送ると、地球の回転の分の強風になり、風力発電ができる)。しかし、エネルギーは保存するので、発電できた分のエネルギーがどこかで減っているはずである。何のエネルギーが減っているのだろうか。

  

[問い6]  前の問題と違って、どこでもドアに入った時と出た時で、「ドアに対する速度」が変化しないとする(日本からアメリカに行っても、時速4キロで歩いて入ったら時速4キロで出てくるとする)。どこでもドアがこのような設計になっていれば、それは運動量保存則を破っていることになる。これを使って何かを噴射することなしにどんどん加速するロケットを設計せよ。

  

[問い7]  どこでもドアは他に、どんな物理法則を破る可能性があるか。あるいは、上以外にどんな面白い利用方法がありそうか、考えよ。



Masahiro Maeno 平成14年4月12日