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2008.12.17

4年のゼミで
 J.J.サクライの「Modern Quantum Mechanics(現代の量子力学)」の2.6節を読んでいたのであるが。その中で、



 こんなふうに電池と接続された2本の金属パイプの中を一カ所から出た荷電粒子が通り抜け、再び合流する(もちろん粒子は量子力学的にパイプの両側に広がって通るというわけだ)。この時、粒子が(というよりは、粒子を表現する波束が)パイプ内に入ってからスイッチを閉じ、出てくる前にスイッチを開く。金属パイプの内側は等電位なので、粒子(波束)は一度も電場を経験しない。しかし、電位差のあるところを通り抜けるから、もし粒子が正電荷を持っているとすれば、上のパイプを通った奴の方がエネルギーが大きい。そのエネルギー差ΔUの分だけ、波動関数の時間発展はexp(-iΔU T)という因子がかかる分だけ違う(めんどうなのでhバーを1にして書きました)。
 これで干渉が起こるよ、ということで「後で出てくるAB効果も同様」ってなことが書いてあるのだが。。。。

 これってほんとに干渉起こるか???

 電池をつなぐと電位差が発生するというのは、電池から(コンデンサの両極に対応する)二つのパイプに電荷が運ばれるからであるが、もし上のパイプ内を正電荷が通っているとすれば、正電荷に正電荷を近づけるのだから、それだけ電池は余計に仕事をしなくてはいけないはずだ。下のパイプ内を正電荷が通っているとすれば、正電荷に負電荷を近づけるのだから、電池の仕事は少なくて済む。
 おそらく、定常状態に達するまでに電池のする仕事の差というのは、まさに電荷の位置エネルギーの差ΔUをキャンセルするものであるはずだ(トータルエネルギーは一定のはず・・・)。

 さて問題は、この電池のする仕事の差(電池のへたり具合)がマクロに観測可能な変数とみなすか(みなせるか)ということなのだが、もしマクロな変数と見なせるのであれば、この電池が「どっちのパイプを正電荷が通ったか観測する装置」として機能することになるから、波束の収縮が起こってしまって、干渉は起きない(つまり、どちらか一方が選ばれてしまったことになる)。

 マクロに観測可能な変数とみなさない(みなせない)のなら、今考えている量子力学的状態は、

|荷電粒子>×|電池>

のような直積状態と考えなくてはいけない。となると、荷電粒子の状態ベクトルが時間発展するうちにexp(-iΔU T)だけ位相差を出した時、電池の方の状態ベクトルがexp(iΔU T)だけ位相差を出す。ゆえに、トータルで位相差はなくなってしまって、
「トータル泥層さ」って何だよ>ATOK
やっぱり干渉は起きないように思える。
 AB効果の時には、外界も含めて全く力のやりとりもエネルギーのやりとりもないのに、ベクトルポテンシャルの違いで位相差が出る。この「力もエネルギーもやりとりなし」というのがAB効果の肝となる条件なわけだが、ここで考えている粒子は外部(電池)と(力のやりとりはしてないが)エネルギーのやりとりをしているのだから、粒子の部分だけ切り出して「ほら、干渉が起こる」という話に持っていくのは、どこか間違っているように思える。

 うーん、わしどっか間違っているだろうか??

 「力のやりとりはしてないがエネルギーのやりとりはしている」というところが少し怪しく感じられるが。。。。

2008.12.18

誰かの陰謀ですか?
 15日の日記でamazonに「ちゃんとわし好みの本が出たらお知らせせんかい!」と文句を言ったせいか、amazonがちゃんとお勧めしてきた。


 嗣永桃子のDVD付き写真集『桃の実』を。


 なぜだ・・・・しかもこれ、田崎さんの「統計力学<1>」を評価した人向けのお勧めなのだそうだ。

 ちなみに、この名前を最初に見た時「胴長桃子」と読んでしまって、「胴長って変な名前〜〜〜〜」と笑ってしまった。
言うまでもなく、変なのはおまえだ>わし

 それにしても、読み間違えるとちゃんと脳には「胴長」と(「胴永」ですらなく)認識される不思議よ。

2008.12.19

今日の更新
 電磁気IIの講義録、11回目。もうあと3回しかない。
 今日は同僚の先生に手伝ってもらって、超伝導による磁気浮上の実験などをしてみせつつ、反磁性・常磁性・強磁性などの話をする。

 授業の後の感想で、「反磁性」を「半磁性」と間違って書いている学生の方が正しく書いている学生より多い(;_;)。
 「半磁性がわかりました」とか感想に書かれても、おいおまえほんとうにわかっているか???と言いたくなる。

 ところで話の中でフェライト磁石を見せたりライターの炎であぶったりしつつ、「これは強磁性体だから〜〜」とかしゃべってたんだが、フェライト磁石はフェリ磁性ですよ、と同僚に指摘されてしまった(;_;)(ああしまった)。まぁ今回の授業では知っていたとしてもフェリ磁性の説明はできなかったのではあるが。

2008.12.20

★5分お待ちを
 コンビニで肉まん(関西人としては「豚まん」と呼びたいのだが)を買おうとすると、

「暖まるまであと5分ほどかかりますので…」

と言われることが多い。これが不思議なことにいつも5分で「3分です」とか「1分です」とか「10分です」とか言われることはなぜかない。
 こういうのはある程度安全係数をかけて温めているだろうから、5分ぐらいなら大丈夫かもしれない。そこで、

「きっと大丈夫だし、冷たくても文句言わないから売って!」

と言って売ってもらった。

 で、喰ってみると、、、

 おー、ほんとに冷たいじゃないか!!

 今度からは「あと5分」と言われたら素直に待とう。

 それにしても安全のための余裕はあまり取ってないんだね。

 ま、何事も実験は大事だ。
それより他人をもっと信じろよ>わし

2008.12.22

★今日の更新
 波動論の講義録、第9回。電磁気がもう11回なのに、こっちはまだ9回。月曜日にあるせいで、これを修正すべく、今週は木曜日が月曜日授業の日となっている。
 それにしても、今日の出席者12名。減ったなぁ(;_;)。今日は反射波の位相がどういう時にπずれて、どういう時にずれないか、というのを図を見せながら力説したつもりだが、なんか反応鈍いなぁ、と(実は心の中で落ち込んだ状態で)授業終わったのだが、感想見ると意外と「わかりました!」という反応がある。ちょっと不安だが、まぁよかったと思っておこう。

2008.12.24

★出前授業
 今日は名護高校に行ってきた。話の中身は「ブラックホールで何が起こるか?」ということで、一般相対論の基礎を話した(^_^;)。

 なんて書くと「テンソル解析でもやったんすか?」と思うかもしれないが、やったことは

・高さが違うと(重力ポテンシャルが違うと)時間の進み方が違うんだよ。
・時間の進み方が違うと、光の速度も違うんだよ。
・だから重力で光も曲がるんだよ。
・あまりに重力ポテンシャルが低いと、時間は止まっちゃうんだよ。
・それがブラックホールなんだねぇ。

って感じで数式抜きで、重力ポテンシャルが低いと時間が遅いんですよということを示すプログラムとかも昨晩クイックハックで30分で作っていって見せたり、前から作ってたブラックホール関係のアニメーションプログラムとかを見せながら、途中適当に「前に高校生にブラックホールの話したら、『ブラックホールって海で取れるんですか?』って質問されてねぇ。それはブラックパールじゃないのかと」などと無駄話を入れつつ語ってきた。
 なかなか楽しい生徒さんたちで、感心したりつっこんだりしながら聞いてくれて、なかなか楽しかった。

2008.12.25

★今日の更新
 波動論の講義録、第10回。これで今年の公式授業は終わり。

★非公式授業
 情報リテラシーに関する集中講義をやってて、そのうち1回で「疑似科学に騙されないために」ってのを90分しゃべった。内容は水伝やら血液型人間学やら相対論は間違っているやら。「知り合いから変な水売られそうになって反対したら喧嘩みたいになっちゃって」というような相談を学生さんの一人から受ける。うう〜む。難しい問題だよなぁ。信じ込んじゃって、しかも悪意がない人ってのはほんとに扱いにくい。

★授業しながら思うこと
 「情報リテラシー」な授業なので「君達が得られる情報の量は、私が学生の頃の1000倍になっているね」なんてことも言った。わしが学生の頃はインターネットなんて普及してなかったし、パソコン通信はあっても、ネットにある情報は少なかった。何かを調べるというのは図書館へ行くことだったが、今ならgoogle様にお願いすればたいていの情報は(困ったことには玉石混交ではあるが)手に入る。

 コンピュータの進歩で助かっているといえば、たとえば今日の授業では波束の移動のアニメーションなんてのを見せたりしたわけだが、自分が学生の時には位相速度と群速度の違いがなかなか実感できなくて困ったものだった。

 「今の学生は昔より恵まれているのに勉強さぼりおってけしから〜〜〜ん」とまぁ、頑固じいさんみたいなことをついつい言いたくなってしまうわけではあるが、「そんなに恵まれた教育環境を、教える側に立ったおまえはちゃんと活かしていると言えるのか??」と思うと少し心許なく感じたりもする。せっかく良い道具を与えられたのだから使いこなしていかなきゃいけないのは、教わる側も教える側も同じなのだ。


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