このページは、「よくわかる初等力学」(前野昌弘著/東京図書)のサポートページです。
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◆更新記録
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物理において「力学」というのは全ての基礎となる学問であるはずである。しかし教える側も教わる側も「力学をなめている」ところが多分にあって、「まぁそんなに苦労しなくても力学はわかるでしょ」と安心していることも多い。
しかし、力学をちゃんと勉強するということはなかなかに歯ごたえのある作業である。なめてはいけない。
本来、大学で物理を勉強する前に中学理科、高校物理でも習っているはずであり、「力学を勉強する」という歯ごたえある作業はじっくりと時間をかけて行われている---はずなのに、その過程で力学の屋台骨となる概念をちゃんと理解しないままに勉強を続けていたんではないかと思われるような例もちらほらと見られる。例えば私は大学一年生に、13ページにある「確認クイズ」を必ず問うことにしている。
以下のようなものだ。
以下の文章は正しいか?---間違っているとしたら、どこが間違っているか?
(1) 相撲取りと小学生が相撲を取っている。この時、相撲取りから小学生に及ぼされる力と、小学生から相撲取りに及ぼされる力を比べると、当然前者の方が大きい。
(2) 人間が壁を殴る(これを作用とする)。すると壁は目に見えないほど小さくではあるがいったんへこみ、弾力で元に戻る。戻ってくる時に人間のこぶしにあたる。この時働く力が反作用である。
この問いを「間違っているかどうか?」という二択の問題としてみても、正解率は想像よりずっと低い。「間違っているとしたら、どこが間違っているか?」までちゃんと答えられる人はさらに少ない。 例えばあなたが「物理の大学入試問題は楽勝で解ける」という状態であっても、上の問いに自信を持って答えられないとしたら、それは「根本はわかってないけど計算はできる」だけで、まったく物理的思考方法が身についていないのである。こういう「大事な部分」をほっぽり出したままで力学の勉強をすることは無意味である。 大学等で力学を学ぶ時、「力学そのものの習得」も大事だが、実は「力学を通して得られる、物理的な思考方法(これを身につけて、更に高いところへ向かって欲しい)の習得」こそ大事であるはずだ。本書は「力学の学習を通じて物理的思考方法を身につけられるように」という方針で書いた。
特に本書は「初等力学」の本なので、他の「よくわかる」シリーズに比べても、微分や積分、ベクトルなどの数学についても可能な限り詳しく解説し、「計算ができないので物理がわからない」という状況に陥らないように配慮した(とはいえ、本書のページ数には限りがあるので駆け足の説明にはなっている。数学は数学の本で勉強はしていただきたい)。大学入学直後の学生さん(高校で物理を履修しなかった人を含む)はもちろんのこと、高校物理では飽きたらない「背伸びしたい高校生」、さらには物理に再挑戦したい方にも手が出せる本になるようにしたつもりである。本書を読み始めること自体は高校生程度でも可能であるはずである(読み終えるところまでいけば、高校生のレベルは超えている)。
この本を読み、練習問題を解き、その過程の中で物理的思考能力を身に付けると同時に「ああ物理って面白いなぁ」と思っていただければ、著者としてこれにまさる喜びはない。
★のついているネット書店には、ユーザーによるレビューがあります。
以下のようなものを4種類作成しました。クリックするとPDFがダウンロードできるので、書店の方よろしかったら使ってください。
以下に、発見されたミスを記載していきたいと思います。
これらの訂正部分のうち、数式・図版などを実際の本とほぼ同サイズになるように印刷できるPDFファイルがこちらです(ただし、簡単な文字の訂正などは含まれていません)。こちらをダウンロードして切り貼りしてくださってもよいです。
以下の間違いは第12刷で訂正されました。
以下の間違いは第11刷で訂正されました。
張力$T$の説明をつけました。
以下の間違いは第10刷で訂正されました。
以下の間違いは第9刷で訂正されました。
以下の間違いは第8刷で訂正されました。
以下の間違いは第7刷で訂正されました。
ここより下のミスは第6刷で訂正されました。
2通りの説明が可能である。(その1)重力の面に平行な成分が加速度に寄与することを考えると、加速の最初の段階では、同じ距離だけ移動した時の加速度の大きさは左の図が大きく、右の図は小さい。最終的に同じ速さまで加速するということと、面の形が上下ひっくり返っているので移動距離(道のり)は等しいということから、より早い段階で加速が行われたものほど、早く到着する($t_1$<$t_2$)。(その2)同じ道のりだけ進んだ後の速さを考えると、左図の方が下にいるから、エネルギー保存より速さは速い(運動エネルギーが大きい)。つまり同じだけの道程を、必ず短い時間で到着できることになる。