ヒッグス粒子ってなあに?---粒子は「場」のさざなみ



 全ての「粒子」は「場のさざなみ」である


 さて、量子力学により「波でもあり、粒子でもある」と分かったのは、光だけではありません。なんとこの世の(知られている限り)全ての物質がこの性質を持っていました。物質(たとえば、電子)は最初は「粒子」だと思っていたのに、波の性質もあることがわかったのです(光の場合と逆の道筋で、最終的には「波でもあり、粒子でもある」という状態に落ち着いたわけです)。

 一番身近な場は電場・磁場そして重力場(重力ももちろん、「場」で伝わるのです!)ですが、このうち電場と磁場(合わせて電磁場)は「光子」という粒子でもあることがわかっています。 全ての素粒子は「場」の波でもあるのです。
 と、言われてもなかなかピンとはこないので、これも「動く図」で説明しましょう。
 「場」というのは結局「空間の各点各点に“状態を伝えてくれるもの”があって、それが伝わってくる」というものです。そこで、あくまでもイメージとしてですが、「空間の各点各点にバネ振り子が一個ずつあって、しかもそれが互いにとなりとつながっている」という状況を考えましょう。

 下の図の●が「場」を表す「バネ振り子」です(両端の振り子は固定してあるので、色を変えてにしています)。水色の線は●と●をつなぐバネのようなもので、これが隣同士で力を伝え合います。動いていない時には見えてませんが、緑色の線は●を「原点」に引き戻そうとするバネを表しています(ただし、初期設定ではそのバネのバネ定数を0にしてあります)。
 とりあえず下の図の●を指またはマウスでつかんで(上下にしか動かせませんが、どっちでもいいので)動かして離してみてください。振動が発生し、左右に伝わっていくはずです。

ごめんなさい、あなたのブラウザはcanvasをサポートしてないようです。
N=20  運動中  

M=0

「停止/再開」とあるボタンを押すと運動を止めたりまた動かしたりできるので、●を自由に配置してから運動をさせてみてください(一直線の状態に戻したかったら「初期化」ボタンを押してください)。


 図の下にN=20とかM=0とか書いてありますが、Nは●の数です。両脇のボタンで増やしたり減らしたりできます。
 Mは緑色のバネのバネ定数と関係した数字です。最初は0ですが、M=1,2,3と増えるにつれて、バネ定数が1,4,9…と増えていきます。実はこの「M」は質量と関係した数字なのですが、その理由は後で述べます。

 上の図を動かすプログラムの中でやっていることはとっても単純で●が「原点につながれたバネ(緑の線)」と「両サイドにつながれたバネ(水色の線)」から受ける力でどう動くかを計算しているだけです。それなのに、こんなふうに「1点で起こった現象が左右に伝わっていく」という“物理”がそこに見えてきます。

 ここで一つ注意。

注意:この振動の振動方向は「架空の方向」です。現実の方向とは何の関係もありません!



 空間の各点各点に振動が、というとどうしても 上下方向の振動? などとイメージしたくなるのですが、ここで起きている「振動」は架空のもので、

 なんだかよくわからないけど、値が増えたり減ったりする量がある

という以上の意味はありません。振動と書くと「振れたり」「動いたり」するものをイメージしてしまいますが、ここでは「場」という量が時間変化しているのです。

Q:全ての物質が波ならば、どうしてその波は広がっていかないのですか?

A:一つは、後で説明する「相互作用」のおかげです。ここで見せている波は互いに影響を及ぼし合わずにただ勝手に走っていく(両端では跳ね返る)だけですが、実際の波は互いに影響を及ぼします。その影響はたとえば、「波を屈折させる」ように起こります。このあたりは後でも話します。

Q:原子核の周りを電子が玉みたいに回っているというのは嘘ですか。

A:厳密には、嘘です。実際は周りに波ができて定常波状態になってます。