ヒッグス粒子ってなあに?---「場」の歴史


「場」こそが物理的実体である

 先のページで見せた「電場」の図で感じて欲しいことは「電荷の回りにできる『何か』が伝わることで力が伝わる」という概念です。
 実は現代物理においては、全ての力がこんなふうに「場」を介して伝わることがわかってます。
 もともと「場」という考え方を物理に導入したのは、電磁誘導を発見したりして電磁気学の発展に大きな役割を果たした、ファラデーだと言われています。ファラデーはそれまで「遠隔力」(二つの物体の間に直接働く力)だと思われていた電磁力を「電場」「磁場」という「場」の変化が伝えているという「近接作用」で考えたのです。
 この考え方は、その後この電場や磁場の振動が空間を伝わるという「電磁波」が発見されたことで「正しい」ことが認められます。そして、電磁波が真空中も伝わることから、電場や磁場は何かの物質の状態じゃなく、真空の空間そのものの性質だと思われるようになりました。


 さらにびっくりすることとしては、この電磁波は「光」そのものであることもわかりました。電磁波の波長が4×10-7mから8×10-7mである時、我々はその電磁波を「光」と呼ぶのです(ちなみに、携帯電話などに使われている電波は波長が数10センチ程度)。
 マックスウェルは電磁気の法則から電磁波の速度を求めて、それが光速度になるとわかり、たいへん喜んだと言います。

 実は高校の教科書に載っている二つの数字から「電磁気学の法則の中に光が隠れていること」がわかります。というのは

光速度2ε0μ0=1

という面白い公式があり、光の速度は真空の誘電率ε0と真空の透磁率μ0で決まってしまうのです。

 電磁波は振動する電流を使って作ることができ、これはテレビ・ラジオ・携帯電話・レーダーなど、様々な科学機器で使われています。

 さて、ここで「場」の状態として、その1で考えた電場のように、動いていない場「静的な場」と、ここで考えた電磁波のような動いている(振動する)場「動的な場」があることに気づいたでしょうか。「正電荷の回りに電場ができる」という時の「場」は静的な場ですが、電磁波になっている時の場は動的な場です。
 さて、このようにして「電場や磁場が波にもなる」とわかったのが19世紀なのですが、なんとその電磁場(光)が「粒子としての性質を持つ」というのが20世紀にわかりました。

 ここで「光が粒子ってどういうこと?」って話を始めるとかなり長くなるので、「量子力学というものがあって、光は波であると同時に粒子的性質を持つとわかった」とだけ納得してもらって(納得できないでしょうけど!)先に進みます。
 以下はその3へ。