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第1章 はじめに---なぜ相対論が必要なのか?(承前)

1.2 電磁気学での「絶対空間」(承前)

磁石とコイル、二つの運動

もう一つ、アインシュタインが疑問としたのはおなじみの電磁誘導をどのように解釈するかである。アインシュタインの考察した現象とは少し違うが、以下のような現象を考えよう。磁石にコイルを近づける(右図)、あるいはコイルに磁石を近づける(左図)、このどちらを行ってもコイルには電流が流れる。この二つの現象は、「相対的に」考えるならば、全く同じものである。というのは、左図の状態を、コイルと同じ速さで同じ方向に動いている人がみれば、まさに右図の状態が見えるはずだからである。しかしこれがどのように起るか、という解釈は同じではない。

起電力発生の二つの解釈

 右図の場合であれば、それはコイル内の磁束密度が時間変化するということからくると解釈される。すなわちMaxwell方程式のROTE=-∂B/∂Tにしたがって、磁束密度が変化している場所には電場の渦が発生していて、その電場によってコイル中の電子が力を受け、電流となる。よく知られているように、この時に発生する電位差は、ファラデーの電磁誘導の法則V=-∂Φ/∂Tによって求められる。ここでΦは回路内をつらぬく磁束であり、Vの符号はΦに対して右ネジの向きに電流を流そうとする時にプラスと定義される。

【問い1】 ROTE=-∂B/∂Tから V=-∂Φ/∂Tを導け。

 両辺を回路全体で面積積分して、ストークスの定理を使って左辺の積分をEの外周での線積分に直せばすぐ出る。

この時に起こっていることはあくまで「磁束密度の変化→電場の発生」という現象である。

では左図はどう解釈されるか。この場合は各点各点の磁束密度は変化していないので、電場などは発生していない。しかし、磁場中を電子が運動すると磁場とも運動方向とも垂直な方向にローレンツ力を受ける。この力は電子がコイルをぐるぐるとまわすような方向に働くので、電流が流れる。つまりこの場合、電場などは発生していないが、磁場によって電子が力を受けることによって、電位差が発生したのと同じ効果があらわれて電流が流れていることになる

【問い2】この考え方で、電子に働く力を計算し、電子が回路を一周する間にこの力がする仕事を計算せよ。この仕事を単位電気量あたりに直したものが、V=-∂Φ/∂Tと等しいことを導け。
 まずローレンツ力の公式F=qv×Bを使う。Bはほぼ上を向いているが、完全に上を向いてたら電子の運動方向と同じだからv×B=0で力は0になる。そこでBが上向きからθ傾いているとすれば、働く力の大きさはevBsinθとなる。この力のもと、電子が回路を一周すれば、回路が半径rの円だとして、仕事の大きさは2πrevBsinθ。単位電荷あたりにすればV=2πrvBsinθとなる。
 磁場が上向きからθだけ傾いているということは、下にvだけ動いた時、さっきまで回路を通ってなかった磁束が回路内に入ってくることになる。その新しく回路内に入った磁束は、円周2πrに、vsinθをかけた面積の間に入っているだろう。よってこの時間の間に増えた磁束は2πrvBsinθ。これはVに等しい。これで大きさが等しいことがわかったので、後はフレミングの左手の法則を使って電流の流れる向きを考えて符号が正しいことを示せばよい。

どちらで計算しても、流れる電流は同じになる。このように、同じ現象のように見えるのに、違う物理法則によって起っているかのごとく、説明が2種類ある。これはアインシュタインにとっては受け入れがたいことであった。アインシュタインによる特殊相対性理論の最初の論文のタイトルは「運動する物体の電気力学について」(Zur Elektrodynaik bewegter Korper)という、どちらかというと地味なものであるが、それはこのような電磁気に関する疑問から話が始まっているからである。

以上のように、相対論の目指すことは、「どんな立場で見ても物理法則は同じである」ということである。動いている場合と止まっている場合は区別できず、「動いている時のための物理法則」を別に用意する必要はない。前節でみたように、力学の法則はそうなっているが、電磁気の法則はそうなっていない。

そこで、「力学的に見ても電磁気的に見ても、絶対空間が存在しないような理論はどんなものか?」という問いが生まれる。今回は理論的な興味にしぼって話をしたが、実験的にも電磁気学に絶対空間が存在しない(少なくとも、感知できない)ことがわかっている。電磁気学から絶対空間を消すことが必要なのである。そういう意味で、電磁気学は相対論なしには不完全なのであって、上の疑問はなんとかして解決されねばならない。

19世紀末頃に「エーテル」という光の媒質を探していたんだが見つからなかった。 つまり、「運動しながら見ても光の速さは変わらない」という不思議な現象が発見されたということになる。

音だと媒質があるから、絶対空間が何かがわかっちゃう、ということでしょうか。
そうです。音だと、自分が音を出してみた時に、まわりに均等に広がったら風が吹いてない、つまり媒質である空気が動いてない、と判断できます。逆に左に行く音の方が右へ行く音よりも速かったら、左に風が吹いているな、とわかります。ところが、光の場合でそういうことがあるかな、といろんな実験してみたんだけど、そういう現象は起きない。19世紀終りごろにそういう実験たくさんやって、どうやら光の媒質の「風」が吹いているというようなことはなさそうだ、おかしい、ということで、その後に相対論が登場することになりました。

具体的にどのように相対論がこの疑問に答えたのかはこの講義の中で明らかにしていく。とりあえずここまででわかるように、その理論は動きながら見ると磁場が電場に見えたり、その逆が起こったりと電場と磁場をまじりあわせるような、そういう理論になる。しかし最終的結果はそれだけにとどまらない。電磁気学から絶対空間がなくなるように理論を修正すると、結果として力学も修正されてしまう。それどころか、物体の長さを測る尺度というものが観測している人の状態によって変化しなくてはいけないことがわかる。具体的には「運動しながら見ると(あるいは物体が運動すると)物体が縮む」のである。さらに、相対性理論は「絶対空間」のみならず「絶対時間」も否定することになる。立場が違えば時間すら、同じものではないことがわかったのである。「運動していると時間が遅くなる」という結果も出るし、「ある人にとって同時に起こったことが、別の人にとっては同時ではない」ということも起こる。

よくSFなんかで出てくる、宇宙船に乗って旅して帰ってくると年を取ってないというのは、この話なんですか。
その通りです。「SFに出てくる」って言うより、現実としてそういうことがあるから、SFでも使われているということです。もっとも、SFに出てくるみたいに何年も年齢がずれるようになるためには、今の技術じゃ作れないような、ものすごく速く飛ぶロケットじゃなくてちゃだめです。今のロケットでは、ナノ秒とかの単位でやっと測れる程度しかずれません。

具体的にどのようにしてこのような(一見)不思議な結果が出てきたのかは後で詳しく述べる。ここまでの話を聞くと、ずいぶんおかしな、突拍子もないことをやっているように思えるのではないかと思う。しかし実際には、相対論ができあがる過程は非常に確実なものであり、一歩一歩理解していけば難しいところも論理の飛躍もない。ちゃんと講義を最後まで聞いていけば、あなた方も16才のアインシュタインの疑問に答えることができるはずである。今回だけ聞いて「わからない〜」と根をあげないように。

ほんとはここまでが第1回、という予定だったので、第1章はこういう終り方になってます。

 

第2章 座標系の変換と運動方程式

第1章の前半では、力学の法則が相対的であること、つまり絶対空間が存在しない(少なくとも、感知できない)ということを説明した。この章では、そのことを数式を使って考えていく。そのために、座標系の変換ということについて勉強する。

物理を記述するにあたって、座標系は大事である。というより座標系を置かないと何も始まらない。相対性、すなわち「見る立場が違っても物理法則は変わらない」ということは数学的言葉を使えば「座標系を変換しても物理法則は変わらない」と表現できる。よって相対論を理解するには、座標系を変換する(ある座標系から別の座標系に移る)ということの意味を理解することが必要である。ここでは相対論以前のニュートン力学の範疇において、座標変換と力学の法則の関係を整理しておくことにする。

2.1 座標系と次元

座標系というのは、物体の位置を指定するための道具である。特に相対論では、4次元、すなわち4つの座標を使って運動を記述するということが大事になる。「次元」という言葉はずいぶんいろんな意味に使われていて(「その式、左辺と右辺で次元が違うじゃないか」「3次元空間で考えましょう」「そんな次元の低い話はしてないんだよ!」全部、意味が違うのに「次元」という同じ言葉が使われている)、一般社会においては「4次元」という言葉は特に謎めいたイメージを持たされている。しかしここで言う「次元」というのは「いくつの数を指定すれば系の状態が決まるか」という意味であって、それが「4」であるということは、別に不思議なことではない。例えば待ち合わせをする時、「じゃあ、生協食堂前で会おう」では待ち合わせはできない。かならず「何時に」ということも決めるはずである。「生協食堂前」を指定するのに数字を使うとしたら、3つの数字が必要である(例えば、「北緯何度、東経何度、標高何メートル」。あるいは「ここから東に何メートル、南に何メートル、下に何メートル」)。これに時刻を足して4つの数字を指定して始めて待ち合わせが成立する。つまりこの場合必要な数字は4つ。これを「4次元」と言う。「空中に浮いて待ったり、地面に潜って待つことなどありえないのだから高さや標高は省略してよい」と考えると次元は一つ減って3次元になる。ただしこの場合1階と2階で互いに待ちぼうけを食わされる可能性がある。

4次元時空の図 物体の位置だけを問うのなら、3次元でいい。ニュートン力学の世界では、3次元空間と1次元の時間は完全に切り放されて、別個に存在している。相対論的世界では、空間と時間の間に少し関係が生じてくる。そのため、相対論の話をする時には4次元的記述が好まれる(と、今言ってもわからないだろうけどれど、授業が進むにつれてわかってくるはずである)。

以上のように、4次元と言っても別に怖いものでもなんでもなく、物体の位置と時間を指定するには4つの座標が必要だ、と言っているだけのことである。我々の住んでいるこの宇宙は3次元空間+1次元の時間で、「4次元時空」と呼ばれる(「3+1次元時空」という呼び方をする人もいる)が、「4次元」と言われただけで不必要に緊張する必要はない。たまにいるのだ、「4次元ってのはものすごいことなんだ」と思い込んでいる人が。そういう人はこの話をきいてがっかりするようだ。

座標の取り方はいろいろあるが、ここでは一番簡単な直交座標、すなわち互いに垂直な空間軸x,y,zをとることにしよう。これに時間tをあわせて、座標は4つ(x,y,z,t)である。ある一つの物体の運動は、この「4次元時空」の中の線で表されることになる。図の「ある時刻のある粒子の位置」を表すには4つの数字が必要だということである(図ではz座標を省略している)。なお、「ある時刻の宇宙」はこの4次元時空のうち、t=(ある一定値)に限った部分ということになる。ほんとは3次元分の広がりがあるが、図ではz軸が書かれていない分、2次元の面のように描かれている。この面を「面のようだが3次元分ある」ということで「超平面」(hyper surface)と呼ぶ。

2.2 1次元空間の座標変換

簡単のため、まず空間座標はxだけ考えて、y,zは無視して考えることにする。つまり1次元空間、時間を合わせて2次元(1+1次元)時空である。1次元での空間座標はx一つで、どこかに原点を選び、あとは軸の向き(1次元なので左か右か二つに一つ)を選べば、原点から軸の正の方向に何メートル行った場所か、ということで位置を指定できる(ここでは「メートル」と書いたが、もちろん「フィート」でも「尺」でも「オングストローム」でも「光年」でも支障はない)。

座標系のシフト

まず簡単な座標変換として、原点の移動を考えよう。新しい座標系x'系の原点が古い座標系x系で表してx=bという場所にあるとする。座標系の向きと目盛りの幅は同じであるとすると、この二つの座標系はx'=x-bという関係で結び付いていることになる。この場合、二つの座標原点は互いに運動していない。x'座標系の原点はx座標系の原点よりも右(つまり、正の方向)にあるのだが、式の上ではx'=x-bと引き算される形になっている。この式になっていると、x'=0がx=bに対応するのだからもちろんこれでいいのだが、勘違いしてx'=x+bとやってしまうことが多いので注意しよう。

ガリレイ変換 次に座標の原点自体が刻一刻と等速度vで移動している場合を考える。この場合、b=vtと考えて、

x'=x-vt

という変換則に従っている。この座標系x'は、いわば速度vで走る電車の内部の座標系である。電車内でみると静止しているx'=0という点は、外からみると、x=vtで表される、等速運動して移動している点に見える。

電車に結び付けられた座標系

ここであげた式ではt=0でxとx'の原点が一致しているとしたが、もちろん一般には一致する必要はなく、 x'=x-vt-b でよい。この形でもx'座標系の原点がx系でみると等速運動しているという点は同じである。

この時、x系とx'系で、時間は変化しないと考えられるので、

t'=t

である。あたりまえのことのようであるが、これは重要な(後で変更をせまられることになる)式である。

このような互いに等速で運動している座標系間の変換をガリレイ変換と呼ぶ。

2.3 速度、加速度のガリレイ変換と運動方程式の不変性

さて、「電車内でも外部でも同じ物理法則が成立する」ということを、今考えたガリレイ変換と力学の法則を使って確かめよう。

ニュートンの運動方程式は(1次元であれば)

m(d^2 x/dt^2)=F

と書ける。ガリレイ変換の一般式x'=x-vt-bという変換式を微分していくと、

xとx'を微分していく

となるから、運動方程式の形はx系でもx'系でも変化しない。つまり、互いに等速運動している二つの観測者は、どちらも同じ運動方程式を使って運動を記述できることになる。運動方程式に加速度という「速度の変化」だけがあらわれていることから、当然の結果である。

二つの座標系で、同じ運動を記述してみる。x系とx'系は原点が一致しているものとする(上のb=0)。今x系で時刻t=0に原点に静止していた質量mの物体に、力FをΔtの間加え続けたとする。x系およびx'系で成立する運動方程式は

F= m{d^2 x'(t)¥over dt^2}‾‾または‾‾ F= m{d^2 x(t)¥over dt^2}

と書ける。これをtで2回積分すると、

x(t)= {1¥over2}{F¥over m}t^2 +C_1t +C_2

となる(C_1,C_2は積分定数)。

x系で考えるならば、x(t)の初期値(平たくいえばx(0))は0、初速度(dx(0)/dt)も0であるから、C_1,C_2はともに零となる。

x'系での運動を考えるには、二つの方法がある。今求めた解をガリレイ変換するという方法と、x'系での初期値を用いてC_1,C_2の計算をやり直す方法である。ガリレイ変換ならば、

x'(t)=x(t)-vt = {1¥over2}{F¥over m}t^2 -vt

と公式どおりに求まる。x'系での初期値を考えるならば、x系で静止している、ということはx'系でみるとvの速さでバックしているということになるので、x'(0)=0,(dx'(0)/dt)=-vとなって、C_1=-v,C_2=0となる。結果は、上の式と同じである。

二つの結果を、x系とx'系でグラフにしてみたものが上の二つの図である。x系で見ると「静止した状態の物体が速度を少しずつ増しながら離れていった」と見える運動であるが、x'系でみると、「最初左へ走っていた物体がだんだん遅くなり、やがて止まって今度は右向きに走りだし、自分の前を通りすぎてどんどん右へと速度を増しながら離れていった」ということになる。等速運動している鈍行電車を、後から発車した急行電車があっという間に追い抜いていった、という状況である。

上のグラフで、t=t'なのにt軸とt'軸が同じ軸でないことをおかしく思う人もいるかもしれないが、t軸というのはx=0で表される線であり、t'軸というのはx'=0で表される線であることに注意せよ。つまりt軸とt'軸が同じ方向を向かないのはxとx'にずれがあるからなのである。この二つのグラフは、グラフを水平方向(x方向)に、高さ(t座標)に比例した距離だけ横にずらしていくことによって互いに移り変わる。つまり、3+1次元空間のうち、3の部分(空間あるいは超平面)を時間に応じて動かしていくという変換を行っていることになる。

先走って言っておくと、相対論的な計算ではx軸もt軸も、両方が傾いてしまうんです。

前の章で強調した、「絶対静止しているかどうかは判定できない」というのは、今示したように、互いにガリレイ変換で移ることができる座標系であれば、どこでも同じ法則が成り立っているからである。物理法則(この場合ニュートンの運動方程式)にあらわれるのは加速度であり、上のグラフでいえば、物体の運動を表す線の傾きがどの程度変化しているか、つまりは線の曲がり具合いである。ガリレイ変換は線の傾き(つまりは速度)を一定値だけ変えるが、その時間的変化量(曲がり具合い)を変えない。そのため、物理法則は変わらない。

上のグラフをよく見ると、曲がり具合いは同じであることがわかるはず。

今あなたが電車外にいて、「静止しているのは私である」という仮定のもとに運動方程式を解いて、ある物体の運動を求めたとする。しかし電車内にいる誰か別の人が「静止しているのは俺の方だ」と言って同様のことを行ったとしても、結果は同じになる。ではあなたとこの人の、どっちが正しいのか。もちろん、判定不可能である。

ガリレイ変換の物理的意味は、一つの物理現象を見る時、観測者が運動しながら見るとどう見え方が変るか、ということにある。ガリレオ・ガリレイの時代と言えば、天動説から地動説への変換の真っ最中であった。つまり、「地球が静止していると考えて天体の運動を考える」立場と「太陽が静止していると考えて天体の運動を考える」立場のどちらが正しいのかが論争の焦点となっていた。ガリレイ変換は等速直線運動どうしの変換であるから太陽と地球(円運動している)には直接当てはまらないが、地球の運動方向の変化が十分小さくなるほど短い時間で近似して考えれば「地球が静止している」座標系と「地球が運動している」座標系の変換はガリレイ変換で表せる。

学生の感想・コメントから

磁石が近づくのとコイルが近づくので意味が変わってくるのはかなり驚きました。というか、そこまで深く考えたことありませんでした。
そういうことを深く考える習慣をつければ、あなたもアインシュタインになれるかもしれない

コイルと磁石ですが、電子が動き出すということは全体のエネルギーがdU<0になるように動いているはずですが、その原動力は何でしょう?
大元のエネルギー源は当然、コイルなり磁石なりを動かす力です。電磁誘導で電流が流れたら、その分磁石の動きをじゃまする力が発生します。その力に逆らう分、余計な仕事が必要なので、その分のエネルギーが電流を流すのに使われていることになります。たとえば、磁石が止まっていて、コイルが重力で落下しているとすると、電流が流れている時は、流れていない時よりも落下してきたコイルは遅くなります(電流による力が上を向くため)。この運動エネルギーの差の分が、電流のエネルギーです。

コイルが動く場合と磁石が動く場合では、軸となる座標系が違うから式が違うのではないか。
もちろん、その通りです。問題は(相対論以前の段階では)、軸となる座標系を変換した時に、一方ではなかった電場がもう一方であらわれる、というふうになっていなかった、ということなんです。

光速に近い速さで粒子が飛んでいて、その粒子が物質中に入ると物質中の光速より速くなったりしますか?
します。原子炉から出たβ線などがそんな現象を起します。そういう状況になると、チェレンコフ光という光が出ます。

超ひも理論は10次元、というような話を聞いたことがあるが、4次元+6ということでしょうか。
そうです。6次元分、我々の目に見えない次元があると考えています。

1光年とは、光速で1年間進んだ距離のことですか?
そうです。

4次元は3次元+1次元時空と言ってましたが、それこそ自分たちの住んでいる世界なのだから、ここは4次元じゃないのかな?と思いました。
ええ安心してください。ここはまぎれもない4次元です。

先生は、質量のないものは光速で動くといっていました。それなら誰かを想う気持ちがなかなか伝わらない(伝えられない)のは、その想う気持がとても重いからなのでしょうか。なんちゃって。
いやむしろ想う気持には重さがないので、ほっておくと光速で走り去ってしまうから、なかなか一人の人にとどまらないのではないでしょうか。なんちゃって。

ブラックホールで光が曲げられた時、速くなったりしないんですか?
落ちる、というイメージでそう思うんでしょうけど、残念ながら違います。むしろ、ブラックホールの近くでは時間のたつのが遅くなるので、光も遅くなるのです。もっともこの「遅くなる」のは「ブラックホールの遠くから見ると」であって、その場所にいけば、やっぱり光の速さはcです。

日本以外では、ウラシマ効果のことを何と呼ぶのですか?
リップ・ヴァン・ウィンクル効果と呼ぶ、という話もありますが、たいてい「時間の遅れ」と味もそっけもない言い方をしてます。

いったいどれぐらいの速さなら、何年も時間を遅らせることができるのですか?
後で出てきますが、光速に対してβ倍の速さで走ると、時間は1-β^2の平方根倍、遅れます。光速の80%で走ると、時間は通常の60%の速さで進みます。

この原理と、タイムスリップとは別の話ですか?
タイムスリップと言ってもあれは小説や映画の話で、作者ごとにいろんな設定にしているから、関係ある場合もあれば関係ない場合もありますね。

光の速度を一定に保つために時間が遅れるという考え方になったと考えて良いのでしょうか?速さが一定で、距離÷時間の両方が小さくなる、みたいな。
半分正解です。ただ、光速を(矛盾なく)一定に保つには、時間が遅れるだけではだめで、他にもいろいろな現象が起こらないといけません。これも後でくわしくやります。

4次元の話はドラえもんでしか聞いたことがなかったので、どうなるか楽しみです。4次元ポケットは造れるのですか?
あうあう(;_;)。だからこの講義で扱うのは、今私たちが住んでいる、この4次元なんだってば。ドラえもんの4次元ポケットは、たぶん中では空間が4次元になってて、たくさんものが入るんでしょうね。「造れますか?」と言われたらもちろん、「造れません」。

はじめの方で空気が「密」って言っていましたが、実際にはどういうことですか?
音は空気が振動しています。振り子がたくさん並んでいて振動しているところを思い浮かべてください。左の振り子が右へ動いて、右の振り子が左に動けば、その部分は振り子の玉がつまっている状態になります。これが「密」です。この逆が「疎」で、音はこの二つの繰り返しで進みます。

地球は太陽のまわりをほんとうに円でまわっているんですか?
実際には楕円です。ただし、ほぼ円だと言っていいぐらい、きれいな楕円です。

一般化座標とか、この先使うんですか?
この授業ではあまり使いませんが、他ではどんどん使うと思います。

シュレーディンガーの猫の話をしてください。
それは量子力学の方の話でんがな。

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