「電子場」と「電磁場」が相互作用して「電磁力」が伝わるのと同様に、ヒッグス場も、他の粒子と相互作用します。ヒッグス場と他の場との大きな違いは、
と
です。つまり、宇宙のどこでも一定の値で存在しているヒッグス場は、他の場の「バネ振り子」である●に、どこでも同じような力を与えることができる、ということなのです。
×「粒子」に力を与えている(これは普通の意味での力で、粒子を「普通の方向」に動かします)
のではなく、
○「場」である●に「架空の方向」への力を与える
ということ、この二つは全く違うことに注意してください。
と、注意するのは、ニュースなどの短い時間でヒッグス粒子について説明する時、この二つをちゃんと分けて説明せずに
×ヒッグス粒子が他の粒子の邪魔をするせいで他の素粒子に質量が生まれる。
という説明をしている場合が(残念ながらとっても多く)あるからです。この文章は二箇所、間違っています。まず質量を与えるのは「ヒッグス粒子(=ヒッグス場の励起状態)」ではなくて、「ヒッグス場の真空期待値」の方です。そしてもうひとつ、ヒッグス場の真空期待値は「他の粒子=(他の場の励起状態)」の邪魔をしたりはしません。実際にヒッグス場がやっていることは、
○ 他の場が励起状態を作る邪魔をする(つまり、他の場が励起して粒子を作る時にmc2だけ余分にエネルギーが必要になるようにする)
です。できあがった粒子はヒッグス場がないときとは全然違う飛び方をしますが、(ヒッグス場からは何の抵抗も受けることなく)飛んでいきます。他からも力を受けなければ、等速直線運動します(ヒッグス場は、ブレーキをかけるという意味での「邪魔」はしないのです)。
の、緑のバネのバネ定数を0でない値に変えること(ヒッグス場が存在しなければ、緑のバネのばね定数は0です!)です。それはつまり、●の励起状態である粒子に「質量」を与えることになります。 ↑の図では、Mの初期値を40にしてあります(つまり、最初から大きな質量が与えてあります)。M=0の時と比べての「動きにくさ」を実感してください。
Q:ヒッグス場が他の粒子に質量を与えるとすると、ヒッグス場に質量与えたのは何ですか?
A:う〜〜〜ん、いい質問だけど、このヒッグス場のポテンシャルがこんな形している理由は「こうしておけばうまくいく」以外は今のところないです。いずれわかると面白いのですが…。
素粒子の質量の違いはどこから来るの?
ある素粒子の場(●)と、ヒッグス場との相互作用が強い(つまり前に書いたようなエネルギーのやりとりがよく起こる)と、その素粒子は質量が大きくなります。
もう一つ、大事なことを。「素粒子に質量を与える」のがヒッグスの役割ですが、この世界の質量の全てがヒッグス場由来というわけではありません。クォークに質量を与えたのはヒッグスですが、そのクォークが結合して陽子や中性子になる時(あるいは他の粒子になる時)に得る質量は、ヒッグスとは別の機構から来ています。