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前回、光円錐のイメージが湧かない、という感想が多かったので、4次元時空と光円錐を見るアプレットを見せて、4次元時空図のイメージを持ってもらった。

1.6 絶対空間に対するマッハの批判

ニュートンはニュートン力学を構築する時、「絶対空間」すなわち物体が静止していることの基準となる空間を仮定した。つまり、「静止している」ということが定義できるとしたのである。マッハはこれを批判し、「物体が静止しているかどうかを判定することはできない」と主張した。実際ニュートンの運動方程式はガリレイ変換で不変なのだから(動きながら見ても物理法則は変らないのだから)運動を見ているだけではその物体が静止しているかどうかを判定することはできない。観測者自身すら、止まっているのかどうかが判定できないからである。

この「動いているかどうか判定できない」というのは等速直線運動の場合に限る。たとえば観測者が回転運動をしていれば、遠心力を感じるので、遠心力があるか否かを実験することで「自分は回転しているのか」を判定することができる(数式上で言えば、先の計算のθが時間の関数であれば、運動方程式は不変ではない)。つまり、「静止系か否か」は実験で判断できないが「慣性系か否か」は判断できる、ということになる。

しかしマッハはこの考え方も批判していて「自分が静止していて宇宙全体が回転していたとしても遠心力が働くかもしれない」と述べている。たとえばバケツをぐるぐる回すと中の水面の中央がくぼむ。これは「バケツの回転による遠心力で水が外へ追いやられるから」と説明されるのが普通である。そして「バケツが回転している」と判断できることは絶対空間がある証拠であると考えられていた(これを「ニュートンのバケツ」と呼ぶ)。しかし、バケツが静止していて宇宙全体が回転していたとしても同じことが起こるかもしれない、「そんなことは起こらない」という根拠はどこにもないとマッハは言うのである。今のところ(?)、誰も宇宙全体を回転させるような実験はできないので、この真偽はもちろんわからない。マッハは「各々の物体がどのように運動するかは、まわりにある物体全体との相互作用によって決まるべきだ」という思想(マッハ原理と呼ばれる。アインシュタインもこの原理の信奉者だった)を持っていたので、安易に絶対空間を導入することに批判的だったのである。

マッハの批判から学ぶべきことは「観測されていないことを固定観念で「決まっている」と思い込んではいけない」ということである*1。ニュートンは実際には観測することができない「絶対空間」をあると仮定してニュートン力学を作った(実際にはこの仮定は必要ではない)。「絶対空間」が存在することは人間の感覚にはなんとなく、合う。だが、感覚を信用することは危険である。「物体に働く力は、物体の速度に比例する」という、人間の感覚に合うアリストテレスの理論が長い間信じられてきた(が間違っている)ということを思い出さなくてはいけない。

1.7 2次元の直線座標の間の変換

一つ次元をあげて、2次元空間の場合で考えてみる。2次元、3次元の場合の座標変換の考え方は、いずれ4次元時空での座標変換を考える時のガイドラインになるからである。

二つの空間座標をx,yとすると、x,yに対して別々の平行移動を行う座標変換

x'=x-a,~~~ y'=y-b

であるとか、それぞれ別の速度でガリレイ変換する座標変換

x'=x-v_x t,~~~ y'=y-v_y t

などがある。

rotation.png

しかしここまでは1次元の話を重ねているだけで面白味がない。2次元ならではの座標変換は、右の図のような、座標軸の回転である。

\begin{array}{rl}  x'=&\phantom{-}x\cos\theta + y\sin\theta \\  y'=&-x\sin\theta+ y\cos\theta \end{array}
(2次元回転の式)

[問い1-1]右の図に適当に補助線を引くことにより、(2次元回転の式)を図的に示せ。

(2次元回転の式)は、行列を使って

\left(\begin{array}{c}  x'\\y'       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} x\\y      \end{array}\right)
(2次元回転の式:行列版)

と書くこともできる。

ところで、高校数学の指導要領から、行列消えたんだよねぇ。今度から高校入る人は、高校では行列を習わずに大学入ってきちゃいます。

えーーー。

何年か先、教えるのに苦労しそうだよ。

gyoretsu.png

行列と列ベクトル*2の計算のルールは、左の図である。このルールを(2次元回転の式:行列版)に適用すれば、(2次元回転の式)が出てくる。

(x,y)=(1,0)という点と、(x,y)=(0,1)という点が(x',y')座標でみるとどう表せるかを考えよう。行列計算で書けば、

\begin{array}{rcl} \left(\begin{array}{c}  \cos\theta\\ -\sin\theta       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} 1\\0      \end{array}\right)\\ \left(\begin{array}{c}  \sin\theta\\ \cos\theta       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} 0\\1      \end{array}\right)\end{array}

となる。つまり行列\left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} 1\\0      \end{array}\right)を座標変換した結果の\left(\begin{array}{c}  \cos\theta\\ -\sin\theta       \end{array}\right)と、\left(\begin{array}{c} 0\\1      \end{array}\right)を座標変換した結果である\left(\begin{array}{c}  \sin\theta\\ \cos\theta       \end{array}\right)を横に並べて作った行列であると考えることができる。

\left(\begin{array}{c} 1\\0      \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} 0\\1      \end{array}\right)は互いに直交し、それ自体の長さは1である。したがって、 \left(\begin{array}{c}  \cos\theta\\ -\sin\theta       \end{array}\right)\left(\begin{array}{c}  \sin\theta\\ \cos\theta       \end{array}\right)も互いに直交して長さは1である。「長さが1である」という性質や「直交する」という性質はどの座標系で見ても( (x,y)座標系でも(x',y')座標系でも )同じだからである。

rotation2.png

回転であるから当然であるが、この式は

(x')^2+(y')^2 = x^2+y^2
(2次形式) を満足する。つまり、原点からの距離(上の式は距離の自乗)はこの変換で保存する。 これを行列で考えよう。まず、
\begin{array}{c}  ( x ~~~y )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{c} x\\y      \end{array}\right) = x^2+y^2

のように、行ベクトルと列ベクトルのかけ算という形で距離の自乗を表現する。列ベクトルの座標変換は(2次元回転の式:行列版)だったが、行ベクトルの座標変換は

\begin{array}{c}  ( x' ~~~y' )\\\phantom{(x,y)} \end{array}= \begin{array}{c}  ( x ~~~y )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{cc}\cos\theta & -\sin\theta \\\sin\theta & \cos\theta\\      \end{array}\right) = \begin{array}{c}  ( x\cos\theta + y\sin\theta ~~~-x\sin\theta + y\cos\theta )\\\phantom{(x,y)} \end{array}

と書ける。(2次元回転の式:行列版)と場合とは行列の並び方が変わっているものになっていることに注意しよう(具体的に行列計算をしてみればこれで正しいことはすぐにわかる)。この、

A= \left(\begin{array}{rl}  a_{11}&a_{12} \\ a_{21} & a_{22}       \end{array}\right)\toA^t= \left(\begin{array}{rl}  a_{11}&a_{21} \\ a_{12} & a_{22}       \end{array}\right)

のような並び替えを「転置(transpose)」と呼び、行列Aの転置はA^tという記号で表す。転置はa_{ij}\to a_{ji}と書くこともできる。a_{ij}とは「i番目の行の、j番目の列の成分」であるから、iとjを入れ替えるということは行番号と列番号を取り替えることである。ゆえに、転置を「行と列を入れ替える」とも表現する。

この式を使って、(x')^2+(y')^2を計算すると、

\begin{array}{c}  ( x' ~~~y' )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{c}	     x'\\y'		  \end{array}\right)=\begin{array}{c}  ( x ~~~y )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{cc}\cos\theta & -\sin\theta \\\sin\theta & \cos\theta\\      \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} x\\y      \end{array}\right)

となるが、

\left(\begin{array}{cc}\cos\theta & -\sin\theta \\\sin\theta & \cos\theta\\      \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}\cos^2\theta+\sin^2\theta  & \cos\theta\sin\theta-\sin\theta\cos\theta \\\sin\theta\cos\theta-\cos\theta\sin\theta & \sin^2\theta + \cos^2\theta       \end{array}\right) =\left(\begin{array}{cc}  1&0 \\0&1       \end{array}\right)
(直交行列であることの確認)

となることを考えると、\begin{array}{c}  ( x' ~~~y' )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{c}	     x'\\y'		  \end{array}\right)=\begin{array}{c}  ( x ~~~y )\\\phantom{(x,y)} \end{array}\left(\begin{array}{c} x\\y      \end{array}\right)すなわち、(x')^2+(y')^2=x^2+y^2になることがわかる。このように必要な部分だけを計算できるのが行列計算のメリットの一つである。

(直交行列であることの確認)が成立することは、直接的計算でももちろんわかるのだが、ベクトルの意味を考えればその意味が明白に理解できる。

matmul.png

上の図のように、行列のかけ算というのは結局、行ベクトルと列ベクトルの内積の計算を繰り返すものである。そして、\left(\begin{array}{cc}\cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta\end{array}\right)が「互いに直交して長さが1であるような二つのベクトルを横に並べたもの」であり、\left(\begin{array}{cc}\cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta\\ \end{array}\right)は同じベクトルを縦に二つ並べたものである。計算の結果1になるのは「自分自身との内積」すなわち「ベクトルの長さの自乗」を計算している部分で、0になる部分は「直交している」というところを計算している部分である。

今の一例に限らず、回転を表すような行列は「互いに直交して長さが1になるベクトルを並べたもの」という性質を持っていなくてはならない。

逆に、(2次形式)を満足するような座標変換が

\left(\begin{array}{c} x'\\y'       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc} a_{11} & a_{12}\\	a_{21}&a_{22} \\       \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} x\\y      \end{array}\right)
(回転行列)

と書けていたとすると、二つの列ベクトル\left(\begin{array}{c}  a_{11}\\a_{21} \end{array}\right),\left(\begin{array}{c}  a_{12}\\a_{22}       \end{array}\right)は、どちらも長さが1で、互いに直交しなくてはいけない。このような条件を満たしている行列を直交行列といい、Aが直交行列であれば、A^tAは単位行列となる*3

rotation3.png

直交行列であれ、というだけの条件では回転の行列になるとは限らない。たとえば、\left(\begin{array}{cc} 1&0\\0&-1\end{array}\right)は直交行列であるが、その物理的内容は回転ではなく、y軸の反転である。直交行列で、かつ行列式が1であるという条件を満たす場合、その行列は回転を表す。

たとえば行列\left(\begin{array}{cc}\cos\theta&\sin\theta \\ \sin\theta & -\cos\theta \end{array}\right)は行列式が-1である。この行列は\left(\begin{array}{cc}\cos\theta&-\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta\end{array}\right)\left(\begin{array}{cc}1&0 \\0&-1 \end{array}\right)の積であるから、「y軸を反転した後でθだけ回転する」という座標変換を表す行列である。つまり、行列式が-1の場合は座標系の反転が入っている。

ここで、次はテンソルによる表現だったが、時間が短かったので、後は運動方程式の不変性を行列でチェックするところの話をした。

このような回転に関しても、運動方程式の形が変わらないことを確認しよう。

m{d^2 x\over dt^2}=F_x, m{d^2 y\over dt^2}= F_y

から、

\begin{array}{rl} m{d^2 x'\over dt^2}=& m{d^2 x\over dt^2}\cos \theta+ m{d^2 y\over dt^2}\sin \theta \\=& F_x \cos\theta + F_y \sin \theta\end{array}

同様に

m{d^2 y'\over dt^2}=-F_x \sin\theta+ F_y \cos \theta

となる。ゆえに、

\begin{array}{rl}  F_{x'}=& F_x \cos\theta + F_y \sin \theta\\F_{y'}=&-F_x \sin\theta+ F_y \cos \theta \end{array}

を「回転された力」と考えれば*4

m{d^2 x'\over dt^2}=F_{x'},  m{d^2 y'\over dt^2}=F_{y'}

が成立し、回転前と同じ運動方程式が成立している。

このことも、行列を使った書き方で示しておく。行列で表現すると

m{d^2 \over dt^2}\left(\begin{array}{c}   x\\y	\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}	F_x\\F_y				 \end{array}\right)~~~\to~~~ m{d^2 \over dt^2}\left(\begin{array}{cc} \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta      \end{array}\right)\left(\begin{array}{c}   x\\y	\end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc} \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta      \end{array}\right)\left(\begin{array}{c}	F_x\\F_y				 \end{array}\right)

と書かれる。角度θが時間tによっていなければ、この二つの式は等しい。

回転の場合、運動方程式の全体の形は変わらないが、個々の成分の値は変わる(x成分がF_xからF_x\cos\theta+F_y\sin\thetaになるように)。このような場合は「不変(invariant)」とは言わず「共変(covariant)」という言い方をする。ニュートンの運動方程式は回転に対して共変である。

行列表示では、「変換」を表す部分が行列であって、式の中で一カ所に集まって表現されている。そのため、何かの「変換」を行うことで新しい座標系での運動方程式が出ている(しかも、その「変換」は左辺も右辺も同様に行われる)ということがわかりやすいかと思う*5

「ベクトル」の定義って何なんですか?

難しい質問だな。数学的な定義としては「足し算ができて、定数倍ができるようなもの」はなんでもベクトルです。物理の世界ではもう少し狭い意味を持たせることがあって、それは今日話したみたいな座標変換すると

\left(\begin{array}{c}  A_{x'}\\A_{y'}       \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}       \cos\theta&\sin\theta \\-\sin\theta&\cos\theta				\end{array}\right)\left(\begin{array}{c} A_x\\A_y      \end{array}\right)

のように、(x y)と同じ変換行列で変換するようなもののことを「ベクトル」と呼びます。つまり、座標じゃないけど座標と同じ変換するものをベクトルという。だから速度や加速度も、それから力も、ベクトルです。

運動方程式の力の方の変形ですけど、ローレンツ力qvBみたいに力の式の中に速度が入っていると左辺が変わっちゃうんじゃないんですか?

今日は鋭い質問が多いな(^_^;)。実はそのあたりも最初に言った「力学はガリレイ変換不変だけど、電磁気学はそうじゃない。困った」という話の一部なんです。実は電場とか磁場とかは、動いている観測者と止まっている観測者では違う値になります。

たとえば、電車の中で磁場中に静止している電荷は力受けませんけど、それを電車の外から見たら、磁場中を電荷が動いている事になるから、力受けそうな気がするんですが。

そう思いたくなりますよね。でも実際はそうならない。それはなぜかというと電車の外から見ると、そこに電場があるように見えて、磁場による力と電場による力がちょうど打ち消し合うんです。

じゃ、内部で見たら「力が働かない」、外部でみたら「力は働くけど、つりあう」ということですか。

そういうことです。物理的理由は違うけど、起こる現象は一緒。この辺の話は、この授業の後半でじっくり話しましょう。

学生の感想・コメントから

(先週の質問に関連して)車の中のハエ、窓が開いてたらどうなるのかなと思った。

窓の近くだったら(車から見ると)すっ飛んで窓の外に出そうですね。

光円錐のプログラムはわかりやすかった。3次元的には点であるものが4次元的には線であるという意味がよくわかった(多数)

自分で作っていて言うのもなんですが、あのプログラム面白いですよね(^_^;)。自分で見ていてみとれてしまう。

行列のありがたさがわかりました(多数)

これからどんどん使ってください。

1,2年で線型代数を勉強しておいて良かった(これも多数)

この時のためだったんですね。あと量子力学でも出てくるでしょう。

行ベクトルと列ベクトルを間違うことがなくなりました。

日本人であることに感謝です(英語だと「行」「列」なんてならないし)

高校では、回転の行列を習ったが暗記させられただけだったので、図を書いて証明して、実際に納得できた。

うーん、あの程度の証明は高校でもちゃんとやっといて欲しいところですね。

今の高校生は行列知らないのかぁ!

あ、今の高校生はまだ大丈夫ですよ。次の新入生からが行列の授業がなくなります。

マッハさんの話を聞いて思いましたが、我々のいる地球も回ってますから、我々は等速直線運動してませんよね? じゃあ、等速直線運動なんて存在しない?

してません。だから、遠心力とかコリオリ力とかがかかるわけです(慣性系じゃない)。宇宙の真ん真ん中に出れば等速直線運動できるんじゃないかな。

次やるテンソルも難しそうだけど、わかって使うと便利なものだからある、と先生がよく言うしその通りだと思うから次もがんばろうと思う。

テンソルも、最初はとっつきが悪いんですが、慣れてくるととても便利です。

マッハさんの考え方はすばらしいと思う。物理屋はそういうビジョンを持って物事を考察せねばならないだろう。

マッハ力学史という本(上下巻でちくま学芸文庫から出ている)とか読んでみると、マッハさんの考え方がわかって、なかなか面白いですよ。

4次元ってどんなんなんですか? 飛び出しまくっているんですか?

いや、4次元というのは結局、我々が住んでいるこの世界のことなんですよ。

車の中に電子が一個止まっていたら、内部では電流がないのに、外から見たら電流が流れているように見えるんですか?

見えます。今日授業で出ていた、「ローレンツ力は変わりませんか?」というのはそこに関する話ですね。つまり、電流という量はガリレイ変換した時の不変量ではないわけです。

授業と関係ないんですが、夜の方が音が澄んで聞こえるのはなぜですか?

夜の方が遠くの音が聞こえる理由は、気温差による屈折なんですが「澄んで」ですか。具体的に「澄んで」というのが何がどう変わるのかがわからないと難しいな。一つは、昼より周りの雑音が低いので、聞いている音に集中できるということかもしれません。

(上の続き)電気を消してギターを弾いていると同じことを感じます。光と音に関係があるんですか?

それはおそらく、人間の脳の問題だと思います(光と音はたぶん、大きな関係はない)。暗いと目が処理する情報が減るので、その分、脳が音に集中できるんじゃないでしょうか。

\left(\begin{array}{c}x'\\y'\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right)\left(\begin{array}{cc}\cos\theta&\sin\theta\\-\sin\theta&\cos\theta\end{array}\right)

のように右からかけたらどうなるんでしょう?

その計算、できません!(行列の掛け算ルールを思い出して)。右から行列をかけるためには、左にあるのは行ベクトルになってないとだめです。


*1 このあたりの「心」は量子力学にもつながるかもしれない。ただし、マッハ自身は量子力学どころか、分子論に対しても批判的であった。つまりは全てを疑ってかかる人だったのだろう。
*2 縦に並んでいるのを「列ベクトル」、横に並んでいるのを「行ベクトル」と呼ぶ。「行」と「列」という漢字には横線2本、縦線2本がそれぞれ含まれているので「縦線が含まれている『列』が縦のベクトル」と覚えておくとよい。
*3 以上で述べたように、行列計算は「座標変換」という幾何学的操作を記述するのに非常に便利な数学ツールである。単に「なんだかめんどくさい計算だな」などと思ってはいけない。むしろめんどくさい計算をいかに楽をしてやるか、そのための道具である。
*4 これは座標というベクトルと力というベクトルが同じ形の変換をしなさい、ということなので、reasonableである。
*5 なお、実際には我々の空間は3次元であるので、3次元で計算すべきだが、それはここまでの考え方を素直に拡張すればよいだけであるので省略する。

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Last-modified: 2024-01-12 (金) 19:41:38