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2008.10.17

★今日の更新
 講義録。電磁気学IIの第2回。今回の授業は前期に比べ質問がよく出るようになった。その分進むのが遅いのは仕方ないかな。
 問題はこんなふうに質問が出る授業がいつまで続けられるか、だな。電磁気IIではビオ・サバールあたりから計算がめんどくさくなってくるので、脱落してしまう学生が増えてくる。しかしそれでは一番面白い時間変動する電磁場までいけない。ところで学生の質問の中に「柳田理科雄さんと知り合いというのは本当ですか?」ってのがあったが、全然知り合いではありません。そんな誤解されるような言動取ったっけ??

2008.10.20

★今日の更新
 講義録。波動論の第1回。実は授業やる前に、↓の箇所について「ツッコミでないかな?」と思っていた。


波動現象が発生する条件
(中略)

板などの片方を熱すると、熱が伝わって反対側も熱くなってくる。このような現象を 熱伝導と言うが、この現象は波動が起こる条件のうち二つは満たしている。というのは、

である。以上から(2)と(3)は満たしているが(1)を満たしていない。つまり、今温度が下がっていたとしても、まわりの温度と同じになればそこで温度変化は止まってしまう。よって熱伝導は波動にならない。

 どういうツッコミかというと、最近流行の「ムペンバ効果」を聞いたことがある奴が「先生、ムペンバ効果があるということは、温度変化にも慣性があるということではないんですか??」と質問するんじゃなかろうかと。
 幸い(なのか「残念なことに」なのか)、いなかった。
 もしいたら、この現象が「慣性」ではないということをどう説明したらいいだろうか?と悩んでいたのだが(^_^;)。もちろんムペンバ効果は慣性を意味しない。そもそも、「温度変化が勢いつきすぎて行き過ぎる」なんてことはないし。

★ところで数学用語の話
 matrixを「行列」と訳した人は誰なんでしょうな。確かに行と列があるから「行列」でとてもわかりやすい名前なんだけど、「行列」と日本語で書くと単なる「列」の意味で使うことが多いから、どうもあの「縦横に並ぶ状態」を想像しにくい。
 まぁそんなこと言えば言語のmatrixも元の意味は子宮だから想像しにくいのだが。
 そしてそれよりももっと「誰がこんな訳を?」と言いたいのはdeterminantを「行列式」と訳した人だなぁ。

★さらに物理記号の話
 マックスウェル方程式に出てくる、磁場Hと磁束密度B、なんでHとBなのか、調べてみるがよくわからない。ちなみにHの方は、「元々は地球磁場の水平成分をHと書いていた(HはもちろんhorizontalのH)が、そのうち一般の磁場もHを使うようになっちゃった」という話を前にどこかで聞いたか読んだかした事があったのだが、今「ほんとにこれでいいんだっけ?」と念のため調べてみたらどこに載っていたんだか自分でも探せない。Bに至っては、全く検討もつかん。
 ベクトルポテンシャルのAと磁束密度のBは、どっちかが先に決まってもう一方はその前後ということで選ばれたような気がする(確証はないが)。

2008.10.23

★今日の更新
 講義録。波動論の第2回。20日に1回目があったばかりなのになぜすぐに第2回かというと、ハッピーマンデー法のために月曜日がやたらと休みになるもんだから、今期は2回だけ、木曜日なのに月曜の授業をやる日があるからなのである。
 今日はちょっとゆっくりやりすぎて、高校物理の範囲しかできなかった。なんか「月曜日に授業したばっかで、また次の月曜日には授業があるし」とか思うとゆったりした気分になってしまったせいもあるが、もちろんトータルの授業回数は変わらないので(;_;)、後で苦労することになるだろうな。どうにかならんもんか、この月曜授業。

2008.10.24

★今日の更新
 電磁気IIの講義録3回目。前回「シャープペンシルの芯がネオジム磁石にくっつくのは何故ですか?」と質問が出たので、今日はシャープペンシルの芯とネオジム磁石持っていって実験して見せた。

 実は先週の段階で、「黒鉛は反磁性だからくっつくはずないだろ」と思って実験したらなんとくっついた(^_^;)。

 あちこちのメーカーの芯を買ってきて試してみると、どうも不純物(鉄?)が入っているものはそのせいでくっつくようだ。ちなみに買ってきたものの中では、Pentel Hi-Polymer AinのHBの芯が反磁性だった。
 授業では両方やってみせたが、反磁性という性質はあまり体験しないものだから、学生さんはけっこうびっくりした模様(残念ながら、授業で反磁性について話せるのはだいぶ先だが)。ちなみにリンク先に動画も置いてあるので見たい人はどうぞ(ただ、ぶつぶつしゃべりながら撮影しているのがちょっと恥ずかしい)。去年はトマトで反磁性を見せたのだが、トマトよりも動きがわかりやすい。シャープペンシルの芯は細すぎて見にくいので、いつもいろいろ貸してもらっている同僚の先生に書画カメラを借りてプロジェクタに芯を大写しにしてやってみせた。
 授業の後、学生さんの持っている芯で試してみたが、だいたい、つくか反発するかの確率は半々ぐらい。

2008.10.25

★訂正
 昨日の日記で「炭素は反磁性だから」なんて書いてしまったが、よく考えると炭素にはいろんな同素体があるのであった。「黒鉛は反磁性だから」としておかないと正確ではないと思ったので、訂正した。

★波動論に関して決断
 去年までの波動論は

(1)単振動を復習
(2)減衰振動、強制振動などで振動の微分方程式の解き方に慣れる
(3)連成振動でモードの概念に慣れる
(4)波動方程式に到達
(5)波動についていろいろ

という流れで波動を語っていたんだけど、今年は(2)と(3)はすっとばすことにする。(2)と(3)の説明に結構時間がかかって、(5)の部分が薄くなってしまうことが多いため。ほんとの事言えば、このあたりが弱い学生さんへの手当を抜きたくはないんだが。もっと時間あればいいけどなぁ。

2008.10.26

★どこでもドアで永久機関ができない理由
 前に「基礎ゼミ」という1年生向け導入ゼミで、

 どこでもドアはエネルギー保存則を破る。エネルギー保存則が破れるということは、どこでもドアを使って永久機関(つまり、エネルギーをいくらでも取り出すことができる機関)を作ることができる。どこでもドアを使った永久機関を設計せよ。

という問題を出して楽しんでいた。この永久機関というのはつまり、「ドアを上下に配置して、上のドアから落ちたものが下のドアに入って、また上に戻るようにする」というもの。
 で、この永久機関、どこでもドアがちゃんと機能すれば動きそうだが、いったいどこに論理的手落ちがあるんだろう?と思っていた(あまり真剣に考えていたわけではないんだが)。
 で、しばらく前に思いついたことが何かというと、「上と下で重力ポテンシャルが違う。ということは一般相対論的に考えると、上と下で時間の経過が違う(上の方が少しだけど速く進む)」ということから、下のドアに入った時刻と上のドアから出てくる時刻には、ズレが生じてくるのである。たとえば正午にドアを設置したとする。話しを簡単にするために上のドアは下のドアの24/23倍速く進むんだとすると、上のドアで24時間たった時、下のドアは23時間しか経過していないことになる。
 どこでもドアは、どこでもドアにとっての局所時間での「同時刻」を接続していると考えられるので、この状態で「今」上のドアから出てきた物体というのは、実は「今から約1時間後」に下のドアに入るものだということになる。つまり、どこでもドアを重力ポテンシャルに差がある場所に置いておくと、勝手にタイムマシンになってしまうのである。

 となると、これが永久機関になった(つまりエネルギーがどんどん増えた)理由は単純で「未来からエネルギーを輸送してもらったからだ!」ということになるだろう。

 よって、ホーキングの言うようにchronological protectionが働いてタイムマシンが禁止されるならば、永久機関も禁止される。めでたしめでたし。

うーん、めでたいんだろうかと、悩みながら今日の日記終わり。

2008.10.27

★今日の更新
 講義録。波動論の第3回。この8日間の間に3回授業があったわけだが、来週は祝日なので次は2週間後。うーん、バランスが悪い。
 それにしてもまた進まなかったなぁ。

2008.10.31

★今日の更新
 電磁気IIの講義録4回目。今回はアンペールの法則だったので、前に作った「ストークスの定理養成ギプス」を円形に再編成した「アンペールの法則養成ギプス」を作って説明した。



↑こんな感じ。これで何がどう説明できるのかは講義録を見てちょーだい。


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