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第7章 相対論的力学

7.1 不変性と共変性

すでに述べたように、物理においては「座標系によらない量」がたいへん大事である。また、「座標系によらず成立する式」も同様に大事である。逆に言えば「特定の座標系でしか計算できない量」や「特定の座標系でしか成立しない式」には意味がない。

ある物理量が「ローレンツ変換に対して不変である」ということは、ある座標系での量\phi(x)が、別の座標系での同じ地点での量\phi(x')


スカラーの変換性
\phi(x)=\phi(x')

という関係を持つ、つまり座標系を変えても同じ値であることを言う。このような性質を持つ量をスカラーあるいは「ローレンツ・スカラー」と呼ぶ*1

不変性と同時に重要な概念が「共変性」である。ある方程式が共変であるとは、たとえばA^\mu=B^\mu、あるいはC_{\mu\nu}=D_{\mu\nu}のように、方程式の両辺がローレンツ変換に対して同じ変換をすることを言う。たとえばA^\mu=B^\muをローレンツ変換すると、

\alpha^\mu_{~\nu}A^\nu= \alpha^\mu_{~\nu}B^\nu

のように、左辺と右辺が同じ変換をして、結局は(A')^\mu=(B')^\nuという、同じ形の式になる。この場合「この方程式は共変である」と言う。

たとえば、E^\mu=F^{\mu\nu}G_\nuという形の方程式は共変である。座標変換すると、

\alpha^\mu_{~\nu}E^\nu=\alpha^{\mu}_{~\rho}\alpha^\nu_{~\lambda}F^{\rho\lambda}\alpha_{\nu}^{~\sigma}G_\sigma

となるが、すでに述べたように、 \alpha^\nu_{~\lambda}\alpha_{\nu}^{~\sigma}=\delta_\lambda^{~\sigma}と いう関係があるので、

\alpha^\mu_{~\nu}E^\nu=\alpha^{\mu}_{~\rho}F^{\rho\lambda}G_\lambda

となる(「つぶれている」添字であるμに関しては変換を受けない、と考えても良い)。

結局、左辺と右辺で共変ベクトル(下付き)や反変ベクトル(上付き)の添字が同じ形になっていれば、両辺が同じ変換をするので方程式は共変となる。

たとえば

A_\mu=B^\mu

のような式には共変性がない。たまたまある座標系で成立していたとしても、ローレンツ変換したら成立しなくなってしまう。

物理法則は座標系によらず成立すべきであるから、当然ながらその物理法則は共変な式で書かれていなくてはならない。物理法則をテンソルで書く利点は、この共変性が明白になるということである。テンソルで共変に書かれた方程式(つまり左辺と右辺で添字の形があっている方程式)は、ある座標系で成立するならば別の座標系でも成立する。これが、相対論的に考える時にテンソルを使う大きな利点である。

実はニュートンの運動方程式\vec F=m{d^2 \vec x\over dt^2}はその意味では物理法則失格である。この方程式は3次元ベクトルで書かれており、4次元的な意味ではまったく共変ではない。

以下で、ニュートン力学をローレンツ変換にたいして共変になるように書き直す。これによって、力学はまったく新しいものに生まれ変わることになる。

7.2 ニュートン力学を相対論的に再構成する

ここまでの流れを整理しよう。

ガリレイ変換ローレンツ変換実験的検証
ニュートン力学(非相対論的)×19世紀まで○
ヘルツの方程式(非相対論的)××
マックスウェル方程式(相対論的)×
相対論的力学?×

相対性原理(絶対空間は存在しないということ)を一つの原理として考えてきた。そして、電磁気の基本法則であるマックスウェル方程式が相対性原理を満たしていないように見える(ガリレイ変換で不変でない)ことから、マックスウェル方程式を破棄するか、ガリレイ変換を破棄するかの二者択一を迫られることになった。マイケルソン・モーレーをはじめとする実験事実から、破棄されるべきなのはガリレイ変換であり、ローレンツ変換へと修正すべきであることがわかった。また、時間と空間を別物と考えるのではなく、合わせて4次元の時空を考えて、その4次元を混ぜ合わせるような変換としてローレンツ変換を捉えればよいことがわかった。

そこでもう一度元にもどって考えると、そもそも相対性原理が考えられたのは、ニュートン力学はガリレイ変換で不変であったからである。しかし電磁気に対する考察からガリレイ変換はローレンツ変換へと修正されたのだから、今度はニュートン力学をローレンツ変換で不変になるように作り直さなくてはいけない。この章で考えるのはローレンツ変換で不変になるように作り直された新しい力学、すなわち相対論的力学である。

そこで、どのようにして相対論的力学を作るか、その概要を述べる。ニュートン力学の基本である運動方程式は

{dp^i\over dt}=f^i

という形をしている。p^iは運動量で、具体的にはp^i=m{dx^i\over dt}である。ニュートン力学では、ある時刻tにおいて、物体の位置x^i(t)を時間の関数として与え、時間がたつにつれてこれらがどのように変化していくかを運動方程式を使って追い掛ける。ニュートン力学では時間というものが特別なパラメータとなっている。しかし、時間というものを特別視していては、相対論的に不変な方程式にはならない。運動のパラメータとしては座標時間tを使うのではなく、固有時τを使うべきである。τは「その物体が静止している座標系で測った時間」という定義になっているので、物体を決めれば一意的に決まり、ローレンツ変換しても変わらない。以下で、


相対論的力学を作る方針
  1. 座標時間による微分{d\over dt}は全て固有時微分{d\over d\tau}に置き換える。
  2. 3次元ベクトルx^i=(x(t),y(t),z(t))で表されている量は4元ベクトルx^\mu=(ct(\tau),x(\tau),y(\tau),z(\tau))に拡張する。
  3. 方程式の両辺はローレンツ変換した時に同じように変換される(共変性)ように作る。

という方針で相対論的力学を作っていこう。

固有時τと座標時tの微分は物体が静止している時には等しい(d\tau=dt)ので、このようにして作られた相対論的力学は、物体が静止している状況ではニュートン力学と同じ答を出す。あるいは、「物体の速度が光速cに比べ十分小さい状況ではニュートン力学に近似できる」と言ってもよい。それゆえ、ニュートン力学は破棄されるわけではなく、相対論的力学の近似として生き残る*2

7.3 4元速度

まず、ニュートン力学における3次元速度{dx^i\over dt}V^\mu=\left(c{dt\over d\tau},{dx\over d\tau},{dy\over d\tau},{dz\over d\tau}\right)に置き換える。固有時τはローレンツ変換で変化しないため、x^\mu\alpha^\mu_{~\nu}x^\nuとローレンツ変換される時、V^\mu \to \alpha^\mu_{~\nu}V^\nuとローレンツ変換される。すなわちV^\muは4元ベクトルであり、「4元速度」と呼ばれる。物体の4元速度の自乗を計算すると、

\left(-c^2\left({dt\over d\tau}\right)^2+\left({dx\over d\tau}\right)^2+\left({dy\over d\tau}\right)^2+\left({dz\over d\tau}\right)^2\right)= -c^2
(4元速度の自乗の式)

となる。つまり、4元速度は常に時間的(自乗がマイナスになるベクトル)であって、4元速度の自乗は一定値なのである。3次元的に見ると物体はそれぞれ固有の速さを持って運動しているように見えるが、4次元的に見れば全て同じ速さで運動している、と考えることもできる。ただし、

(4元速度の自乗)= (空間的速度の自乗)-(時間的速度の自乗)

という形になっているので、空間的方向の速度が速くなると時間的方向の速度も速くならなくてはいけない。

「時間方向の速度」というのは変な表現だが、今考えている「速度」というのは「単位固有時あたりの変化」という意味であるから、「τ(固有時) が1変化する間にt(座標時)はどれだけ変化するか」ということである。動いているとこれが速くなる。というのはどういうことかというと、「小さいτの変化に対し、tが大きく変化する」逆に言えば「tが大きく変化しているのにτがあまり変化しない」ということである。つまり、「時間方向の速度が速くなる」というのは、「運動物体の時間は遅れる」ということの別の表現だということになる。

4元速度の第0成分であるc{dt\over d\tau}を3次元速度v^i={dx^i\over dt}を使って表そう。(4元速度の自乗の式)より、

-c^2\left({dt\over d\tau} \right)^2 + \biggl(\underbrace{{dx^i\over dt}}_{=v^i}{dt\over d\tau}\biggr)^2=  -c^2

-\left({dt\over d\tau} \right)^2\left(c^2-|\vec v|^2\right) = -c^2

{d(ct)\over d\tau}= {c\over\sqrt{ 1-{|v|^2\over c^2}}} = c\gamma

となって、ウラシマ効果の時間遅れの因子\sqrt{1-{v^2\over c^2}}の逆数であるγにcをかけたものが出てくる(固有時τと座標時に光速度をかけたctの変化の割合を計算していることになる)。また、3次元速度v^iと4次元速度V^\muの関係は{dx^\mu\over d\tau}={dx^\mu\over dt}{dt\over d\tau}となることから、

V^0= c\gamma,~~~~ V^i = \gamma v^i

となる。物体が静止している時、4元速度は(c,0,0,0)となる。そして、速度vがcに近づくにつれてV^\muは無限大へと発散する。

7.4 4元加速度、4元運動量と4元力

4元速度をさらに固有時τで微分したものを4元加速度と言う。式で書けばA^\mu={d^2 x^\mu\over d\tau^2}となる。4元加速度は、3次元の加速度a^i={dv^i\over dt}とはだいぶ違う形になる。

4元加速度の性質として、4元速度と(4次元の意味で)直交する。なぜなら4元速度の自乗が一定であることから、

\begin{array}{rl}  0=&{d\over d\tau}\left(\eta_{\mu\nu}{dx^\mu\over d\tau}{dx^\nu\over d\tau}\right) \\0=& 2\eta_{\mu\nu}{d^2 x^\mu\over d\tau^2}{dx^\nu\over d\tau} \end{array}

となるからである。この式はすぐ後で使う。

ここで、そもそも運動量やエネルギーというものが、ニュートン力学においてどのように導出されたものか、ということを思い出そう。まず運動方程式

m{d^2 x^i\over dt^2}=f^i

から出発する。この両辺を時間で積分(区間は[t_i,t_f])すると、

m{d x^i\over dt}|_{t=t_f}- m{d x^i\over dt}|_{t=t_i}=\int_{t_i}^{t_f} f^i dt

という式が出る。これは、運動量の変化が力積である、という式である。

また、x^iで積分すると、

\int_{x_i}^{x_f}  m{d^2 x^i\over dt^2}dx^i=\int_{x_i}^{x_f} f^i dx^i m\int_{t_i}^{t_f} {d^2 x^i\over dt^2}{dx^i\over dt}dt=\int_{x_i}^{x_f} f^i dx^i

m\int_{t_i}^{t_f} {d\over dt}\left({1\over2}\left({dx^i\over dt}\right)^2\right)dt=\int_{x_i}^{x_f} f^i dx^i

{1\over2}m\left({dx^i\over dt}\right)^2|_{t=t_f}-{1\over2}m\left({dx^i\over dt}\right)^2|_{t=t_i} &= \int_{x_i}^{x_f} f^i dx^i

という式が出る。x_iは時刻t_iでの粒子の位置(x_f,t_fも同様)である。つまり、エネルギーは仕事f_i dx^iによって変化する量として定義されている。

4元速度に質量*3をかけたものを4元運動量と呼ぶ。

P^\mu =\left( mc{dt\over d\tau},m{dx\over d\tau},m{dy\over d\tau},m{dz\over d\tau}\right)

のようなベクトルで、これは3次元の運動量

p^i=\left(m{dx\over dt},m{dy\over dt},m{dz\over dt}\right)

と、

P^\mu=\left( mc \gamma, \gamma p^1, \gamma p^2 , \gamma p^3\right)

のような関係にある。ここで、4元運動量の第0成分にはどんな意味があるのかを知るために、この4元運動量の微分dP^\muについて考えてみる。

4元加速度と4元速度が直交するという式にmをかけると、m{d^2 x^\mu\over d\tau^2}={d\over d\tau}\left(m{dx^\mu\over d\tau}\right)={dP^\mu\over d\tau}を使って、

\eta_{\mu\nu}{dP^\mu\over d\tau} {dx^\nu\over d\tau}=0

という式が出る。この式をさらに少し変形すると、

\begin{array}{rl}  \eta_{\mu\nu}dP^\mu dx^\nu&=0 \\-dP^0 d(ct) +  dP^i dx^i&=0\\  dP^i dx^i&=dP^0 d(ct) \\  {dP^i\over dt} dx^i&= c dP^0 &\end{array}
(相対論的仕事の式)

となる。つまり、{dP^i\over dt}dx^iの3次元的内積がcP^0の変化量となる。ニュートンの運動方程式と同じように、

f^i = {dP^i \over dt}

のようにして力を定義*4するならば、(相対論的仕事の式)はまさに

仕事(f^i dx^i )=cP^0の変化(cdP^0)

という式になる。これはcP^0がエネルギーと解釈できることを示している。つまりエネルギーは「時間方向の運動量\times c」なのである。量子力学でp=-i\hbar{\partial \over \partial x},E=i\hbar {\partial \over \partial t}のような対応になっているのは、エネルギーが時間方向の運動量だからであるとも言える。Eだけ符号が違うのも、もちろん\eta_{\mu\nu}が時間的成分のみマイナスであることが関係がある。

解析力学とも関係あるんですか?

解析力学のハミルトン・ヤコビ方程式では、主関数Sをxで微分すると運動量(p={\partial S\over \partial x})で、tで微分するとマイナスのエネルギー(E=-{\partial S\over \partial t})でしたから、それとも関係してきます。

4元運動量の自乗は\eta_{\mu\nu}P^\mu P^\nu=- m^2 \eta_{\mu\nu}V^\mu V^\nu= -m^2c^2であるから、P^0={E\over c}とおくと、

-m^2 c^2 = -\left({E\over c}\right)^2 + |P^i|^2

という式が成立する。上の式から、運動量の大きさが増えるとエネルギーも増加する(自乗の差が一定値なのだから)。

cP^0がエネルギーと解釈されるべき量であることを、vがcより小さいという近似で確認しよう。

\begin{array}{rl} cP^0=c m c\gamma =& mc^2 {1\over \sqrt{1-\beta^2}}=mc^2\left(1+{1\over2}\beta^2+\cdots\right)= mc^2 + {1\over2}mv^2+ \cdots\\\end{array}

となって、定数項mc^2とβの4次以上の項を除けばなじみのある運動エネルギーの式{1\over2}mv^2が出てくる。なお、相対論で有名な公式*5であるE=mc^2はこの式の\beta=0にしたものである(つまり、特別な状況での式であることは忘れてはならない)。

つまり静止している物体もmc^2だけのエネルギーを持っているということを表している。しかし、通常の力学ではエネルギーの原点には意味がない。取り出すことのできるエネルギーは結局はエネルギーの差であり、cP^0の最小値はmc^2なのだから、このmc^2はこの一個の粒子の運動を考えている限りにおいては取り出すことのできないエネルギーということになる。この「静止エネルギー」mc^2の意味は、単にエネルギーの原点がずれているだけにすぎないのである。しかしこのmc^2がないとP^\muが4元ベクトルでなくなってしまうので、4元運動量として意味があるためにはmc^2を消してしまうことはできない。

相対論的力学ではエネルギーと運動量は「4元運動量の時間成分と空間成分」という意味を持ってきたため、(そういうつながりのなかったニュートン力学とは違って)、エネルギーの原点を勝手に選ぶことができなくなったわけである。

この時点ではmc^2は、実用的な見地からは深い意味はない。しかし、複数の物体が合体したり、あるいは逆に物体が分裂したりする現象を考えると、この式に含まれる深い意味が明らかになる。これについては後で話そう*6

なお、ここで定義した力f^i={dP^i\over dt}は、その定義(t微分を使ったところ)からして4元ベクトルになっていない。4元ベクトルになる力F^\mu

{dP^\mu\over d\tau}=F^\mu

で定義すると、F^\mu= {dt\over d\tau}f^\muという関係が成立する。このτは、今力が及ぼされている物体の固有時であるから、その物体が速度u^iを持っているならば、

{dt\over d\tau} ={1\over \sqrt{1-{u^2\over c^2}}}

である。

F^\muを「4元力」または「ミンコフスキーの力」と呼ぶ。

なお、なぜわざわざ4元ベクトルではないf^iを持ち出したかというと、作用・反作用の法則が成立してくれるのはこっちであって、ミンコフスキーの力の方ではないからである。たとえば二つの物体が力を及ぼし合っている状況を考えると、二つの物体の運動量をP_{(1)},P_{(2)}とすると、この二つの運動量の和P_{(1)}+P_{(2)}が一定であるということは{dP_{(1)}\over dt}+{dP_{(2)}\over dt}=0を意味する。これを4元力で書こうとすると、固有時は二つの物体それぞれにあるので、{dP_{(1)}\over d\tau_1}+{dP_{(2)}\over d\tau_2}=0となるが、これでは運動量が保存しない。

4元力は4元ベクトルであるから、その変換性は他の4元ベクトルと同様で、x方向に速度βで移動する座標系へ変換した時、

F^{\prime1}=\gamma(F^1-\beta F^0),~~~~ F^{\prime0}=\gamma(F^0-\beta F^1),~~~~F^{\prime2}=F^2,~~~~F^{\prime3}=F^3

となる。f^\mu=\sqrt{1-(u/c)^2}F^\muという式が成立している(uは今考えている粒子の速度である)ことを考えると、f^\muの方の変換も計算できる。ただしその時は、x座標系とx'座標系では、物体の速度u^iも速度の合成則に従って変換することに注意しよう。したがってf^\muの変換はF^\muに比べると複雑なものになってしまう。

学生の感想・コメントから

相対論的力学とニュートン力学が似ているのはなぜですか?

そりゃ、相対論的力学はニュートン力学を元にして作ってますから。なぜかというと、以下のような筋道で相対論的力学ができたからです。そもそも観測された事実からニュートン力学ができました。ところが観測の精度があがったため、物体の速度が光速に近いところではニュートン力学がうまくいかなくなりました。そこでそういう場合でもうまくいくように、ニュートン力学を修正したわけです。当然、物体が光速よりもずっと遅い場合には、二つの力学は同じになります。つまりどっちも、「自然現象をうまく表現する」ということが目標であり、違いは適用範囲の広さだけなんです。似てくるのは当然です。

固有時は時間なのになぜ「座標系によらない量」なのですか?(複数)

ニュートン力学と相対論的力学って関連はあるんでしょうか?

もちろん。今日はニュートン力学を修正して相対論的力学を作りました。その中で、「物体の速度が遅い場合はニュートン力学に一致するように」相対論的力学を作ったのです。

「固有」という言葉は「その物体にとっての」という意味です。つまり、考えている物体が時計を持っているとして、その時計の刻む時間が「固有時」です。あなたの腕時計が刺している時間(何時何分何秒)は、見る座標系が変わっても変わったりしませんね?---つまり「誰が計る時間なのか」を指定してしまっているので、どの座標系で計算したかは無関係になってしまうのです。

4元速度の話、静止している物体が「光速度で時間方向に移動している」とはどういう意味ですか?

4元速度というのは「単位固有時あたりにどれだけ進むか」ということを計算するものです。4元速度の時間成分は「単位固有時あたり、x^0がどれだけ進むか」を意味するわけです。静止している物体では固有時と座標時は同じになるので、単位固有時の間に座標時間は1増加し、それはx^0=ctがc増加するということになるのです。

エネルギーと運動量には関係があったのですね。

もちろん、ありました。

エネルギーのmc^2は考えなくていいのですか?

もちろん考えます。それについてはまた今度。

mc\gammaを展開して{1\over2}mv^2の部分をエネルギーとしていましたが、mc^2の部分がエネルギーになっているという考え方ではダメなんですか?

mc^2の部分だってもちろんエネルギーなんですが、この部分は速度に無関係です。つまり動いてようが止まっていようが同じなわけで、ここには「運動」エネルギーは入ってません。ニュートン力学と対応づけるためには運動と関係するエネルギーが必要です。

相対論的力学の登場で、力学は一応完成したことになったんですか?

そうですね。今のところは。

相対論でも作用・反作用の法則を満たさないといけないんですか?

ニュートン力学とは(力が伝搬するのに時間がかかるという)違いがありますが、全体で運動量が保存する形になるので、作用・反作用の法則は成立します。

大学の物理は実は数学なんじゃないかと思えてくる。

「数学」という言葉を使ってしゃべっているので数学に聞こえますが、英語で書かれていようが日本語で書かれていようが文学が文学なのと同様、「何が語られているか」が一番大事です。


*1 これまでは「スカラー」と言えば単に「1成分の量」という意味合いで使っていた人も多いかもしれない。相対論におけるスカラーの定義は「座標を変えても変化しない量」ということである。
*2 というより、相対論的力学は近似としてニュートン力学を含まねばならない。新しい理論は、古い理論が説明していた物理現象も説明できるものでなくては意味がないからである。
*3 相対論では質量という言葉にいろんな定義があるのだが、少なくともこのテキストに関しては、「質量」とは「静止質量」のことである。他の質量の定義は後で述べるが、基本的な量は「静止質量」であり、これはローレンツ変換によって変化しない、定数である。
*4 この「力」f^iは4元ベクトルではないことに注意。
*5 意味はわからなくてもこの式だけは知っている、という人も多いので、もしかすると、物理の公式の中で一番有名かもしれない。
*6 いいかげんな相対論の本を読むと、この部分の説明だけでE=mc^2の説明が終わってしまっていたりする。だが、E=mc^2という式のほんとうのすごさは、後で説明する「どんなエネルギーも質量と関係する」というところにあるのである。ここまでの話では、単に運動エネルギーの原点をずらしただけに過ぎないから、面白いところはまだ全然話してない。

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Last-modified: 2024-01-12 (金) 19:41:37