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復習をかねてやった雑談:鉄は強磁性だけど、化合物になると強磁性じゃなくなります。血の中に入っているヘモグロビン(酸素運ぶ奴)なんて、酸素と化合してないと常磁性だけど、化合すると反磁性になります。

5.5 磁場の表現---磁束密度Bと磁場H

物質中の電場を表現するには、「電場」$\vec E$と「電束密度」$\vec D$を使った。これと同様に、物質中の磁場を表現するには「磁束密度」$\vec B$と「磁場」$\vec H$がいる。まず静電場の場合どうであったかを振り返ろう。

5.5.1 EとD

真空中では$\vec E$と$\vec D$は定数倍の違いしかない。すなわち、$\vec D=\varepsilon_0\vec E$である。では物質中ではどう違いが出てくるのであろうか?

$\vec E$と$\vec D$の違いを考える時に重要となるのは、「電荷には真電荷と分極電荷の2種類がある」とする考え方である。分極電荷は分極が起こることによって生じる電荷である。原子レベルで起こっている分極によるものだから、この分極電荷の存在は目に見えにくい(というより、ファラデーやマックスウェルが電磁気学を作っていたころは、分子や原子という物の存在すら疑問視されていた)。よって、見えやすい真電荷の部分だけを使った式を作ってみよう。

mdivP.png

全ての物質が均等に分極していれば、全体として電荷がないのと同じになる。しかし、分極の大きさに不均一性があると、その分だけそこに電荷があることになる。詳しい計算は前期のテキストを見てもらうことにして、分極による電荷の電荷密度は$-{\rm div}\vec P$と書くことができる(単純に考えれば、分極に湧き出しがあるということはそのあたりから電荷が抜け出した、ということだから、電荷密度がマイナスになるのはもっともである)。真電荷密度を&math(\rho_真);、分極電荷密度を$\rho_P=-{\rm div} \vec P$として、この二つの和が実際にそこにある電荷だと考えると&math({\rm div} \vec E= {1\over\varepsilon_0}\left(\rho_真-{\rm div} \vec P\right));という式から、

#math( {\rm div}\left(\varepsilon_0\vec E +\vec P\right)=\rho_真) という式が作られる。よって$\varepsilon_0\vec E +\vec P=\vec D$とおくことで&math({\rm div}\vec D=\rho_真);と言う式に達する。

bunkyokudenba.png

このように、実際にそこにある電場から、「分極によって作られると思われる電場」$-{1\over\varepsilon_0}\vec P$を引き、さらに比例定数$\varepsilon_0$をかけたものが$\vec D$である。「作られると思われる」であって「作られる」ではないのは、実はどれだけの電場が現れるかは誘電体の形状に依存するからである。たとえば広い平面板が板に垂直に一様に分極しているような場合は、確かに$-{1\over \varepsilon_0}{\rm div}\vec P$の電場が分極によって作られるが、長い棒が軸に沿って分極しているような時は、逆向きの電場はほとんどできない。

$\vec P$は$\vec E$と同じ方向を向くことが多い(そしてその場合、$\vec D$も同じ方向になる)ので、その場合はまとめて$\vec D=\varepsilon \vec E$と書くこともできる。

まとめるとこんなふうに考えられる。


電場と電束密度(おおざっぱな理解)

電場$\vec E$ 実際にその場所に巨視的試験電荷を置いたとするとどんな力が生じるかで定義される量。周りに物質があるとその物質の影響を受けて弱まることもある。

電束密度$\vec D$ $\vec E$から、物質の影響によって現れると思われる$-{1\over\varepsilon_0}\vec P$という電場を差し引いたもの。ただし、$\vec E$とは単位が$\varepsilon_0$倍違う。


この辺りの説明では(後の磁場に関する説明でも)、「本当に存在している電場は分子レベルでゆらいでいるのだが、観測されるのは平均化されたものである」というところの説明が少なすぎたかもしれない(あまりその辺りまでちゃんとやろうとすると説明長くなりすぎてかえってわからなくなるか、と思って外したのだが)。

ただし、誘電体がどんな形をしているか、どんな電場の中に誘電体が置かれたか、などの状況によって$\vec E$と$\vec D$がどうできるかも変化するので、上の考え方はあくまで概観に過ぎない。実際には分極は一様に存在しているわけではなく、原子や分子に付随して局在しているので、現実の微視的な電場、分極、電束密度は皆、ずっとずっと複雑である。上で「巨視的試験電荷」とことわったのは、原子レベルよりずっと大きい試験電荷を置けば、そういう原子レベルの揺らぎは平均化されて消えるからである。

このように解釈すると、$\vec D$はある意味人工的に作った場と言えるかもしれない*1。とはいえ$\vec D$をつかえば誘電体がある場合でもガウスの法則が使えるなどのメリットがある。

5.5.2 BとH

では磁場$\vec H$と磁束密度$\vec B$はどんな関係だろうか?---上と同様のまとめを先に書いておくと、


磁束密度と磁場(おおざっぱな理解)

磁束密度B 実際にその場所に巨視的試験電流を置いたとするとどんな力が生じるかで定義される量。周りに物質があるとその物質の影響を受けて強まることも弱まることもある。

磁場$\vec H$$\vec B$から、物質の影響によって現れると思われる磁束密度を差し引いたもの。ただし、$\vec B$とは単位が${1\over \mu_0}$倍違う。


である。もちろん厳密な定義は後で出す式であり、ここで述べたのは概観に過ぎない。真空中ならこの二つは比例定数$\mu_0$を除いて等しく、$\vec B=\mu_0\vec H$ である。磁性体中では、電流の作る磁場に加えて、磁場によって作られた(あるいは、整列させられた)分子電流による磁場が加えられ、「外部の電流が作るもの」以上に磁場が強くなったり弱くなったりする(物体が常磁性体・強磁性体か、反磁性体かによって変わる)。そこで、電束密度を定義する時にしたように、電流密度$\vec j$を $${\rm rot} \left({\vec B\over \mu_0}\right)=\vec j_真+\vec j_M$$ のように「真電流$\vec j_真$」と「磁化による電流$\vec j_M$」*2に分けよう*3

jM.png

↑クリックするとフルサイズで見ることができます。

では、上で分極電荷密度$\rho_P$を$\vec P$を使って表したように、$\vec j_M$を$\vec M$で表すことができないか、ということを考えよう。もし磁化$\vec M$が一様なら、その場所には電流は流れていない。というのは上の図を見てもわかるように、全体に同じ強さで円電流が流れていたら、隣同士で消し合ってしまうからである。図の右のように、$\vec M$がだんだん増加していると、隣との磁化の強さの差の分だけ、電流が残る。上の図右で言えば、紙面表から裏へ向かう磁化が右へいくほど増加していると、上向きの電流が流れていることになる。

実際の分子電流というのは、こんなふうに整然と並んでいるわけではありません。むしろごちゃごちゃとあっちむいたりこっち向いたりしています。ここで「電流0」と言っているのは平均をとった結果でのことです。

紙面の裏から表へ向かう向きをx軸として、紙面右をy軸、紙面上をz軸とすると、、$\vec M$のx成分$M_x$が増加していると、-z方向の電流が生まれる($j_z \propto -{\partial\over \partial y}M_x $)。単に比例ではなく、この場合厳密に$j_z=-{\partial_y}M_x$が成立することは、下の図を使って確認しよう。

jM1.png

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さて、以上では$M_x$がyの変化に伴って変化する時に$j_z$がある、ということを説明したが、図のように考えると、$M_y$がxの変化に伴って変化する時も$j_z$がある。しかも、その方向は今度は正の向きになる。

よって、 $$\partial_x M_y - \partial_y M_x = j_z $$ が成立する。$j_x,j_y$についても同様の(サイクリック置換した)式が成立するから、3成分まとめて考えれば $$ {\rm rot} \vec M= \vec j_M$$ という式が出る。これを使うと $$\begin{array}{rl} {\rm rot} \left({\vec B\over \mu_0}\right)=&\vec j_真+\underbrace{\vec j_M}_{={\rm rot} \vec M}\\ {\rm rot} \left({\vec B\over \mu_0}-\vec M\right)=&\vec j_真\end{array}$$ ということになる。ここで、


物質中の磁場$\vec H$の定義 $$ \vec H\equiv{\vec B\over \mu_0}-\vec M $$

と置くことで、方程式&math({\rm rot} \vec H=\vec j_真);が成立する。

以上をまとめると、静磁場の基本方程式は、$\vec B$を使って書くならば、 $$ {\rm rot} \left({\vec B\over \mu_0}\right)=\vec j_真+\vec j_M,~~~ {\rm div}\vec B=0$$ $\vec H$を使って書くならば、 $$ {\rm rot} \vec H=\vec j_真,~~~ {\rm div}\vec H=\rho_M (ただし、\rho_m= -{\rm div} \vec M)$$ である。$\rho_M$は静電場の場合の分極電荷密度$\rho_P=-{\rm div}\vec P$に対応する量である。

通常は


静電場の基本方程式 $$ {\rm rot} \vec H=\vec j,~~~{\rm div}\vec B=0$$

をもって基本法則とする($\vec j_真$の「真」は省くことが多い)。この二つの式を使うと、分子内に発生している磁極や電流が(式の上では)見えなくなるというのが一つの利点である。真電荷や真電流は測定もできるし実験者が設定することもできるが、分極や分子電流は、直接測定したり操作したりすることはできない。そのような量を(見た目だけでも)式から追い出せるというのが新しい場を定義する理由である。

実在する電場・磁場に近いするものが「電場$\vec E$」と「磁束密度$\vec B$」、物質の影響を人為的に取り除いたものが「電束密度$\vec D$」と「磁場$\vec H$」となっていて、名前と内容が整合してないように感じるかもしれない。英語では$\vec E$(Electric Field)と$\vec B$(Magnetic induction)に対して$\vec D$(Electric Displacement)と$\vec H$(Magnetic Field)なので、もっと不整合である*4。しかしこれは磁場が電流によって作られているのか磁極によって作られているのかがわからなかった時代からの名残なのである*5。最近では$\vec B$を「磁場」と呼ぶ本もあるようである。

ほんとうのところこの講義でもEとBを「電場と磁場」としてDやHは「補助場」扱いしてしまおうかと思ったのだが、やはり他の本を読む時に言葉が違うのは困るので、大勢に従っておく。

電磁気は歴史が長いせいもあっていろいろと用語に混乱がある(さまざまな単位系が混在していることがこれに拍車をかけている)が、本を読む時には混乱しないように気をつけよう。

5.5.3 透磁率

$\vec M=\chi\vec H$が成立している場合ならば、 $$\begin{array}{rl} \vec H=&{\vec B\over \mu_0}-\chi\vec H \\(1+\chi)\mu_0 \vec H=&\vec B\end{array}$$ となる。$ (1+\chi)\mu_0$をまとめてμと書いて「透磁率」と呼ぶ。透磁率は物質によって違う(χが物質によって違うから)。透磁率μと真空の透磁率$\mu_0$の比1+χを$\mu_r$と書いて「比透磁率」と呼ぶ。これらを使えば、 $$\vec B= \mu\vec H= \mu_r \mu_0 \vec H$$ とも書ける。

反磁性体や常磁性体の場合、χが1よりかなり小さいので、比透磁率はほぼ1である。強磁性体の場合は$\vec H$と$\vec M$が正比例関係にないことが多い(特に$\vec H=0$でも$\vec M\neq0$であることもある)ので、上の式を使うのは無理がある。単純に${|\vec B|\over |\vec H|}$を透磁率と定義した場合、この量は$\vec B$に依存して変化する量になる。外部磁場が小さい時はだいたい$\vec B$と$\vec H$は比例し、軟鉄の場合で比透磁率にして300程度の値となるが、その後増加し、2000〜3000ぐらい(鉄の状態によって変わる)まで大きくなる(数万の比透磁率を持つ物質もある)。しかしある程度より磁場が強くなると、磁化が飽和する影響で比透磁率はむしろ下がっていく。

5.6 例題:一様に磁化した円筒形強磁性体

entoujiseitai.png

上の説明の途中で「磁化が一定なら分子電流は打ち消す」ということを書いたが、有限の大きさの磁性体がある場合、全領域において打ち消すということではない。たとえば円筒形の強磁性体がその軸方向に一様に磁化した場合を考えよう(外部磁場はないとする)。

円筒の内側では磁化が存在するが外には存在しないわけなので、そこで磁化の大きな変化がある。そこでだけ${\rm rot} \vec M$は0でない(${\rm rot}$は微分の一種なので、$\vec M$が変化するところでは0ではない)。つまり分子電流は円筒の側面に集中して流れていることになる(もちろんこれは平均化して見ればそうなるという話である)。したがって、磁化した円筒の作る磁束密度は、有限な長さのソレノイドコイルの作る磁束密度と同じと考えることができる。

磁性体の作る磁場を、「表面に流れる円電流が作る」と考えて図に示したものが下左の図である。これは電流がつくる磁束密度を表現したものであるから、磁束密度を表す線(磁束線)は始まりも終わりもなくループする(${\rm div}\vec B=0$)。有限長さのソレノイドなので、無限に長い場合とは違って、磁場は外にも漏れていることに注意しよう。 しつこいようだがもう一度注意しておくと、実際にはこの二つのどちらでもない状態が出現している。分子電流はきれいに重なり合うわけではないから表面以外でも多少は残るだろうし、磁極と考えた場合も、天井と底面以外にも多少は残る(平均化して考えると表面や天井・底面にだけ分布していように考えてよくなる)。

jiseitaibou1.png

クリックするとフルサイズで見ることができます。

一方、磁性体の作る磁場を「天井と底に現れる磁極が作る」と考えて図に示すと右の図となる。これは静電場の場合のコンデンサなどの作る電場と相似である。ここには電流はないので、$\vec H$を表す磁力線はループすることがない(${\rm rot}\vec H=0$)。

磁性体の外(真空)では$\vec B$と$\vec H$は本質的に同じである(比例定数$\mu_0$で比例しているだけ)。磁性体内では図の上向きに磁化$\vec M$が存在している。${1\over\mu_0}\vec B-\vec H=\vec M$であるから、上向きの$\vec B$の${1\over\mu_0}$倍から下向きの$\vec H$を引いたものが$\vec M$になっている。

以上からわかるように、分子電流の影響を「磁極の集まり」と見なして、その影響を天井と底面に集約して、「磁極によって作られる場」を考えるのが$\vec H$で、分子電流を側面に集約して、「表面電流によって作られる場」が$\vec B$なのである。

Uji.png

磁化した円筒形の磁性体の内部では$\vec H$と$\vec B$は逆を向くことを見た。磁化した強磁性体の内部にできる、磁化$\vec M$とは逆向きの磁場$\vec H$のことを反磁場と言い、磁石を弱らせる一因である。このため磁石を輪状にして「極」をなくしておくと磁石は長持ちする。U字型磁石をしまっておく時に鉄片をつけて輪の形の磁石にしておくのはそういう理由である。

磁場を作るのは電流である(つまり$\vec B$が本質的)という考えがどの程度正しいかどうかを確かめるには、円筒形磁性体内部に磁場($\vec B$もしくは$\vec H$)によって力を受けるものを通して、どんな力を受けるのかを調べてみればよい。たとえば中性子(電荷はもっていないが磁気モーメントは持っている)を磁性体内に通してどのような力を受けるのかを調べる実験が実行されている。磁気モーメントを$\vec\mu$とすると、磁束密度$\vec B$の中では$U=-\vec \mu\cdot\vec B$のエネルギーを持つ(磁気モーメントは磁場と平行になりたがる)。磁場が空間的に変化していれば、$\vec F= -{\rm grad} U=\vec\nabla\left(\vec\mu\cdot\vec B\right)$の力を受けることになる。もしも磁場の方が本質的な量ならば、この式は$\vec F=\mu_0\vec\nabla\left(\vec \mu\cdot\vec H\right)$と変わる*6。磁性体中では$\vec B$と$\vec H$は完全に逆を向いているから、どちら向きに力が働くかでどちらの立場が正しいのか判定できるのである。実験では$\vec B$の方に軍配が上がっている。

5.7 媒質が変わる場合の境界条件

途中で物質分布が変化する時、その両サイドでの電場・磁場の接続条件はどのようになるだろうか。ここまでで求められた静電場・静磁場に対する物理法則は$ {\rm div} \vec D= \rho,~~~~ {\rm rot} \vec E=0,~~~~ {\rm div} \vec B=0,~~~~ {\rm rot} \vec H=\vec j $ である。ただしここの$\rho,\vec j$はどちらも分極電荷や分子電流を含まない。とりあえず真電荷、真電流もない場合を考えると、「$\vec D,\vec B$はdivが0」「$\vec E,\vec H$はrotが0」ということになる。

BHsetsuzoku.png

divが0になるようなベクトル場を考える。「divが0」ということは「任意の閉曲面で出入りが0」ということなので、境界面をサンドイッチするように閉曲面をとれば、境界面を抜ける成分(法線成分)が接続される。よって、$\vec B$の法線成分が接続される。

rotが0になるベクトル場のばあいは、「任意の閉曲線での線積分が0」であるから、やはり境界面をはさむような閉曲面をとれば、境界と平行な成分(接線成分)が接続されることがわかる。よって、$\vec H$の接線成分が接続される。

つまり、$\vec D,\vec B$の法線成分と、$\vec E,\vec H$の接線成分が接続される(ただし、表面に真電荷や真電流がある場合はこの限りではない)。

5.8 章末演習問題

以下の問題と、4章の章末問題の中から1題を選んで発表課題とします。1/11まで。

[演習問題5-1]透磁率μで無限に長い磁性体円柱の周りに単位長さあたりn巻きでコイルを巻き電流Iを流すと、磁性体内部にできる磁場と磁束密度はそれぞれどうなるか?

また、この時磁性体の磁化を、「磁性体の側面を流れている電流による」と解釈すると、単位長さあたりどれだけの電流が流れていることになるか。

[演習問題5-2]透磁率$\mu_1$の磁性体と透磁率$\mu_2$の磁性体が接触している。どちらの磁性体でも磁場と磁束密度は同じ方向を向いている。境界面には真電流は流れていない。

BHkussetsu.png
  1. 「磁力線の屈折の法則」を作れ。
  2. 磁力線は、透磁率の大きい方に集まりたがるか、小さい方に集まりたがるか?
  3. 光の屈折の場合、ある角度では「全反射」が起こった。磁力線の場合はどうか、考察せよ。

[演習問題5-3]無限に広がる透磁率μの磁性体に一様磁場$\vec H$(磁束密度$\vec B$)をかけている。この磁性体に、幅dの間隙(真空部分)を作った。間隙の境界の法線ベクトルは磁場と角度θをなす。間隙部分にできる磁束密度の強さと向きを求めよ。 特に$\theta=0$の時と$\theta={\pi\over 2}$の時には磁束密度はどうなるか?

学生の感想・コメントから

BとHの違いがよくわかった。

と言ってくれる人もいるが、

$\vec H={\vec B\over \mu_0}-\vec M$の式っていつ使うんですか?いつでも$\vec B=\mu_0\vec H$になるみたいでしたけど。

なんて言っている人もいる。なかなかすぐには理解できないか。いつでも成立するのは$\vec H={\vec B\over \mu_0}-\vec M$の方で、もしも$\vec M=0$ならば、その時だけ$\vec B=\mu_0\vec H$になります。

ピックエレキバンに血行促進効果はなかった!

鉄が強磁性じゃないからですか(^_^;)。まぁ、磁気に血行促進効果はないと思います。

磁場に人間放り込むと肩凝り治りますか?

実験的に治るという確証は何もないと思います。

一様に磁化すると電流は流れないと先生が言った時、外側に電流が流れているんじゃないかと思ったけど、やっぱり流れていたんですね。

よく気がつきましたね。質問してくれればよかったのに。

$\partial_xM_y=j_z$で$\partial_y M_x = -j_z$だったら、$\partial_x M_y-\partial_yM_x=2j_y$になりませんか?

そういうふうに足し算的に考えてはいけません。それぞれ状況が違うのです。「$\partial_x M_y$だけがある場合」に$\partial_xM_y=j_z$、「$\partial_y M_x$だけがある場合」に$-\partial_yM_x=j_z$なのです。そして「両方ある場合」には$\partial_x M_y-\partial_yM_x=j_y$です。つまり、$\partial_x M_y-\partial_yM_x=j_y$の特別な場合が$\partial_xM_y=j_z$と$-\partial_yM_x=j_z$なのです。

サイクリック置換って何ですか?

たとえば(x,y,z)という組み合わせを(x,y,z)→(y,z,x)→(z,x,y)というふうに置き換えていくことです。くるくる回している感じなので「サイクリック」と言います。

磁場の源はスピンだと思うのですが、一様に磁化した場合に円電流が打ち消し合うからと言っても、スピンが打ち消し合うのはおかしい気がしますが。

スピンは局在しているというイメージがあるので、円電流と同じような消し合いはイメージしにくいですね。今日の話はもちろん、「トータルで平均化してならして考えれば」という条件つきで考えています。授業中も言ったと思いますが、円電流だって実際には今日の図のように整然と並んでいるわけではなく、細かく見れば消えてないけど、全体で考えればなくなっている、ということです。

$\vec H={\vec B\over \mu_0}-\vec M$で、${\rm rot}\vec M=\vec j$ですが、$j_z$が正なら反磁性になるのですか?

反磁性か常磁性かというのは、$\vec M$と$\vec H$が同方向(常磁性)か逆方向(反磁性)かで決まります。そこで判断してください。

授業には関係ないけど、永久磁石と普通の磁石の違いって何ですか?

私は「普通の磁石」と言われたらそれは永久磁石のことだと思います。そして永久磁石じゃない磁石というのは「電磁石」です。

まさか宿題が出るとは思ってなくて油断していた。

出るに決まっているじゃないですか! 正月休みもあるのに。

EとB、HとDは、どのような時にどれを使った方がよいですか? 場合によるとは思うんですが。

場合によります(^_^;)。実際に両方で式立ててみて、楽そうな方を使えばよいのでは。磁場なら、基本法則は${\rm rot}\vec H=\vec j$と${\rm div}\vec B=0$なんですから、それに近い方を使っていきましょう。

自分たちは、磁場は何によってできているかとかわかるからそれを身ながら式を見て理解していくのに、マクスウェルやアンペールなどの昔の人は、そういうこと知らないのに公式まで考えたので、すごい。

ほんとにすごいですね。昔の人の苦労のおかげで、我々は今(昔に比べればずっと楽に)物理を理解することができるようになりました。

相対性理論を5次元で考えると、マクスウェル方程式に似た形が出てくるらしいですね。

一般相対性理論の場合ですね。5次元の重力の中に電磁気が入っている、という話です。残念ながら現代物理では主流でない考え方です。

強磁性体が磁化しなくなることってありますか?

いろんな条件(例えば高温とか)で強磁性がなくなることはあります。 冬休みしっかり勉強しよう(多数)

そうですね。今日の最初の復習の様子からすると、かなり危ないですね(;_;)。

先生、よいお年を!(多数)

はい、皆さんもよいお年を。


*1 (巨視的な)電場も平均化しているという意味では人工的である。
*2 なお、考えるべき電流としてはもう一つ「分極電流」というのがある。これは電気分極$\vec P$が時間変化することによって流れる電流であり、${\partial\over \partial t}\vec P$と書ける。今は定常状態のみを考えているので省略する。
*3 これまでは真空中を考えていたので$\vec H$と書いても${\vec B\over \mu_0}$と書いても同じ意味であったが、上の式は${\vec B\over \mu_0}$を使って書かなくてはいけない。磁性体中では、$\vec H$が今から定義する量に変わるからである。
*4 英語でも、$\vec B$をMagnetic Flux Density、$\vec D$をelectric Flux Densityと書く場合もある。
*5 特にElectric Displacement(電気変位)やMagnetic Induction(磁気誘導)などという用語は、電磁場が“空間に分布する物質のようなもの”と思われていた時代の名残りであって全く現代的ではない。
*6 μが透磁率と磁気モーメントの両方で使われているが、前者は数、後者はベクトルであるから区別して読むように。

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Last-modified: 2024-01-12 (金) 19:41:50