今日は微分の定義のお話の続きから。
${y}=f(x)=x^2$という、単純な関数の場合で傾きの計算をしてみよう(傾きの変化の様子を次のグラフに示した)。
この場合、独立変数と従属変数であるxと${y}$は${y}=x^2$という関係式を満たしながら変化するのだから、変化後も
\begin{equation} \underbrace{{y+\Delta y}}_{変化後の{y}}=(\underbrace{{x+\Delta x}}_{変化後のx})^2 \end{equation}という式が成立する。この式の右辺を$({{x+\Delta x}})^2=x^2 + 2{x\Delta x} + ({\Delta x})^2$と展開した後、元の式${y}=x^2$と辺々の引き算を行なう。
\begin{equation} \begin{array}{rrrll} & {y}&+{\Delta y}=&x^2+&2{x\Delta x}+({\Delta x})^2 \\ -)& {y}&=&x^2 &\\ \hline &&{\Delta y} =&& 2{x\Delta x}+ ({\Delta x})^2 \end{array}\label{dy2xdx} \end{equation}こうして二つの変数の変化量の間は、${\Delta y}=2{x\Delta x}+({\Delta x})^2$という関係があることがわかった。当たり前だが、${\Delta x}=0$と置くと、${\Delta y}=0$になる。
ここで、
\begin{equation} {{\Delta y}\over {\Delta x}}=2x+{\Delta x} \end{equation}となるが、この量は右の図に破線で描いた直線の傾きになる。
右のグラフに$2{x\Delta x}$と$({\Delta x})^2$を描き込んだ。これを見ると$2{x\Delta x}$は${\Delta y}$のうち主要な部分を占めていて、$({\Delta x})^2$の方は「ちょっとした修正」程度に付け足された量だという印象を受ける(図でも確認しよう)。
試しに${\Delta x}=0.01$としてみると、$\left({\Delta x}\right)^2=0.0001$になる。つまりΔxをどんどん小さくするという文脈において、$\left({\Delta x}\right)^2$は「Δxより、もっと小さい」量になっている。
${\Delta x}\to0$という極限を取っていくと(この時同時に${\Delta y}$も0に近づくわけだが)、第2項はなくなってしまって、
\begin{equation} \lim_{{\Delta x}\to0}{{\Delta y}\over {\Delta x}}=2x\label{diffxsq} \end{equation}がわかる。つまり接線の傾きは$2x$である。xが変化すると傾き${{\Delta y}\over {\Delta x}}$が変化する様子を示したのが右のグラフである。各々の場所において接線の傾きが変化しつづけている。$x<0$では傾きも負になっていることに注意しようx=0のところでは傾き0、すなわち水平な線が接線となる。しかし、図では高さ0の三角形になって見えなくなってしまうので描いていない。}。
Δxが小さい場合に2xの部分が重要であるということを確認するために、x=1として、Δxを変化させていった時の各項の様子を表にしてみると、
Δx | x+Δx | (x+Δx)2 | 2xΔx | (Δx)2 | 2x+Δx |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 4 | 2 | 1 | 3 |
0.1 | 1.1 | 1.21 | 0.2 | 0.01 | 2.1 |
0.01 | 1.01 | 1.0201 | 0.02 | 0.0001 | 2.01 |
0.001 | 1.001 | 1.002001 | 0.002 | 0.000001 | 2.001 |
0.0001 | 1.0001 | 1.00020001 | 0.0002 | 0.00000001 | 2.0001 |
のようになるΔx=1は「Δxは小さい」が成立してない場合なので、薄い字で書いた。ここで「小さい」かどうかは、大元であるところのxに比較して、Δxを小さいと言えるかどうかで判断する。1:1では「小さい」と言えないはもちろんである。。Δxを小さくするに従って、${{\Delta y}\over {\Delta x}}$は2(2xの、x=1のときの値)に近づく。つまり、「Δxが0に近づいた時の値」が2である。