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2009.5.7

★今日の更新
 波動論の4回目。ちょっとのんびりやりすぎてあまり進まず。複素数に関する説明、もっと前に持って行っておくべきかな。

2009.5.8

★微分記号
dx/dtを約分されてしまわないようにするにはどうすればよいか、と考えていて、ふと思いついた。「dx」で一文字だと表すために、のように筆記体でつなげて書いてしまうというのはどうだろう。「dt」は になる。微分はとなって、約分しにくくなるではないか。とかはつなげるのに苦労しそうだが(^_^;)。少なくとも黒板の上でならすぐに実行できる策である。

★タイムマシンと最小作用の原理
 Kwrazさんという方からこんなメールが。

「物理学者によるタイムパラドックス分析」は興味をひかれました。
とくに、ビリヤード球の運動に無限の可能性がでてしまい、
力学的な解の唯一性が成り立たなくなる、という部分ですが、
私は、ひとつの可能な(おそらく、最もクリアな)解答を考えつきました。
簡単に言うと、

タイムスリップがあろうとなかろうと、事象は最小作用原理を成り立たせるように進行する。

ということです。
タイムスリップがあったとして、発生可能ないくつかの(あるいは無限の)未来のうち、
最小作用原理が成り立つような事象の発生が自然に自動的に選ばれて、唯一の現実として現象が現れます。
SFにあるような、タイムスリップのその時点から因果律が崩壊して、
複数の未来が同時に発生する、などということはなく、
最小作用原理的に最適な未来がただひとつの現実として出現すると考えられます。

 面白い考え方ではあるのだが、今の物理における最小作用の原理の位置づけを考えると、ちょっと苦しいような気がする。
 というのは、古典力学においてはまさに「神聖にして侵すべからざる原理」である最小作用の原理は、量子力学では「作用=波動関数の位相」という形で「位相が極値になる運動が古典的に実現する」という「定理」に格下げされてしまうのである(このあたりのことを、こないだの数理科学の2009年5月号(リンクはamazon)の記事では書いた)。
 実際のところ量子力学では「作用が極値になるような運動」が複数個考えられるときは、それらの重ね合わせ状態が実現してしまう(けっして、「この中で特に位相が小さいのはこれだからこれを選んじゃえ」というような選択は起きない)。普通の量子力学ですらこうなのだから、タイムマシンが出てきても重ね合わせが解消されるとは(残念ながら思えない)。

 こういう(最小作用の原理→位相が極値という)考え方で最小作用の原理が定理に格下げされているところを見ると「物理法則はローカルであるべし」という考えはやっぱり正しいんだよな、と思えてくる。しかし、ローカルな物理法則だけではタイムパラドックスの問題を解決するのは苦しそうなのである。

★阪大のこんなポスター
物理の先生はいませんか!

が、うちの大学の廊下に貼ってあった。

 偶然の一致であろうが、この日記の2008年の3月15日に書いたギャグと同じネタである。
 それにしても大学院生獲得競争も激化していることよ。

2009.5.9

★今日の更新
 相対論のためのJavaアプレットに、「4次元時空と光円錐」のプログラムを追加した(Java3D必要)。3Dで「広がる光円錐」を見せることで「4次元的な感覚」になれてもらおうかと思って。

4次元時空と光円錐

 ↑こんな感じのアニメが見れます。赤いのが太陽、緑が地球で、太陽や地球の世界線を描いているつもり(時間スケールが合わないのは無視してください(^_^;))。
地球が光速に近い速度で動いているところにもつっこまないように(^_^;)。

★教員志望の学生のために
 うちの物理系の教員志望の学生さんたちを掲示板で集めて、高校物理や中学理科の模擬授業をやって品評しあう会を始めた(授業ではなく、クラブ活動的な交流会として)。

 「授業を聞いた後、批判しあう(勿論ほめるべきところはほめるんだけど)時は、友人関係や先輩・後輩の関係は忘れて、物理のプロとして遠慮無く意見を言い合おう」と言って始めつつも、果たしてどれだけやってくれるかな、と不安だったのだけど、杞憂であった。みんないろんなところを掘り下げて意見をいいあってくれて、「こいつらなかなかやるじゃん」とうれしくなった。でも疲れた(^_^;)。

2009.5.11

★今日の更新
 相対論の講義録、3回目。今日はいろいろ、面白い質問が出た。
 光円錐のプログラムはけっこう好評だったかな。
 一昨日の日記のような図を見せながら「こんなふうに地球が太陽の周りを70回か80回回ったら、人間の人生終わりです。儚いもんです」などと話す。4次元時空図というのは、なんかそういう「歴史を見通す神の目」に自分が立っているような錯覚を与えてくれるものだ。

2009.5.13

★今日の更新
 電磁気学の講義録、3回目。やっと3回目。今日は、電気力線のお絵かきアプレットを使って電場の概念を話した。今回気付いたが、ウィンドウを大きくして(1024x768サイズ)から走らせると、このプログラムはスタックオーバーフローする(;_;)。電気力線を描くプログラムが再帰を使っているからなんだが、Javaのスタックってけっこう小さいのね(;_;)。そのうち作り直そう。
 本日はみんな面白がってくれたようで、鋭い質問もたくさん出て楽しかったのだが、授業の感想の中に

こんなおもしろい現象を学べる、物理学科に入ってよかった。もっとがんばって勉強しようと思います。

というのがあったことに感激。プログラム作ったり、テキストを自前で書いたり、いろいろと準備をした甲斐があった。

2009.5.14

★今日の更新
 波動論の5回目。昨日は感想を読んで感激したが、今日は先週やったことを学生の誰も覚えていないことにショックを受ける。これもまた人生なり。
だいたい昨日のも、授業がおもしろいんじゃなく電磁気学がおもしろいんだよな(;_;)。

2009.5.15

★今日の1年生向け演習授業
 斜方投射のアプレットと、ケプラー運動のアプレットを見せながら、「リンゴと月という、全く違うように見える物体の運動が、どっちも地球の中心向けに引っ張られるという力で記述できる。こうして月でもリンゴでも同じ法則で“落ちる”ということを示したのがニュートンのえらいところ」という話をする。授業では斜方投射のアプレットを見せつつ「月の速度変化をノートに図で書いてみて」とかやってたのだが、ある程度描き終わった後でケプラー運動の方を見せて、各々の描いた図と見比べながら加速度というのを実感してもらった。
 自分で作っておいていうのもなんだが、このケプラー運動のアプレット見ていると、速度と加速度の関係がすごくわかりやすい。例えば速度と加速度が直交している時、速度ベクトルは回転するだけで速さが変化しないわけだが、そういうこともすぱっとわかる。いい時代になったもんだな、と思う。



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