自然科学のための数学2014年度第8講

 今日は三角関数の微分の続き。

ここまででわかったことは、${\theta}$が小さい(0に近い)時は、

$\sin\theta$の近似式
\begin{equation} \sin {\theta}\fallingdotseq {\theta}~~~~~より正確には、 \sin {\theta}={\theta}+{\cal O}({\theta}^3) \end{equation}

が使えることである。残りの部分が${\cal O}({\theta}^2)$ではなく${\cal O}({\theta}^3)$なのは、$\sin$が奇関数であること(つまり、$\sin (-{\theta})=-\sin {\theta}$であること)を知っているので、${\cal O}({\theta}^2)$はないからである。

では、$\cos{\theta}$の${\theta}$が小さいときの極限はどうなるだろう。$\cos0=1$であり、かつ$\cos$は偶関数($\cos (-{\theta})=\cos {\theta}$)だから、$\cos {\theta}=1+{\cal O}({\theta}^2)$であることがまずわかる。そこで、 \begin{equation} \cos {\theta}=1+a{\theta}^2+{\cal O}({\theta}^4) \end{equation} (残りの式が${\cal O}({\theta}^3)$ではなく${\cal O}({\theta}^4)$なのも、$\cos$が偶関数だから)として定数$a$を求めてみる。$\sin ^2{\theta}+\cos ^2{\theta}=1$に代入すると、 \begin{equation} \begin{array}{rl} \bigl( \underbrace{{\theta}+{\cal O}({{\theta}^3})}_{\sin {\theta}} \bigr)^2 +\bigl( \underbrace{1+a{\theta}^2+{\cal O}({{\theta}^4})}_{\cos {\theta}} \bigr)^2 =&1\\[5mm] {\theta}^2 + {\cal O}({\theta}^4)+1+2a{\theta}^2 + {\cal O}({\theta}^4)=&1 \end{array} \end{equation}

となる${\theta}\times{\cal O}({\theta}^3)={\cal O}({\theta}^4)$のような計算をしている。が、右辺は1だから$a=-{1\over 2}$になって左辺の${\theta}^2$の係数が消えなくてはならず、

$\cos\theta$の近似式
\begin{equation} \cos {\theta}\fallingdotseq 1-{1\over 2}{\theta}^2~~~~~より正確には、 \cos {\theta}=1-{1\over 2}{\theta}^2+{\cal O}({\theta}^4) \end{equation}

がわかる。同様に、

tanθの近似式


\begin{equation} \tan {\theta}\fallingdotseq {\theta}~~~~~より正確には、 \tan {\theta}={\theta}+{\cal O}({\theta}^3) \end{equation}

もわかる($\sin$の時の${\cal O}({\theta}^3)$は負だが、$\tan$の時の${\cal O}({\theta}^3)$は正である)。

これらは今後もよく使う関係式である「覚えよう」とは言わない。何度も使うから覚えてしまうはずだ。これを「何度も使わない」としたら、勉強が足りない。。これを使って、三角関数の導関数を考えよう。


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