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初等量子力学(2004年)試験

 

*プランク定数h、¥hbar=(h/2π)、光速度c、素電荷eなどは解答に使用してよい。

*計算の過程も解答用紙に書くこと(公式覚えてきて書いただけでは点はやれないし、途中が書いてないと部分点もあげられない)。

以下の問いのうち、4問を選択して答えよ。5問以上答えた場合は点数のいい方から4問分を集計して得点とする。

 

[問い1]  以下の各問いに答えよ。

(A) 波動関数 ψ(x,t)=A e^ikx-iωt が粒子を表しているとすると、その粒子の持つ運動量(h÷(波長))とエネルギー(h×(振動数) )はどれだけになるか。
(B) これから、この関数の前では運動量とエネルギーは微分演算子で表せる。どのような微分演算子か。
(C) 波動関数の持つ物理的意味は何か。
(D) 電子などの物質粒子が自由に動き回っている場合、運動量とエネルギーの間にはE=(p^2/2m)の関係がある。この場合、kとωにはどのような関係があるか。

 

[問い2] 1次元の長さLの領域の中を、質量mの粒子が行ったり来たりしている。壁では弾性衝突し、壁以外では等速運動しているとする。この時、

(A) 次元解析から推測する。
(B) 不確定性関係から推測する。
(C) ゾンマーフェルトの量子化条件¥oint p dq =nhを適用する。
(D) この粒子をド・ブロイの物質波と見て、両端で固定端反射していると考えて波長を計算する。

の4つの方法でこの粒子の取り得るエネルギーの最低値を計算せよ(「推測する」とある項目については、正確な答えが出なくても差し支えない)。それぞれどのように考えて解答を出したか、過程もちゃんと書くこと。

 

[問い3] 光の量子性によって起こる(古典的電磁波と考えていると起こらない)と思われる物理現象を、あなたの知っている限り挙げ、それぞれの現象について、どの点にもっとも量子性があらわれているかを述べよ。

「いくつ書けばいいんですか?」という質問があったので、「知っている限り」は訂正して、「2〜3個程度でよい」ということにした。

 

[問い4] -π < x <πという範囲で表される円周上に発生する波(f(-π)=f(π)という周期的境界条件を満たす)は f(x)={1/2}a_0 + ¥sum_{n=1}^∞ a_n ¥cos nx + ¥sum_{n=1}^∞ b_n ¥sin nx のように三角関数の和で表すこともできるが、 f(x)=¥sum_{n=-∞}^∞ A_n e^{inx}

のように指数関数の和で表すこともできる。

(A) 関数f(x)が与えられた時、a_n,b_nを求める式を作れ。
(B) a_n,b_nをA_nを使って表せ。
(C) 関数f(x)が与えられた時、A_nを求める式を作れ。

 

[問い5] 電子の換算質量をmとし、電子が水素原子核(静止していると考えてよい)の回りを円運動していると考える。速さをv、電子=陽子間の距離をrとして、クーロンの法則の比例定数をkとして以下の問いに答えよ。

(A) 古典力学の運動方程式だけで運動が決まるとすると、rが任意の値を取れてしまうことを説明せよ。
(B) rに制限を加える条件とはどのようなものか。
(C) そのように半径が制限された結果、電子の持つエネルギーはどのような値を取るのか。

 

[問い6] 電子を使ってヤングの実験をしたとすると、電子を波と考えた場合の波長λを使って{Lλ / d}で表せる幅の干渉縞ができる。これは光と全く同様の結果であり、一個の電子が両方のスリットを波の形で同時に通過していると考えなくては干渉が説明できない。そこでどちらを通過しているのかを測定してみたいと思ったとしよう。電子の質量をm とし、スリットに入る前は速度vで真横に進んでいたとして、以下の問いに答えよ。

(A) スリットの幅をdとする。電子がどちらを通ったかを測定するために、横から光をあてて反射を調べるとする。光の波長がd より短くなくては、電子がどちらを通ったか判定できない。この光は最低でもどの程度の運動量を持つか。
 ここもわかりにくいと質問が来たが「横から光をあてて」の「横」というのは電子の進行方向と直交する方向、という意味でした。
(B) スリット通過時に電子に光があたったことにより、電子は光が持っていた横方向の運動量の一部(どれだけであるかは実験するたびに違う)をもらってしまうので、電子の横方向の運動量に不確定性が生じる。スクリーンまでの距離をLとして、これにより電子の到達場所がどの程度ずれるかを概算せよ。
(C) 前問の答えを、光を使って場所を調べない場合にできる干渉縞の幅と比較せよ。この結果、光を使って場所を調べた場合の干渉はどのようになると考えられるか。

 

[問い7] かってニュートンの時代にも「光は波なのか粒子なのか」が論争になっていたが、その時は以下が光が波である証拠とされた。

 光は空気中から水中に入ると方向を変える。これは光が粒子であるならば、水面のところでこの粒子に力が働くという「 引っ張り込み」現象だと考えることができる。一方波であるならば、図の空気中でAからBに波が進む間に水中ではCからDまでしか波が進まないということが原因で起こる、「 屈折」であると言える。屈折なら水中の方が光は遅くなり、引っ張り込みなら水中の方が速くなる。実際には水中の方が光は遅くなる。

電子波の場合も、真空中から物質中など、位置エネルギーの違う場所に入射した時に屈折を起す。電子の波が上と同じように屈折したとすると、境界面より上の方が速いのか、それとも下の方が遅い速いのか、考察せよ。
 上の消した箇所も間違えていた。「上の方が速いのか、それとも下の方が遅いのか」じゃあ、どっちも同じじゃん。

(ヒント1:波の速度は2種類あるので両方について考察してみよう。)

(ヒント2:境界面の上下で、角振動数ωは等しいが、波数kは違う。その違いは、境界面より上では位置エネルギーV、下では位置エネルギー0であることから計算できる。)

 

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