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2005.7.1

★今日の更新
 初等量子力学の講義録、第10回。今日中にシュレーディンガー方程式までいっちまうつもりだったが、やっぱり無理だった。

2005.7.2

★今日は人間ドックに行った
 尿酸値やらコレステロールやらの数値があまりよくなかったが、まぁそんなことはどうでもよくて。
 左耳だけ、高音部が聞こえにくいということも判明したが、まぁ普通の声を聞く分には大丈夫なのでそんなこともどうでもよくて。

 どっちもあんまりどうでもいいことではないが、まぁこの日記的にはどうでもいいのだ。だってそんなに面白い話じゃないし。

 と、書き出すと軽いデジャヴを感じる方もいるかもしれない。なぜなら1年前の7月3日の日記と全く同じ書き出しだからである。

 つまりまぁ、同じようなことが今日もあったのだ。去年は保健婦さんに「血が出ないよぉ」とばかりに注射針ぐりぐりされたあげく、結局試験管とつながってなかっただけ、という落ちだった。最初に言っておくが、今年は去年よりも落ちが弱い。

 今日の相手は若い准看護婦さん。まずわしの右腕に注射針をつきたてる。

ぐぐ。

 えらい力いれて突っ込む。ちょっと痛い。「ん?」という顔をした准看護婦さん、今度はその針を

するっ。

といったん少し抜いて、再び力入れて

ぐぐぐい。

と突き込む。まじかなり痛い。この准看護婦さん、さらに0.7秒ぐらい顔をしかめた後、わしにいきなり「すいません」と言う。

 わしは一瞬、その後「動脈に傷つけちゃいましたぁ!」と続いたらどうしようかと緊張したが、彼女から出てきた言葉は

失敗したので、左腕でやります

だった。というわけで、一回の採血でなぜか両腕に絆創膏貼られてしまいましたよ。
 もしかしてこの病院、この時期人間ドックには新入りを配置しているんだろうか(^_^;)。というわけで来年は何が起こるか、乞う御期待。

 最近こういう若い人の失敗は笑って耐えられるようになった。普段相手している学生さんたちの失敗の数々を見慣れているせいかもしれない。

★というわけで去年の今頃の日記を見てたら
 7月6日には、こんなことが書いてある。

 「相対論」の講義録、第12回。それにしてもあと3回しか授業ないのに、やっと次から相対論的力学。これではぎりぎりでE=mc^2の話ができるぐらいではないか。来年は(来年もやるんだとしたらだが)時間配分とかもっと考えないといかんなぁ。

 今年もやっぱり遅いやん。時間配分もっと考えるとか言っておいて、まるで考えられてないやん。ちゃんと日記活用しろよ>わし

★ウルトラマンマックス
 第1話を見ました。まぁ、ネクサスがわざとこれまでのウルトラマンと違うことをやろうとしているウルトラマンだったのに対して、全くのところこれまでの ウルトラマンでしたなぁ。それにしても過去のウルトラマンのよくないところまでトレースしちゃっているような気もしないでもない。一民間人の熱血漢(つま りはウルトラマンに変身する人なんだけどね)が無断で戦闘機に乗って出撃して、勇気を認められて隊員になっちゃう、なんていう単純明快すぎるところとか (帰りマンの郷秀樹あたりから繰り返して使われてますな)。あと「自然界のバランスが崩れるほど一つの種が増えすぎると天敵が現われるという調整機能があ る。人類に対する天敵が怪獣だ」なんていう、似非科学的部分とか。似非科学的になって嘘くさ〜〜〜〜くなるぐらいなら、そんな説明入れなきゃいいのにと思 う。

2005.7.3

★歴史のお勉強
 今度の土曜日(7月9日)に琉球大学の物理系の同窓会の行事で「世界物理年記念ってことで講演してくださいな」と頼まれている。「百年前にアインシュタインが成し遂げたこと」みたいな話をしようと思っているんだけど、その準備にと、「神は老獪にして…アインシュタインの人と学問」とかを読んでいた。するとこれまでわしは量子力学誕生の歴史的順序というのを少し勘違いしていたことがわかった。

 というのはプランクの黒体輻射の話。たいていの本(わしの講義録もだ)には、

 古典的電磁場で黒体輻射の計算をやるとレイリー・ジーンズの輻射公式の結果になる。 → しかしこの式は実験にあわない。

 一方プランクの輻射公式は実験にぴったり合う(この式が出るのは1900年)。 → その物理的意味を考えると、光のエネルギーがhνの整数倍になる。 → アインシュタインが光量子仮説を唱えて、「光は粒子だ」と言う(これが1905年)

という流れで説明がしてある。
 というわけでレイリー・ジーンズの式の方がプランクより古いのだとばかり思っていたら、なんといわゆる「レイリー・ジーンズの式」がちゃんと世の中に出 たのは、1905年なんですな(^_^;)。その元になる式はレイリーが1900年に出しているんで、流れとしては上の流れが完全に間違いというわけじゃないけど、「レイ リー・ジーンズの式」という名前で呼ばれるあの式が「プランクの式」より前に出ていると思ってはいけないようだ。
 この話で改めてわかるのは、プランクの輻射公式が出てその中で光のエネルギーがhνの整数倍という扱いをされていたからと言って、「古典電磁気学はだめだぁ」という理解がすぐに出来たわけではないということ。
 レイリーやジーンズがまだ「古典電磁気学だとやっぱりおかしいね。等分配則が悪いのかなぁ」みたいなことを言っていた時にアインシュタインがあっさりと「光は粒子ですよ」と言っちゃったわけ。やっぱり1905を奇跡の年と呼ぶのは正しいなぁ、と再認識した。
 「今頃何言っているんだ」と言われそうだけど(^_^;)。
 

2005.7.4

★歴史のお勉強2
 さっそく田崎さんよ りコメントもらった。「今頃何言っているんだ」の一言だったりしたら少しへこんだかもしれないが、幸いそうではなく、騙されていた過去がおありなことがわ かって少しほっとした。田崎さんもこの嘘歴史の元凶は何なのかと思っているそうなので、おそらく元凶の可能性として一番怪しい(^_^;)、朝永振一郎著 「量子力学I」(わしも昔読んだし、量子力学の講義の参考にした)を見てみた。1章の目次が

1 事の起こり
2 比熱の理論
3 真空の比熱
4 Rayleigh-Jeansの公式
5 Wienの「ずれ」法則
6 Wienの公式
7 Planckの公式
8 エネルギー量子
9 比熱の量子論

という流れになっていた。つまり嘘歴史の流れであり、普通に読んでいくとこの順番に歴史が進んだように思ってしまいそうだ。しかし、実は2節に入る直前にこう書いてあるのである。
「この問題(註:空洞輻射の問題)を取り扱ういろいろな方法があるが、Planckの最初に行った歴史的に有名なものよりも、比熱の理論の一つの一般化として以下に述べるようにするのがわかりやすい。したがって、まず比熱の理論から始めることにしよう。」
 うーん、これだけの文章で「ここから先の話は歴史そのままじゃないよ」という断り書ということなんだろうか。ちょっと悩むぞ。

 しかしこの嘘歴史が蔓延してしまうのはわかるような気もする。だって、この流れの方が説明しやすいから。何より、「ここまでが古典論、ここからが量子論」という色分けがしやすいというのが大きい。
 もう一つ田崎さんからの御指摘は、昨日の日記の、「プランクの輻射公式が出てその中で光のエネルギーがhνの整数倍という扱いをされていたからと言って」の部分。実はプランクは「光のエネルギーがhν」と考えたのではなく、「光が周囲とエネルギーをやりとりする時の単位がhν」と考えていたらしい。
 なるほどこう考えていたとすると、そこで「光は粒子だ」と言い切ってしまったアインシュタインの思い切りのよさ(ぶっとび加減)はますますすごいということになる。

 このあたりは来年の講義(またやるとしたら)に反映させねば。

★ところで講演について
 何人かの人から「アインシュタインの話をするなら、社会的影響だとか、原爆に対する責任だとか、そういう話もしないと」のようなことを言われて、ちょっ とがくり来ている。アインシュタインだけで1週間連続で話させてくれるというのならともかく(いやそんなことしろと言われたらさすがにしんどいから断るけ ど)、1回せいぜい1時間の講演でそんな話ができるほど、1905年のアインシュタインは薄くはない。そんな話を入れなくても、、、、と書くと社会的要素 を軽視しているのかと言われそうだが、そうではなくて、この年の物理だけで十分すぎるほどに歯ごたえのある話ができるのである。
 いや時間もっとくれるってのなら、一般相対論やらボース・アインシュタイン凝縮やらEPRパラドックスやら、さらに歯ごたえのあるお話はいくらでも1905以降に残されているのである。

2005.7.5

★今日の更新
 相対論の講義録、第11回。今日はテンソルを使った計算の練習と、「4次元的に物を考えよう」キャンペーンのその1。
 黒板で計算している時間が長かったので大汗かいた。

2005.7.6

★歴史の勉強3
 さらに田崎さんから指摘をいただいて気づいたのだが、なんと、、朝永振一郎著 「量子力学I」の序文には、

歴史的には多くの時代錯誤と歪曲が含まれている。

と堂々と(^_^;)、書いてあった。
 つまりこの本は量子力学を勉強するにはいい本(これは皮肉でもなんでもなく、ほんとにいい本である)なのだが、量子力学の歴史を勉強するのにはよくないわけだ。
 学生の頃からずっと騙されていたことになるが、御本人が堂々と「歪曲してます」と宣言しているのでは仕方ない。

2005.7.7

★今日の更新
 せめて今年の講義録だけでも注釈入れておこう、ということで、今更ではあるが、初等量子力学講義録第2回に、赤字で書き足し

2005.7.8

★今日の更新
 初等量子力学の講義録、第11回。やっとシュレーディンガー方程式。

2005.7.9

★琉球大物理系同窓会で講演
 アインシュタインの1905年論文について。初めてOpenofficeのプレゼンソフトを使って講演した(パワーポイントは持ってないのだ)。
 ちょっとつまった部分や、しゃべる順番間違えた部分、うっかり飛ばした部分もあって、自分としては会心とは言えず、75点ぐらいの出来だと思ったのだが、聴衆の皆さんからは随分褒めていただいて恐縮する。少し複雑な気分である。

2005.7.10

★頭を流れるメロディー
 お笑いのライブを見に行った。チケットを手に持って入場しようという時、頭の中に突然、

「連れて、逃げてよ〜〜〜♪」

という歌が響き渡った。はてなぜ突然。今からチケットを会場の係員のにーちゃんに渡そうという、まさにそのタイミングになっている今日この時この瞬間。わしの深層心理はいかなる意図を持ってこの歌を意識上層へと持ち込んだのだろうか???

 頭の中で続きを歌っていくうちに、なぜ出てきたか判った。

「夕暮れの風が吹く〜〜〜モギリの私〜〜〜」

 ダジャレかよ!!>わしの深層心理。

★リンク修正
 一昨日の日記の講義録へのリンクが第10回になってますよ、とメールいただいたので修正。うーむ、我ながらやっていることがええかげん。

2005.7.11

★クーラー壊れる
 この10年、ろくに掃除もしないままに動き続けていたクーラー。事務の方から「フィルターの掃除しましょう」というお達しも来たし、ということで金曜日に掃除した。さぞ機嫌よく動いてくれるだろう、と思っていたのだが。
 今日、クーラーは、生暖かい風が出てくる、やたらと消費電力のでかい扇風機と化していた。
 めちゃくちゃ暑い(お忘れの方のために言っておくが、ここは沖縄である)。
 掃除せずとも機嫌よく動いている機械は掃除してはいかんのだろうか(;_;)。
 とりあえず、退官された先生のいた空き部屋(家具何にもなしだが、クーラーは残っていた)に机一個とノートパソコンと本数冊持って退避。

★やるべきことがたくさんあるんだが
 たくさんありすぎて何がなんだかよくわからぬ羽目に。結局大して重要でない案件から片付け始めているような気がする。
 神を願わくば私に、忘れてもいいものを忘れてしまう思い切りと、忘れてはいけないものを忘れない注意深さと、その二つを見分け損なってもなんとか乗り切る幸運を与えたまえ。

2005.7.12

★今日の更新
 相対論の講義録、第12回。今日も黒板に向かっている時間が長い講義をやってしまった。もうちょっとうまく配分を考えないとな。それに、テンソル計算の練習問題をつけておくべきだった、と今更ながら反省。

★クーラー
 卒業生の大田さんよりメールをもらう。似たような例を知っているそうで、原因は「室内機の掃除だけをしたせいで室外機に余計は負担がかかったから」とか。
 うわあああ。思い当たりすぎるぅぅぅぅ。

 確かに掃除の当日は元気だったような気がする。そして室外機は掃除してなかった。

 で、ベランダに下りて室外機をチェックしてみると、、、、フィルター部分、掃除どうこうの問題じゃない。崩壊しかかってますがな。
 ちなみに前にクーラーを壊した同僚の先生は、一ヶ月待っても直してもらえなかったとか。困ったもんだなぁ。

2005.7.13

★消えるコップ
消えるコップ 今日は夜遅く家に帰ると、嫁はんが「これ見てみ」と言って油の入ったガラス瓶を見せる。
 ←この写真である。
 よぉ〜〜〜く見ると、油の中にガラスのコップが入っているのがわかる(この写真でもよく見ると見えている。上から覗き込むともっとよく見える)。
 「ああ、ガラスと油の屈折率が同じだからだよな」と言うと、「そうそう、それをテレビ番組で言うてたから、いっぺんやってみた」と言う。

わざわざ実験したんかいな
子供らに見せたろ思って。いまいち感動しやがらんかったけどな

 うーむ。けっこう感動するけどな、これ。もっとも子供らにしてみれば、テレビに出ている次の情報を聞き逃すまい、とそっちに一生懸命だったらしい。

 「というわけでな」と嫁はんは続けた。

明日、揚げ物料理やから

 そりゃ、この油使わんといかんもんなぁ(^_^;)。

2005.7.14

★無限に長い直線電流
の作るベクトルポテンシャルをラプラシアンの逆演算子使って計算しなさい、という問題を演習のつもりで学生さんにやらせたら、なかなか答が出ない。どれどれと自分で計算してみたら見事に発散した(^_^;)。
 3次元で無限に長い直線電流を扱うということは本質的に2次元の問題なので、ポテンシャルがlog(r)という形になる。普通に積分で求めようとしたら log(r/L)のような形になる。Lは積分範囲のパラメータで、最後にL→∞の極限を取るから、こりゃ発散しますわな。当たり前だが突然∞になるとびっ くりした。
 所詮ポテンシャルなんだから、発散する-log(L)の部分を定数としてさっぴいておけばいいのだろうけど。

2005.7.15

★今日の更新
 初等量子力学の講義録、第12回。それにしても位相速度と群速度ってわかりにくいよねぇ。自分が学生の時もよくわからんままに勉強していたが。
 どうやって説明したらわかってもらえるだろうと考えて、このjavaアプレット作ったりした。これできたときは「よし、これ見せればわかるだろう」と思ったが、実際見せてみるとそれでもなかなかわかってくれない。もうちょっと波束らしく見える奴に作り直そうかしらん。

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