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2020.1.29

★「よくわかる熱力学」査読者募集のお知らせ

 前回予告した後また作業の遅れからおまたせしてしまっているのですが、近刊予定の「よくわかる熱力学」の査読者を募集、いや募りたいと思います(←多分、今から何年か経って読んだら「どうして募集を募ると言い直しているのだろう??どっちでもいいじゃん」という気持ちになること請け合い)。

 今回査読お願いしたいのは「よくわかる」シリーズの新刊である「よくわかる熱力学」(サポートページはこちら(まだ内容はない))琉球大学でやっている「熱力学」という講義(講義録はこちら)(リンク先に授業で配ったプリントのPDF(←プリントと言いつつ270ページある)もあり)の内容ですので、だいたいどういうものかは講義録かPDFの方を見てください。その内容をさらに加筆修正して、ボリュームアップした書籍を書こうという計画です。

 査読は、まずPDFになった書籍をダウンロードできるURLをお知らせするので、読んでいただいた後、

のいずれかの方法で前野に知らせていただき、それを元に改稿を行い、新バージョンのPDFのURLをまた査読者に向けてお知らせします。今から3月いっぱいぐらいまで(期間がたいへん短くてすみません)そのプロセスを繰り返した後に出版に向かう、という手筈になってます。


注意点

 以上、ご了解の上で、「よし、前野[いろもの物理学者]昌弘の間違いを見つけてやろうじゃないか」という、私としてはたいへんありがたいお気持ちをお持ちの方は、こちらまでメールしてください。ある程度査読者の人数が揃った時点で草稿PDFがダウンロードできるURLと、査読結果を書き込むためのscrapboxのURLをメールにてお知らせします。

2020.1.30

★「よくわかる熱力学」はどんな本になりそうか

 昨日はとりあえず募集告知を出したところで安心してしまった(そして朝起きたらもう希望者からメールがあって、いよいよ気を引き締めている)のですが、「いったいどんな本を目指しているのか」ということを書いておいたほうがいいような気がしてきたので、追加します。

 そもそも熱力学の本にはいろんな流儀があります。そもそも熱力学第2法則の表現自体、ケルビン、クラウジウス、プランク、カラテオドリといろいろあることもあって、教科書の書き方にいろんな流儀ができてしまうのは、「熱力学の宿命」なのかもしれません。

 熱力学を学習するにあたっての「攻略すべき本丸」はエントロピーなのですが、エントロピーをどう教えるかが教科書の書き方の肝じゃないかと思います。

 今回の本は、田崎晴明さんの「熱力学=現代的な視点から」に準拠しています。つまり、まず内部エネルギー$U$とHelmholtz自由エネルギー$F$を(それぞれ、力学のエネルギーの定義と同様に)「仕事を使って定義」して、その差を温度$T$で割った${U-F\over T}=S$をエントロピーと定義するというものです。この流れが少なくとも私にとっては「わかりやすい/自分でも書きやすい」流れだからです。

 この定義の仕方は何より「仕事」という目に見える力学的な物理量だけが基盤になっているところが特徴です(「熱」という目に見えない測り難い量も、$U$と$F$を使って定義される)。「よくわかる熱力学」もその特徴を活用する本にします。

 「よくわかる熱力学」のスローガンは「熱力学は力学の続きである」です。熱力学という新しい学問が始まったのではなく、力学での「仕事を考えエネルギーを考えエネルギー保存則を導き、そしてそれを使って問題を解いていく」という流れに乗っかった形で「熱力学用の<仕事>を考え、熱力学用の<エネルギー>である$U$と$F$を定義し、熱力学第1法則と第2法則を示し(←ここは導きではない)、そしてそれを使って問題を解いていく」という流れで「なるほどこうやって$U,F,S$を作るのか」ということが納得できる流れの本にしたいと考えています。

 これを書いていて気になったので、一つ追加しておきます。昨日の日記に、「これで勉強しよう」という意図で査読に参加することはお勧めしません、と書いたのですが、熱力学を全然知らない人は参加するな、という意味ではないです。「知らない人から見るとここが難しい」という指摘はとてもありがたいので。そういうわけで「よく知らない人の立場で査読するぞ」という、ありがたいお気持ちでの参加でしたら、ぜひお願いします。


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