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2006.3.20

★留送会
 卒業生を送る会。なんで「留」の字がつくのかは、誰に聞いても謎。
 ずっと前は、各研究室ごとに前に出て感想だの将来の抱負だの先生への感謝などを述べたもので、下級生が研究室の雰囲気を知る役にもたってたと思うんだ が、そういうのは何年か前からきれいさっぱりなくなって、ビンゴやカラオケで盛り上がっていた。それはそれでいいんだけどね。今回は出し物盛りだくさんで した。わしは二次会まで行ってぐだぐだとしゃべって帰ってきた。
 4年間指導教員(途中から指導教官から名前変わった)やってた連中がもう卒業。自分が年取っていくことを実感する。だいたいこの卒業していく連中が生ま れた時、すでにわしは大学2年生なのだ。

2006.3.21

★クイズショー
 ぼやぼやしているうちに、2月25日の日記の問題の出題者である小林泰三さんより、ヒン トが届いてしまった。

前回、「戦略は4つ」と言いました が、厳密に言うと取りうる戦略は6つになります。

ルールは以下の通りです。Mが「開ける人」、Pが「選ぶ人」です。

1. Pは1つドアを選ぶ。(第1の選択)
2. Mは残り3つの内から1つ、賞品のないドアを開ける。
3. Pはドアを変える機会が与えられる。>変えなくても良い (第2の選択)
4. Mは残り2つの内から一つ、賞品のないドアを開ける。
5. Pはドア変える機会を再び与えられる。>変えなくても良い (第3の選択)

第1の選択は全く確率的にランダムに決まりますから、戦略は特に考える必要 はありません。

第2の 選択については、「ドアを変える」「ドアを変えない」の2通りしかありません。

第3の選択についても、「ドアを変える」「ドアを変えない」の2つがありま すが、直前にMが開けたドアが最初にPが選択したものかどう かで、態度を変えることができます。つまり、この段階でそれ ぞれのドアは等価なものとしては扱えなくなるわけです。

以上を纏めると、Pがとりうる戦略は以下の6つになります。

A. 最初に選択した後、最後までドアを変更しない。
B. 2度目の選択では変更せず、3度目の選択で変更する。
C. 2度目の選択でドアを変更し、Mがどのドアを開けたかに拘わらず、3度目の選択でもドアを変更する。
D. 2度目の選択でドアを変更し、Mがどのドアを開けたかに拘わらず、3度目の選択ではドアを変更しない。
E. 2度目の選択でドアを変更し、Mが最初にPが選択したドアを開けた場合、3度目の選択でドアを変更し、Mが別のドアを開けた場合、ドアを変更しない。
F. 2度目の選択でドアを変更し、Mが最初にPが選択したドアを開けた場合、3度目の選択でドアを変更せず、Mが別のドアを開けた場合、ドアを変更する。

ここまでがヒントということでよろしくお願いします。

 さて、例によって図を書いて考えよう。ドアが4つあり、最初の段階ではどれも同じ確率で当たり。今、PがAを選んだとして、

A(1/4)
B(1/4)
C(1/4)
D(1/4)

という状況である。一番上に書いているA,B,C,Dは実際に当たりが入っている場所。これはもちろんそれぞれ1/4の確率である。
 Mは、Bが当たりならCかDを開けるだろうし、CがあたりならBかDを開けるだろう。Aが当たりの時は、B,C,Dのうちどれかを同じ確率でと考える と、

A(1/4)
Bが開く
(1/12)
Cが開く(1/12)
Dが開く
(1/12)
B(1/4)
Cが開く
(1/8)
Dが開く
(1/8)
C(1/4)
Bが開く
(1/8)
Cが開く
(1/8)
D(1/4)
Bが開く
(1/8)
Cが開く
(1/8)

という状況に変化する。ここで、MがBを開いたとする。今B,C,Dの立場は対称だから、Bを開いた場合だけ考えておけば十分だ。
 こうやってBが開いた後の状況は赤で塗った部分と水色で塗った部分だけが生き残ったということになる。
 この時点では、CかDに変えた方が確率が高いと考えられるから、とりあえずCに変えたとしよう。変えない場合は後で考える。

 ここで司会者MがAを開くか、Dを開くかが問題だけど、実際にAに入っているならDを開くだろうし、実際にはDに入っているなら、Aを開くだろう。実際 にCに入っている場合、どっちを開くかをとりあえず半々とすれば、


【最終状態図α】
A(1/12)
Dが開く
(1/12)
C(1/8)
Aが開く
(1/16)
Dが開く
(1/16)
D(1/8)
Aが開く
(1/8)

 この状況なら、Aが開こうがDが開こうが、また変える方が確率が高い。

 さて次に最初Aを選んで、第2の選択でそのままAを選んだ場合。次は

【最終状態図β】
A(1/12)
Cが開く
(1/24)
Dが開く
(1/24)
C(1/8)
Dが開く
(1/8)
D(1/8)
Cが開く
(1/8)

というふうに可能性が分岐する。この場合はMがどっちを開こうが、残った方へ選択を変えるのがいい。

A. 最初に選択した後、最後までドアを変更しない。
最終状態図βの赤もしくはピンク。これだと、最後の段階で1/24:1/8で、1:3 で不利な方に賭けることになる。
 
B. 2度目の選択では変更せず、3度目の選択で変更する。
最終状態図βの青または水色。これだと、最後の段階で1/8:1/24で、3:1で有 利な方に賭けることになる。

C. 2度目の選択でドアを変更し、Mがどのドアを開けたかに拘わらず、3度目の選択でもドアを変更する。
最終状態図αの赤または紫。どっちになるかを半々にして考えれば、(1/12+ 1/8):(1/16+1/16)で、5:3で有利。
Aが開いた場合なら2:1で有利。Dが開いたのなら4:3で有利。

D. 2度目の選択でドアを変更し、Mがどのドアを開けたかに拘わらず、3度目の選択ではドアを変更しない。
最終状態図αの緑または黄。C.の逆だから、3:5で不利。

E. 2度目の選択でドアを変更し、Mが最初にPが選択したドアを開けた場合、3度目の選択でドアを変更し、Mが別のドアを開けた場合、ドアを変更しない。
最終状態図αの紫または黄。(1/8+1/16):(1/12+1/16)だから、 9:7で有利。

F. 2度目の選択でドアを変更し、Mが最初にPが選択したドアを開けた場合、3度目の選択でドアを変更せず、Mが別のドアを開けた場合、ドアを変更する。

最終状態図αの緑または赤。E.の逆だから、7:9で不利。

ということになって、B.戦略が一番最後で勝つ可能性が高くなる。

 なんか単純過ぎて、何かを見落としているような気がする。。。。。。考え落としがあるとすると、2度目の選択の後のMの行動で、AをあけるかDを開ける かを半々としているが、Mが「いやぁ、よかったですね、ほら、Aにはありませんでしたよ!」と言いたがる性格ならば、最終状態αは、

【最終状態図α’】
A(1/12)
Dが開く
(1/12)
C(1/8)
Aが開く
(1/8)
D(1/8)
Aが開く
(1/8)

になるし、逆にAに入っていたかどうかを最後まで隠したがる性格なら、

【最終状態図α’’】
A(1/12)
Dが開く
(1/12)
C(1/8)
Dが開く
(1/8)
D(1/8)
Aが開く
(1/8)

となる。α’の場合でDが開いたらAに変えれば確実だし、α’’でAが開いた場合なら、Dに変えれば確実ということになる。
 しかし、こんなふうにあっさりと思惑が読まれるようでは司会者はつとまらんだろうし、と考えると最終状態図αだけ考えておけばよいような気も (^_^;)。

 長くなったのでまたゆっくり考えることにしよう。こんなもんでいかがでしょう?>小林さん

 なんか間違っているような気がしてならん。。。。。


2006.3.23

★卒業式
 今回は4年間指導教員をした学年の卒業なので、感無量。
 なお、力学演習で「物理的直観です」と名言を残し、さらに授業中にわしをこけさせた彼も、エレ ベータ問題で別解を見つけた彼も、また2004年の「初等量子力学/量子力学」お よび「相対論」で楽しい質問やコメントをくれた連中も、今日卒業していきまし た。読み返すと他にもこの日記のあちこちに彼ら・彼女らの勇姿(?)が。
 少し寂しい気分。

2006.3.25

★今日の更新
 いろもの物理Tipsに、光の質量に関するFAQを追加。ネットでも、授業でもやたら受 ける質問なので。もっとも、これだと説明が簡単に終わらせ過ぎているかもしれないなぁ。

2006.3.26

★4月からの授業
 3年目になる初等量子力学をどうしてやろうかいな、と悩む。一昨年は調和振動子が抜け、去年は2次元の極座標の計算が抜け、水素原子が駆け足になってい るので、時間的に余裕を持たせたい。しかし削るにしてもどこを削ればよいか。
 導入のために歴史的背景として、黒体輻射→光電効果→コンプトン効果という感じで光の粒子説(竜施設ってなんだよ>ATOK)を説明している部分をば さっと切ってしまうというのも一つの手なんだけど、「こういうのが量子力学なんだよ、ほれ」と天下り的にシュレーディンガー方程式が出てくる形の説明はあ んまり好きではない。結局、量子力学わかんなくなっている連中の多くは「なんでこんなもんができあがってるんだよ?」という部分でなっとくできないので、 そこをなんらかの形で押さえてはおきたいんだよな。
 もう一つの天下りでない方法として思いつくのは、解析力学の復習から入って、幾何光学←→波動光学の対応と、最小作用の原理←→シュレーディンガー方程 式の対応のあたりから「量子力学って古典力学をこんなふうに含んでいるんだよ」という説明にする方法。しかしこれ、抽象的思考にかなり慣れてないとなじめ ないんだよなぁ。
 黒体輻射のあたりはなんといっても具体的に目に見える「高温物体の色」という話あたりから入れるし、光電効果だって日焼けの話や「目が見えるのは化学反 応のおかげ」みたいなところと結びついてたりするので、実例を出して説明していけば、量子力学というのが単なる計算の便法ではなくて物理なんだという点を (天下りや解析力学からの説明より)伝えやすいようにも思う。それに黒体輻射やコンプトン効果の説明をやっていると電磁気の復習および統計力学の予習に なったりもするのでこの利点も捨てがたい(^_^;)。この辺を切って短くしたらどうなるかをいろいろ頭の中でシミュレーションしたりして試してみたけ ど、結局このあたりはいじらずにすませそうだ。テキストには書いておいてささっと済ませるという手もあるか。

 相対論の方ももっと電磁気とからめた話増やそうかと思ったりもするんだが、難しいな。

 あと、今年はまた基礎ゼミの担当になったので、前に使ってたプリント(講義録はここ)を見直してどっか変えようかな、と悩む。2年前までは うちの学科(物質地球科学科)は物理系+地学系の合体学科で、物理を高校で履修してない学生もけっこういたので、それ向けに問題考えていたんだが、今は入 試の段階で物理系と地学系は分かれているので、もうちょっと物理物理した問題に変えてもいいかな、と思ったりもする。

 自分の講義録を読み返しながら(実は講義録なんてものを作っている最大の理由は「後で自分で読むため」だったりする)いろいろ考えるものも結論出ず。

2006.3.29

★ふと
 素粒子占いをやってみる。結果は

前野昌弘さんは超対称性粒子 です!

超対称性粒子さんのあなたは、陽だまりあふれる公園のような人です。あなた がいるだけでその場が暖かい雰囲気になり、なごみムードが生まれるでしょう。穏やかで静かなのに、しっかりした存在感があります。あなたの微笑みに癒され ている人はたくさんいるでしょう。微笑みの奥の別の顔を見てみたい、と関心を持つ人もいるはずですが、なかなか奥の顔は見せません。人をなごませ、楽しま せればそれでいいと思うフトコロの大きさがあるからです。そのため、八方美人と受け取られるときもありますが、自分のすべてを見せることが、必ずしもいい ことではありません。あなたが自然のままでいられるなら、その姿勢を貫いてください。

 いやぁ、ばかばかしい(褒めてます)。こういう占いのたぐいよくあるけど、質問がやたら多いもんだから、答えている間にめんどくさくなってやめてしまう ことが多い(質問3つぐらいでもう嫌になる、根気のない奴>わし)。この素粒子占いはほとんど質問らしい質問が ないので(^_^;)、すぐにできて幸せ。「占いなんて所詮占い」という作者の姿勢が透けて見えるような小気味よさである。

★ところで
 物理学会には行ってません。こないだのKEKで予算使い切ったし(貧乏なうちの大学では、自費参加してらっしゃる先生もいる)。ニセ科学シンポは是非聞 きたかったのだけれど。


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