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★中学生に話
息子の中学校から、「父兄の方で職業についてお話してくださる方」という募集があったので、何も考えずに○をつけておいたところ、話す羽目になった(どうせこっちに回ってこないだろうと軽く考えていたのに(^_^;))。ざっと話したのは、
・私は大学で「物理の先生」をしています。「物理」というのは皆さんが勉強している「理科」の一部にあたる分野です。
・大学の先生の仕事は大きく分けて二つあって、一つは大学生に教えることです。
・もう一つの大学の先生の仕事というのは「研究すること」です。
・「研究」というのは「勉強」とは違います。もの凄くおおざっぱに分けると、「勉強」ってのは、「誰かが調べて、もうわかっていることを知ること」で、「研究」というのは「世界の誰も知らないことを知ろうとすること」です。
・大学は勉強と研究を両方やるところなので、大学生になると4年生ぐらいから研究もやります。
・中学や高校までは、勉強というのは国語数学理科社会と常にワンセットですが、大学に入ると理学部に行くと理科ばっかり、という感じで、自分の好きなことを選んで勉強し、研究できます。
・研究なんてものをするかというと、やはり「なんでこうなっているのか知りたい」と思うような不思議なことってのは世の中にたくさんあって、それを知りたいからです(と超伝導による磁気浮上の実験を見せた)。
・不思議でしょ。始めてみた人はみんな「手品みたい」って言う。でもこれ、ほんとに種も仕掛けもありません。なんでこういうことが起こるのかは物理を勉強するとわかっちゃう。
・手品ってのは確かに面白いけど、なんでこうなるのかわからない、不思議なままっていうのは、ちょっと悔しい。手品ってのは手品そのものも面白いけど手品の種はもっと楽しいものです。
・もともと理科や科学は、「なんでこうなるの?」という疑問から始まります。「空はなんで青いの?」とか「月はなんで落ちてこないの?」とか。私は理科のそういうところが好きで勉強しているうちに、いつのまにか研究することも楽しくなって、大学の先生になりました。
・そういうわけで、これ見て「不思議だな、なんでだろう?」と思うような人は、これから理科とか、高校の物理とかの勉強をがんばってみてください。好きな物を一所懸命やるというのは、とても楽しいことですよ。
・私は自分と同じように理科が好きで大学に来た人に物理を教える、この仕事が大好きです。
ってところか。なんかえらそうな感じだが、他の父兄はもっと人生訓に富んだいい話をしてたので、実験という飛び道具使ったりした自分が少し恥ずかしかった。
でも昔から、きまじめに人生訓語るのはもっと恥ずかしくってできないんだよなぁ。
★「経路積分とは何か?」という記事の「動く」バージョン
前に数理科学という雑誌に「経路積分とは何か」という2ページほどのコラムを書かせてもらった。その時に記事ではJavaアプレットのURLを載せて、「アニメみたい人はこっち見てね」と書くというちょっとした反則(雑誌の記事としては)をした。なんでも聞くところでは数理科学さんは掲載後一ヶ月経ったらWebに載せてもいいという方針だそうなので、いっそのこと記事+アニメーションを融合してhtml化したのを作ってみた。これである。
こういうことをやってみた理由は、(最近電子書籍がニュースの種になっているけど)前々から物理の電子教科書はうまく作れば面白いものができるんじゃないのかな、と思っていたから。今回のは簡単な小文でしかないけど、「動く図」とか「ユーザの入力に応じて形を変えるグラフ」をどんどん貼り込んでいけるようなシステムを作ったら、飛躍的にわかりやすい教科書はできないだろうか。というより、そんなふうに「動画」や「パラメータが変化させられる図やグラフ」を入れるということができるようにならないと、電子書籍ってのは発展しないんじゃないかと思う(読むためだけなら、紙の本の方が有利)。
電子書籍のいいところには検索でばんばん飛んでいける、ってこともあるな、そういえば。というかむしろ、電子書籍にはシーケンシャルである必要もない。
さらに、「読む人の選択で内容が変えられる」という利点もつけられるかもしれない。「こういう人はこの本をこの順番で読め」みたいなのを目次に書いてある本があるけど、電子書籍なら最初にそれを設定したらその順で読める。物理の本だと流儀によって書き方が違う、なんてこともあるがそれも(読むときに!)選べるようにしとけばいいのだ。
まぁ後半はまだまだ先で考えるべきことかもしれないが。いつか教科書は「挿絵は動くのがあたりまえ。グラフは変数を変えられるのがあたりまえ」になって欲しいと思っている。
と、言っているわりにはまだまだたいしたものはできていないのではあるが…。
★電磁気の試験
今年はカンペ許可(A41枚自筆に限るが何書いてもよし)としておいたのだが、皆さんがんばっていろいろ書いてきていた。答案と一緒にカンペも提出してもらった。
試験ができている人は「作る作業は楽しかったが、それで覚えてしまったから試験中には見なかった」と言ってた。まぁ、こっちも作る段階で覚えてくれればと思っているのでそれはそれでいいのだろう。
面白かったのはテキストにつけておいた演習問題の解答を全部きっちり書いてきていた人か。しかし、同じ問題を出すわけないのである。こっちの人は、書いている段階での学習が十分でなかったようで、できは悪かった。
もっともユニーク(悪い意味で)だったのは、「計算用紙」とだけ書いた白い紙を持ち込んだ人である。いさぎよさが素晴らしい。これでできがよかったら伝説になっていたのだがな。
ちなみに、結果は4割が不可。追試は行うものの、たぶんそんなに多くは救えないだろう。
★こまささこ
うちの娘は前置きもなく突然に話が始まることがよくあるのだが、こないだ電話で「線形代数の質問なんだけど」の次がいきなり、
こまささこってあるやんかぁ?
だった。いったい何なんだよそれは、ときくと、回転の行列の覚え方なんだそうな。知らんわそんなもん。
★本のタイトルが変更になりました
直前でなんですが、前にお知らせした電磁気の教科書、タイトルが「入門電磁気学」から「よくわかる電磁気学」に変更になりました。
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